新型フォード マスタングに本場アメリカで乗る|Ford
CAR / IMPRESSION
2015年1月5日

新型フォード マスタングに本場アメリカで乗る|Ford

Ford Mustang|フォード マスタング

デビューから半世紀、6代目のニューモデル

フォード マスタングに本場アメリカで乗る

フォードが誇るアメリカン スペシャリティ「マスタング」が、登場から50年目を迎えた今年、第6世代へとフルモデルチェンジを果たした。外見はいかにも“マッルスカー”でありながら、伝統のV8エンジンにくわえて、ダウンサイジング化された直4ターボを搭載するなど、その中身は最新のクルマとしてつねに進化しつづけている。そんなヘリテージとトレンドを同時にまとった新型マスタングに、本場アメリカで九島辰也氏が試乗した。

Text by KUSHIMA Tatsuya

マスタング誕生50周年を祝う

日本におけるアメリカ車の販売は厳しい状態がつづいている。かつては憧れの存在だったがイマとなっては注目度は低い。2011年はシボレー100周年、昨年は「コルベット」60周年という歴史的な節目であったにもかかわらず、日本ではパッとしなかった。マニアックな話をすれば、ダッジブランドも今年100周年を迎えている。

じつはここで紹介する「マスタング」も2014年は50周年となる。そしてそれを祝うように、フルモデルチェンジした2015年型の販売がスタートする。正式な発表は昨年12月。世界同時発表ということで、夜11時過ぎにシドニーでおこなわれた催し物に参加したのを覚えている。

Ford Mustang GT|フォード マスタング GT

Ford Mustang|フォード マスタング

あれからほぼ10ヵ月。9月の最終週にロサンゼルス、サンセットブルーバードを起点に新型マスタングの国際試乗会が開かれた。今年、おなじ50周年を迎えたわが身としては、ぜひ参加したいプログラムであっただけに、新型マスタングにたいする興味はもちろん、喜びもひとしおである。

前述した通り、シドニーでの発表会やウェブ上で、新型のデザインは何度も見ている。だが、実車を目の前にすると、その迫力は想像以上。やはり展示と屋外ではちがうことを認識させられた。LEDを内蔵した、鋭い目のようなヘッドライトや、リアフェンダーの膨らみはかなり“攻め”である。

全体的には従来型の正常進化と言える。それは歴史的なアイコン、ファースト ジェネレーションがデザインキューとなるからだ。とくに横からのシルエットはそれを強く感じる。初代マスタングというのは、本当に均整のとれた秀逸なデザインだったのではないだろうか。デビュー当時、年間60万台以上売れたというのもうなづける。

Ford Mustang|フォード マスタング

デビューから半世紀、6代目のニューモデル

フォード マスタングに本場アメリカで乗る (2)

マスタングに直4エンジンは似合わない!?

新型の特徴は3つのエンジンが用意されたことだ。既存のユニットをファインチューンした5.0リッターV8と3.7リッターV6、それと新登場の2.3リッター直4“エコブースト”がカタログに載る。

エコブーストはフォード独自の言い方で、直噴式+ターボを指す。「エクスプローラー」の2.0リッターユニットや「フィエスタ」の1.0リッターユニットもそう呼ばれる。

ただ、マスタングはほかとはちがう。これまでのエコブーストがすべて横置きのFWDベースだったのにたいし、縦置きのRWDを基本形とする。つまり、エクスプローラーのエンジンをたんに排気量アップしたわけではなく、専用に手がはいっている。一部を言うと、ターボチャージャーのサプライヤーがことなり、その吸気部分の構造もまったくあたらしい。

Ford Mustang EcoBoost|フォード マスタング エコブースト

おもしろいのはそこでの逆転現象。なんとこのエコブーストはV6の最高出力を上まわってしまった。直4が310hp、V6が300hpというスペックだ。それでもV6が必要なのは、アメリカにはファンが多いから。なるほど、その気持ちわからなくもない。歴代V6のフィーリングは相当いい。ただ、日本で販売されるのは直4とV8となる。

ちなみに、マスタングに直4エンジンは似合わないと思われるかも知れないが、歴史的に実績はある。3世代目のマスタングでは、それがラインナップされていた。たしか排気量もおなじ2.3リッターだったと記憶する。つまり、直4エンジンは復活でもあるのだ。

Ford Mustang EcoBoost|フォード マスタング エコブースト

Ford Mustang|フォード マスタング

個人的にはリアサスペンションの変更もトピックスに挙げたい。というのも、マスタングはこれまで伝統のリジッドアクスルを守りつづけてきたからだ。それを新型は独立懸架式とした。目的は当然乗り心地とアジリティの向上。

