Renoma|モーリス・レノマ氏を直撃!
Fashion
2014年12月19日

Renoma|モーリス・レノマ氏を直撃!

Renoma|レノマ

創設者 モーリス・レノマ氏にインタビュー

モードで完結してはいけない

去る10月25日、「レノマ」のディレクターであるモーリス・レノマ氏が、渋谷の「エディフィス 東京」を訪れた。御年実に74歳。1963年のデビュー以来、常にチャレンジングな服を発表しつづけているメンズモード界の偉人だ。気取らず、穏やかで、ユーモアに満ちた彼の言葉の数かず。そこにはモードの今昔と未来像があった。

Photographs by JAMANDFIXText by KASE Tomoshige

「日本人の方がお洒落なんじゃない?」

──日本に来るのは何回目ですか。

日本にはじめて来たのは1965年のこと。それから毎年来ているから――年齢を考えてもらえれば、何回来ているかわかるよね(笑)。

──1960年代当時の日本の印象を教えてください。

日本人の方がたがファッションというものを知りはじめて、またフランスという国を知りはじめた時期だった。もちろん僕たちも日本という国をはじめて知ったようなものだから、強烈な印象だったね。まさに“発見の交換”という時代だった。

日本とフランスはまったく違ったんだ。いまじゃ着物を着ている日本人はほとんど見かけないけど、当時の女性の3人に1人は着物という感じだったね。男性はスーツ。東京は“ビジネスマン”ばかりだった印象があるね。

レノマ 02

レノマ 03

──日本と違って、当時のフランスはもっと「ファッション」が身近だったんでしょうか。

いや、1960年代当時というのはまだまだ「テーラー」で服を作っていた時代だった。テーラーには両親とともに行くんだ。つまりお父さん、お母さんが子供の服を決めていた。「それじゃいけない」と思って、服作りをはじめたんだよ。服は自分で選ばなくちゃ。

──当時と現在では、レノマの服はどう変わってきましたか。

当時の服作りは職人技に重きを置いていた。いまは全体的にインターナショナルな、さまざまな要素を含んだコレクションと言えるかな。当時はファッションの学校もなかった。本当に何もなかったんだよ。いまはすべてが揃っているからね。

デビュー当時は映画俳優、政治家、ミュージシャンといった人たちがレノマを支持してくれたね。一般のお客さんは“反抗的な人”が買ってくれたんだ。親が選んだ服は着たくない、というようなね。でもいまは、レノマの服を着た子供たちを見た親が、レノマの服を買ってくれるようなこともある。面白いものだね。

──そんな状況で、この先はどんなファッションを提案していこうと考えていますか。

これからはモードのなかにいるだけじゃなくて、ライフスタイルや哲学が大事になってくる。文化、歴史もそうだ。

僕のデビュー当時、服はクチュリエ(デザイナー)主導であり、モードには女性の服しかなかったんだ。そんななかで男のモード服を作ったものだから、サンローランやチェルッティ、ラルフローレンたちは僕の店に来て、服を買っていったものだ。当時のレノマは“アメリカとフランスの融合”というスタイルを提案していたから、ラルフローレンにもハマったのかもね(笑)。

そんな時代を経て、いまでは「レノマ・カフェ・ギャラリー」というレストランももつようになった。食事もアートも楽しんでもらう。モードだけではない、ライフスタイルを作るブランドになってきていると思うよ。

レノマ 04

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──文化の発信地としてのブランド、ということですね。

パリの店にある有名な学者が来てこう言うんだ。「レノマの店には服を買いに来るんじゃなくて、インスピレーションを得るために来るんだよね」って。写真や本、アートの展示はこれからもつづけていきたいね。

──現在のフランスと日本では、どちらがお洒落だと思いますか。

実はフランスっていう国は、女性はお洒落に気を遣うんだけど、男性はお洒落にあまり興味がないんだよね(笑)。日本人の男性のほうがシックなんじゃない?

フランスには肌の色も、体格も、背丈もさまざまな人間がいる。でも、日本の方がたは肌の色もいっしょだし、背格好もそんなに変わりがない。ファッションの要素のひとつは“他人との差別化”だから、他人と差をつけるために、日本人にとってファッションは重要な道具になったんじゃないかな。

──ちなみにレノマ氏ご自身はどんな服がお好きなのでしょう。

うん、僕は実は早起きでね。今日はいっしょに泊まっている人を起こしてはいけないと、電気をつけずに適当に服を着たら、こんな恰好になったんだよ(笑)。

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Maurice Renoma|モーリス・レノマ
1940年パリ生まれ。レノマ創設者、同ディレクター。12歳のころより父親が営んでいた仕立屋を手伝う。60年代初頭より、シルクやサテン、ミラー生地を使用した服の製作、リネンや柔らかな素材で作られたコレクションをテーマごとに展開するなどして、一躍脚光を浴びる。1963年、パリのポンプ通りにブティックをオープン。ピカソ、ダリ、セルジュ・ゲンズブール、エルトン・ジョンからビートルズまで、さまざまなアーティストたちが店に足を運んだ。コンケーブドショルダーのジャケット、レザーのパッチワークブルゾン、バギーパンツなどの画期的なアイテムを発表、60~70年代のメンズモード界におけるパイオニアである。以降ヨーロッパのみならずアメリカ、アジアなど世界各国のファンの支持を得て、グローバルなブランドに成長。2013年にはデビュー50周年を迎えた。
https://www.renoma.jp/

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