三原康裕│日本モノづくり 第5回 TASAKIのジュエリー(1)

三原康裕│日本モノづくり 第5回 TASAKIのジュエリー(1)

連載|三原康裕的日本モノづくり

MIHARAYASUHIRO × HUSAM × TASAKI

第5回 TASAKIのジュエリー(1)

ファッションデザイナー三原康裕さんが、日本の誇る工場や職人を訪ね、日本でしかつくれない新しいモノを生み出す画期的な連載企画「MEANING MADE IN JAPAN MIHARAYASUHIRO」、通称MMM。今回登場するのは総合宝飾メーカー「TASAKI」。2010年春夏コレクションで発表し高い評価を得た、「MIHARA YASYHIRO×Husam el Odeh×TASAKI」のメンズジュエリーでコラボレーションした日本宝飾界の重鎮である。まず今回は、三原さんが思い描くメンズジュエリーをつくるために「TASAKI」を選んだ理由、そこにかける熱き思いなどをお伺いした。

文=細村剛太郎写真=溝部 薫(HAWK EYE WORKS)

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TASAKIかける思い、情熱、畏敬

これまで「MIHARA YASYHIRO×Husam el Odeh」ブランドとして、アクセサリーを手がけてきた三原さん。もちろんその現場も、ノウハウも知っている。だがアクセサリーとジュエリーの違いに思いを巡らすうちに「望んでいたジュエリーとはなんだろう?」という簡潔な問いがふと心に湧いた。イメージとしては宝石が付いているのがジュエリーだが、一概にそうとはいい切れない。それはつくり手の技巧の違いなのか、はたまた歴史の違いなのか。それならばジュエリーをつくっている人たちのことを知りたい、現場を見たい――

こうして白羽の矢を立て快諾いただいたのが、日本で唯一デビアスグループのDTCサイトホルダー資格(直接ダイヤモンド原石の供給を受ける権利)を有する田崎真珠だった。その社名のごとく真珠で著名だが、ダイヤモンドをはじめとした宝石も扱う日本有数の総合宝飾メーカーである。最近ブランド名を「田崎真珠」から、国内外すべて「TASAKI」に改め新生した。すぐさま三原さんとアクセサリーづくりのパートナーであるデザイナーのフッサム エル オデーさんは、神戸にある田崎真珠本社に飛んだ。そこには自社工場も併設されている。工場見学でジュエリーづくりの現場を観て、ふたりは驚愕することになる。

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「正直、圧倒されました。ジュエリーの価値とは何かがわかりました。そして高価な理由も。思った以上に多くの職人を抱え、それぞれの方が分業された仕事を黙々とやっていました。工業的かつ職人的というか、機械でやるべきところは機械、手のところは手。自社一貫製作で妥協は一切ありません。ダイヤモンドの研磨や真珠の選別など、ある特定のレベル以上に到達した者しかできない精密な作業を目の当たりにしました。僕たちがファッション的な要素を入れたとしても、本質は変わらず“絶対的な価値”から動じない技術力。向かう方向は常に一定で、最高の技術を切磋琢磨している。組織的な統制も素晴らしい。材料選別、原石加工、研磨、彫金などすべてにおいて、高次元の技術力なのです」。
ときにアクセサリーづくりでは、ラフさも味とするが、「TASAKI」にはそれはない。いままで見た現場とはまるで違う、まるで修行をしているがごとしの緊張感が漂う現場である。

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「プラチナに装着するダイヤモンドの傾きを水平に整える作業など、コンマ何mm以下の世界ですがそこにこだわる。なぜなら光りの入射角が変わり輝きがまるで変わるからです。つまり一般的なこだわり以上のこだわりに価値がある。愛情、なのかもしれません」。作業を見ながら三原さんは考えた。

彼らの到達点はどこか。妥協の一切ない技術力の持続? それを維持するのは並大抵のことではない。分業専門職人制のデメリットも彼らは熟知している。ひとりが緊張感を損なうと、ものづくりのすべてがダメになるからだ。
「そこが彼らには絶対的なところです。圧倒的なものを感じました。それが先代から残っていることが凄い。普通は機械が入った時点で合理性が求められ、手作業の職人が省かれていきますが、それがまったくありません」。

その日のうちに現場の片隅のデスクで、9モデルのデザイン画をフッサムさんと描いた。生産加工部 工芸加工課の統括責任者、篠永克也さんと話し合い、できることとできないことを綿密に決めた。『TASAKI』とのコラボレーションを即決した理由を三原さんはこう語る。

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デザインを話し合い検討する三原さんとフッサムさん。

「単純なことです。つくり手の次元が違う。多分、僕よりフッサムの方がその水準の高さをより理解していたと思います。とにかくびっくりするぐらい綺麗なんです。手が震えながら触るような質の高さで、そのぐらいのオーラがあります。これまでも餅は餅屋的な手法を取って質を高めてきましたが、宝飾類では初めて圧倒的な違いを感じました」。

目指したのはメンズのショーピースとしての“メンズジュエリー”。メンズは変わらない美意識が90%を占めるという。残りを埋めるものが欲しいと考えたが、三原さんは服と靴という言語に慣れている。そこでかねてから交流のあったアクセサリーデザイナーのフッサムさんに声をかけた。ふたりともものづくりの哲学に共通点があり、また美術大学出身ということもあり学んできたことも似ており意気投合した。デザインは共同作業だが、とてもやりやすく、すでに“あ・うん”の呼吸をもつ関係である。

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「まずフッサムとは、肩の力を入れずリラックスしていつものとおり仕事をしようと話ました。肩に力が入るとメタファーやアイロニックなセンスが強(こわ)ばる。そして、今回のコラボでは『TASAKI』に胸を借りる感じで、絶対的な相手に任せることにしました。相手を知るからこそ、デザインも決まるのです」。

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テーマはサン=テグジュペリの「星の王子さま」。ただフォーカスしたのは作者のアイロニーの精神。空、飛行機の部品、鳥などをモチーフにした。モダンなクリエイションと、日本最高峰の技術力……3者が起こしたケミストリー(=化学反応)は、素晴らしい形で結実し、高い評価を受けた。「モチーフは現代的ですが、あり得ないつくりの良さ」と三原さん。海外では香港のジョイス、パリのレクルール、ロンドンのブラウンズなどで展開予定。国内では伊勢丹新宿店メンズ館(2009年12月2日より)、TASAKI銀座本店で2010年4月22日から販売される。web shopping「ルモアズ」では8モデルすべて展開する。

次回は『TASAKI』のダイヤモンド技術の真髄に迫る。

ABOUT
MIHARA Yasuhiro

1972年長崎にて、画家の母とにわとり研究家の父の間に生まれる。1993年多摩美術大学テキスタイル学部に入学し […]