だが、彼らはドラッグレースユーザーの立場もしっかり鑑みた。なんとV8には標準でラインロックが装備される。これはフロントブレーキをロックさせてバーンナウトをさせるもの。なかなかニクい配慮である。

Ford Mustang|フォード マスタング

デビューから半世紀、6代目のニューモデル

フォード マスタングに本場アメリカで乗る (3)

ヨーロッパ車的な直4とアメリカンテイストなV8

では、実際に走らせるとどうなのか。

エコブーストはじつにスムーズな加速とともに試乗をスタートさせた。洗練された走りは、ある意味「これがマスタング?」と思うほど軽快で快適である。6,000回転以上まわるエンジンはまさに現代的。音も静かでアクセルレスポンスも早い。

また、ステアリングフィールもそれに準じる。パワステの設定は比較的軽めでワインディングで切り返しを連続させてもつねにきれいに向きを変える。ここでの安定した挙動はリアサスが独立化したことで接地性が高まったこともそうだろうが、剛性アップされたボディがキモかもしれない。新型マスタングはヨーロッパでの販売をかなり強く意識しているため、その辺を徹底的に煮詰めた。きしみ音などは一切ない。言ってしまえば、ヨーロッパ車的である。

Ford Mustang GT|フォード マスタング GT

Ford Mustang|フォード マスタング

これにたいし、よりアメリカンな仕上がりをしているのがV8モデル。トップレンジにあたるこいつには「GT」の名があたえられ、リアガーニッシュにも文字が飾られる。そしてその走りはイメージ通り。アクセルオンで浮かびあがるボンネットは、こいつがマッスルカーの子孫であることを思い出させる。レーシーなエキゾーストノートと合わせ、思わず頬がゆるむ瞬間だ。

当然走りも迫力満点。鋭い加速とともに、なんだか自分までマッチョになった気分になる。それでいて、エコブースト同様ハンドリングマシン化されているのだからたまらない。従来型の走りもリジッドとは思えないほどスタビリティは高いが、こいつはそれを上まわる。やはり進化の度合いは高い。

さてこの新型マスタング。現代的に乗るならエコブースト、オールドスクールなテイストを楽しむならGTといったところか。いずれにせよ、アメリカ車復権の足がかりになればいい。グローバル化される中でキラリと光る個性を持ったこいつの存在意義は高い。

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Ford Mustang 50 Years Edition|フォード マスタング 50 Years Edition

ボディサイズ|全長 4,790 × 全幅 1,920 × 全高 1,380 mm
ホイールベース|2,720 mm
トレッド 前/後|1,580 / 1,645 mm
重量|1,660 kg
エンジン|直列4気筒直噴ターボ
総排気量|2,260 cc
ボア×ストローク|87.5 × 94.0 mm
最高出力|231kW(314 ps)/ 5,500 rpm
最大トルク|434Nm(44.3 kgm)/ 3,000 rpm
トランスミッション|6段AT
駆動方式|FR
サスペンション 前/後|マクファーソンストラット/マルチリンク
ブレーキ 前/後|ベンチレーティッドディスク
価格|465万円(2015 年春より販売開始)

※11月1日より2015年2月1日まで、全国フォードディーラーで予約受付
※右ハンドル仕様の詳細については、2015年後半に発表予定

 

Ford Mustang GT|フォード マスタング GT
ボディサイズ|全長 188.3 × 全幅 75.4 × 全高 54.4 inch
(全長 4,783 × 全幅 1,915 × 全高 1,382 mm)
ホイールベース|107.1 inch(2,720 mm)
トレッド 前/後|62.3 / 64.9 inch (1,582 / 1,648 mm)
重量|(6MT)3,705 lbs.(1,681 kg)  (6AT)3,729 lbs.(1,691 kg)
エンジン|4,951 cc V型8気筒 DOHC
ボア×ストローク|92.2 × 92.7 mm
圧縮比|11.0
最高出力| 435 ps/ 6,500 rpm
最大トルク|400 lb.-ft. (542 Nm)/ 4,250 rpm
トランスミッション|6段MT / 6段AT
駆動方式|FR
サスペンション 前|マクファーソンストラット
サスペンション 後|マルチリンク
タイヤ 前/後|235/50R18
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ベンチレーテッドディスク
トランク容量|13.5 cu.ft.(382リットル)
最小回転半径|5.75(18インチタイヤ)-6.10(20インチタイヤ) メートル

※V8エンジンを搭載する「マスタング GT」はすべてアメリカ仕様の値。カッコ内は計算値。
※導入は2015年後半を予定。

フォードお客様相談室
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