GUCCI|フリーダ・ジャンニーニ in ジャパン(後編)
FASHION / MEN
2014年12月15日

GUCCI|フリーダ・ジャンニーニ in ジャパン(後編)

GUCCI|グッチ

フリーダ・ジャンニーニ in ジャパン(後編)

「GUCCI奨学生」たちとの初となる交流が実現

ガラ ディナーの翌日、10月26日にフリーダ・ジャンニーニ氏とグッチ社長兼CEOのパトリツィオ・ディ・マルコ氏が訪れたのは、仙台。東日本大震災で甚大な被害を受けた荒浜地区で、いまなお残る津波の傷跡を自分の目で確かめた。

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Text by ITO Yuji(OPENERS)

現場を訪れたことでわきあがる、言葉にならない感情

ジャンニーニ氏は、震災遺構としてすでに保存が決まっているという荒浜小学校を訪れた。震災当日、この4階建ての小学校の3階部分まで津波が押し寄せたという。その周辺には、かつてここに住宅街があったことを伝える、建築の基礎だけが残されたエリアが広がっていた。

慰霊碑やかろうじて残された家の上に、流されてきた他の家の屋根が乗った住宅などが残る荒浜地区を目の当たりにして、ジャンニーニ氏は「3年前の出来事は、映像を見て、状況は知っていましたが、実際に現場を訪れると自然には逆らえないことを痛感しました。そして、ここに家があり、人びとが暮らしていたことを思うと、言葉にならない感情を覚えざるを得ません」と会見で述べた。

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荒浜地区の海辺の平原が物語るもの

仙台で唯一の海水浴場であった荒浜海水浴場は小学校のすぐ目の前にある。しかしその海辺は、流れた遊具や折れた松がいまだに残り、復興を遂げていない。その海岸から内陸を見渡すと、平野が広がっている。

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そこはかつて小学校を中心とした住宅があった場所で、津波によって人びとの日常がすべて奪われたことを意味している。その自然の力を伝えるエピソードが、荒浜地区から3kmほど内陸にある高速道路まで津波が押し寄せたというもの。その高架によって津波の勢いはある程度弱まったという。

再開発が進まない現状を見て、ディ・マルコ氏は会見で誰かがアクションを起こすことが重要。まずグッチが支援活動をおこなうことで、他の企業も追従してくれることを願っています」と語った。

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フリーダ・ジャンニーニ in ジャパン(後編)

「GUCCI奨学生」たちが体験した、アルチザンの技

荒浜地区を後にして向かったのは、「GUCCI奨学生」のためのワークショップが開催される夢メッセみやぎ。そこで待っていたのは、ジャンニーニ氏初となる彼らとの交流。イタリアのクラフトマンシップを体験した奨学生たちの顔に、笑顔という希望の光が灯された。

イニシャル入りのバッグに込められた、グッチの思い

ワークショップでは、イタリアから訪れたアルチザンがバッグづくりにおける工程や製法を説明したのち、「GUCCI奨学生」が、かつてショッパーとして使用されていた型をモチーフにした、シンプルなバッグづくりを体験した。

一枚革から切り出されたそのバッグは、あらかじめアルチザンの手作業によって奨学生たち、それぞれのイニシャルが箔押しされたもので、彼らにとって、またとない体験と思い出をもたらした。製作自体はステッチを施すというシンプルなものだが、いざ実践するとなると、アルチザンのようにはいかない。

奨学生のひとりに話を聞くと「思ったようには、上手くいかないですね。難しいけれども、だからこそおもしろいです」と答えてくれた。そして、ジャンニーニ氏とディ・マルコ氏は、彼らひとりひとりと言葉を交わし、2012年以来サポートを続ける「GUCCI奨学生」たちと初となる交流を果たした。

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いま、ファッションにできること

ワークショップ後は会見がおこなわれ、ジャンニーニ氏、ディ・マルコ氏、公益社団法人 日本ユネスコ協会連盟から野口氏が出席した。そこでジャンニーニ氏は「グッチはパワフルなブランド。そうしたラグジュアリーブランドだからこそ、より多くの人にリーチできるし、伝えられるメッセージや支援できることがあると思っています。そして、ファッションデザインは、夢をデザインすることでもあります。今回のワークショップを通じて、実際に「GUCCI奨学生」たちと触れ合い、彼らの笑顔が自分にとってのギフトとなりました」

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そして今回、「なぜワークショップというかたちを取ったのか」という質問に対し、「手作業でバッグをつくるということは、子どもたちへの教育のひとつでもあり、今回に限らず、私たちは一貫して子どもと女性の権利を支援しています。それは教育に注力することで、文化は育まれ、子どもたちへの将来へとつながる、と考えているからです」と、ディ・マルコ氏はこのように語った。

現在、日本ユネスコ協会連盟『ユネスコ協会就学支援奨学金-GUCCI奨学生』として、被災地域に住む高校生96名に対し、奨学金支援がおこなわれている。ジャンニーニ氏が初めて彼らとコミュニケーションをもった、今回のイベントから感じ取れるのは、グッチというブランドだからこそ可能な地域社会への社会貢献の責任と、普遍的な価値を未来へと伝えていくという信念だった。

           
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