岡部美代治|Vol.9 オイル美容のホント
Beauty
2015年3月6日

岡部美代治|Vol.9 オイル美容のホント

オイリー肌こそオイル美容が必要だった!

Vol.9 オイル美容のホント

大手化粧品メーカーの研究部門と商品開発部門にて、数々の優秀コスメ誕生にかかわってきた岡部美代冶さん。女性の美に対するあくなき探求心と鋭い視点、そして研究者ゆえの造詣の深さを活かして、さまざまな「美容の疑問」を、科学的見地から解説していただきます。

語り=岡部美代冶写真=Jamandfix

冬の乾燥対策として活用したいオイル。しかし、オイリー肌やニキビ肌で悩むひとたちは、いままで“なんとなく”オイル美容を避けてきたのではないだろうか。「オイリー肌にオイルはもってのほか」。その“なんとなく”は大きなまちがいでした。

Q.まず、オイルの基本をおしえてください。

オイルには、石油から精製されるミネラルオイル、植物や動物から精製される天然のもので、我々が皮脂分泌で出すのとおなじような中性脂肪のオイル、ホホバオイルに代表されるようなワックス系のオイルが主に使われます。そのほか、自然界の鉱物から精製されて肌をすべすべにする効果のあるシリコン系のオイルがあります。たとえば、最近のべたつかないオイルはシリコン系のオイルをうまく配合しているものです。これらをうまく組み合わせて、今のオイルができています。

Q.オイル美容で得られる一番の効果は何ですか?

肌を柔軟にしてくれるということですね。極端な話ですが、たとえば革製品。雨にさらさせた革をそのままにしておくとパリパリになってしまうでしょう。ところが、オイルを塗るとなめらかになる。革もたんぱく質ですし、私たちの肌もケラチンというたんぱく質ですから、しなやかな肌にするためにはオイルが必要なのです。それから、肌の水分の蒸発を防ぐので保湿効果もあります。同時にツヤも出ますね。美容オイルを塗って肌がなめらかになったとか艶やかになったというのはオイルの効果が出ているという証拠です。

Q.オイルでも、美容オイルが最近特に増えていますね。

美容成分には水に溶けるものとオイルに溶けるものの二通りがあり、水に溶ける美容成分を中心に、オイルにとける成分を乳化したりなどして混ぜたものが美容液です。しかし、オイルにとける成分というのは、入れられる量に限界があります。美容オイルですと、ベースがオイルですから、オイルにとける美容成分をたっぷりと入れることができるのです。たとえば、肌に良いといわれているビタミンAやビタミンEはオイルに溶ける美容成分です。セラミドもそうですし、オイルに溶ける美容成分って意外に多いんですよ。ですから、そういった成分を中心とした美容オイルが増えてきているんですね。美容オイルにはオイルに溶けやすい美容材をたっぷり処方できるという特性があるのです。

Q.肌に入りやすいオイル、入りにくいオイルというのはあるのでしょうか?

オイルが肌(角質層)に入りやすいかどうかは、分子量の大きさによります。単純に、分子の小さいオイルは入りやすい、大きいものは入りにくいということです。ちなみに、サラサラしているオイルは分子が小さく、コテっとしたものや固形のオイルは分子が大きい場合が多いですね。分子の形が動きやすいものもあります。液体のオイルは分子が非常に動きやすいので入りやすく、固形のものは結晶に近い形なので入りにくいといえます。

Q.分子が小さいもの、流動系の分子をふくむオイルのほうが効果的ということですか?

入りにくい分子というのは、いちど肌(角質層)のなかに入ってしまえば動きにくいわけですから、肌にハリをもたせたいという場合にあえて使うこともあります。落ちにくいので効果も持続します。なので、入りにくいから悪いというわけでもないのです。入りやすいものは抜けやすいですし。基本的には、メーカー側が提案している使用順位と使用方法を守ることが、そのオイルのいちばん入りやすい、あるいは効果の出しやすい使い方ですから、それを守ってくださいということですね。

Q.自分に合ったオイルの選び方を教えてください。

オイルには必ず美容目的があります。マッサージしやすいオイル、肌にすっとなじんでとりあえず表面を整えてくれるオイル、入りにくいけれどしっかりと馴染ませたら一晩肌をガードしてくれるものなどさまざまです。なので、この美容オイルはどういう効果を、どういう感触を出すものなのかというのをみて選べばいいと思います。たとえば、ドライスキンや肌が乾燥しやすいひとには、ちょっと入りにくいけど肌をしっかり守ってくれるオイル、オイリー肌のひとはさらっとしたタイプがいいのではないでしょうか。

Q.オイリー肌にもオイル美容は効果があるのですか?

オイリー肌だからオイルは使わないということではありません。なぜなら、オイル系の汚れはオイルで取れるのです。オイリー肌のひとというのは脂の汚れがたくさん付いているわけですから、オイルマッサージで汚れたオイルを取って、さらっとした新しいオイルに入れ替えることが大切です。そして、一日のおわりにはきちんと洗うこと。

それと、ニキビに悩む多くのひとがオイルを避けていますが、オイルを肌につけてもニキビはできません。ニキビとは、アクネ菌がオイルを分解したときにできる脂肪酸が何らかの理由で溜まり炎症を起こしたものです。アクネ菌は毛穴が詰まって酸素が入りにくい状態で活発に動くので、オイルを肌に塗ったとしても、通気性が良かったり毛穴が詰まっていなければ、肌に悪影響を与えるだけの脂肪酸をつくることはありえません。ましてや、毎日洗顔していれば、アクネ菌がいくらオイルを食べたとしても肌に悪影響を与えるだけの脂肪酸をつくることは不可能。ですから、今のスキンケア習慣から言えば「オイル=ニキビ」は該当しません。

Q.現代のオイルがかなり誤解させているというのが問題なのですね。

最後に、オイル選びのアドバイスをお願いします。

オイルマッサージは、スペシャルケアとして本当に肌が変わる実感ができるものだと思いますので、自分でマッサージして気持ちいいかどうか、狙ったツヤなりやわらかさなりが出るかどうか、そのへんが選ぶ際のポイントになると思います。あまったオイルを肘、かかとに使うのもOKです。オイルは基本的に化粧水、乳液、クリーム、美容液の一連のスキンケアで物足りないときに選ぶというかたちで、より満足度の高い美容アイテムとして取り入れてはいかがでしょうか。

岡部美代冶オフィシャルサイト

「美」の科学 「ビューティサイエンスの庭」
http://www.kt.rim.or.jp/~miyoharu/

           
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