初のコンプリートモデル「S60/V60ポールスター」に試乗|Volvo
CAR / IMPRESSION
2014年12月16日

初のコンプリートモデル「S60/V60ポールスター」に試乗|Volvo

Volvo S60 Polestar|ボルボ S60 ポールスター
Volvo V60 Polestar|ボルボ V60 ポールスター

ボルボのあらたなコンプリートモデル

S60、V60ポールスターに試乗

ボルボが「S60」「V60」のもっともスポーティなモデルとして、台数限定で導入した「S60/V60ポールスター」。メルセデス・ベンツのAMGやBMWのM、さらにはルノー・スポール、アバルトのように、乗用車モデルをベースに、専門家集団が徹底してエンジニアリングをほどこし、名前も特別なものを冠した特別なクルマだ。ブランド初となる、このもっともエッジのきいたコンプリートモデルに、桂伸一氏が試乗して、その出来栄えを体感した。

Text by KATSURA ShinichiPhotographs by SAKURAI Atsuo

エンジニアリングに必要なものを熟知したポールスター

メルセデス・ベンツにはAMG、BMWにはM、アウディはRS、ではボルボには──“ポールスター”がある!

プレミアムブランドには、スポーツグレードのさらにうえ行く、より過激なチューンドコンプリートカーがこれ。ボルボのスポーツグレードというと、これまでRデザインが最上位だったが、ポールスターの登場によってボルボ史上最強の1台が誕生した。

セダン「S60」とワゴン「V60」の、3リッター直列6気筒 4WDモデル、つまり「T6 AWD Rデザイン」をベースに、1996年からレース活動でボルボの正式なパートナーであるポールスター・レーシング社と、ボルボが共同開発し、製造はボルボ・トースランダ工場で量産モデルと同様の精度と品質、安全装備も備えてラインを流れて来るから、品質も保証その他サービスも量産車と同じ扱いを受けられる。

Volvo V60 Polestar|ボルボ V60 ポールスター 15

Volvo V60 Polestar|ボルボ V60 ポールスター 30

“ポールスター”の開発を指揮したのは、レース車輌の開発エンジニアたち。話をすると、じつは彼ら自身も週末はサーキット走行をおこなうほどのカーガイである。だからといって、ポールスターを“日常は公道で、週末はサーキット”で操る個性。と、そういうありがちなコンセプトにはしなかった。「クルマにこだわる我々が日常、サーキットに遠征するために快適で速く楽しく、自分たちが欲しいと思うクルマ造りをした」という。

チューンドカーで重要な事は何か? と聞くと「すべてはバランスである」と。その言葉だけでも、この開発陣はチューンの本質が判っていると思った。エンジン出力を高めれば、それに見合うシャーシ性能が必要に。サスペンション、タイヤのグリップ性能、ブレーキ性能に、ドライバーをサポートするシートにステアリングその他すべてが、バランスのうえに成り立つ。

ロードカーとして完成したモノから一カ所チューンをおこなえば、崩れたバランスを整える必要がある。余談だが筆者の出身は“チューンドカー雑誌”なだけに、バランスがいかに重要かは30年以上も前から承知している──

Volvo S60 Polestar|ボルボ S60 ポールスター
Volvo V60 Polestar|ボルボ V60 ポールスター

ボルボのあらたなコンプリートモデル

S60、V60ポールスターに試乗 (2)

快適に、速く

3リッター直6のエンジン出力は、大容量のターボと大型インタークーラーに換えて1.2バールで過給して350psのパワーと500Nmのトルクを発生。

“ドイツのライバル”と比較するとパワーの数値は低い。しかし「重要なのは広いトルクバンド」と開発陣が言うとおり、ロードカーである以上、ストップ&ゴーを繰り返し、渋滞走行から、高速まで一気に加速するシーンで活きるのは500Nmのトルクを3,000-4,750rpmで維持し、低速走行から粘り強く、6,800rpmのレブリミットまでモーターのように振動がなく、ターボトルクの強烈な盛り上がりと、完全バランスの直列6気筒が生む魅惑のエキゾーストサウンドとともに盛り上がる強烈な加速Gは、あきらかに従来にはない世界感を体感できる。

Volvo V60 Polestar|ボルボ V60 ポールスター 27

Volvo V60 Polestar|ボルボ V60 ポールスター 19

本国では北欧の厳しい氷雪路面を乗り切るためAWDもチューンした。前後50:50の駆動配分から、通常はリアを強めて駆動する特性に変更したのがポールスター。もちろんエンジン出力を余す事なく路面に伝達することが目的であり、ハンドリング、操縦性はドライバーが描いたラインをトレースしやすい特性に仕上げた。路面状況の変化に応じて、前後の駆動配分は0:100 からその逆もありで、バリアブルに可変する。

目指した“快適に速く”は、6段トルコンATのトランスミッションも効果的。1,000Nmにも耐えるタフなミッションは、Dレンジの通常モードでは、シームレスのように心地いい変速を展開。いっぽうSモードを選んだ瞬間、MTに乗ったかのごとくダイレクト感を増す。変速時にコツンと軽い変速ショックをわざと演出し、ステアリング裏のパドル操作に瞬時の変速でドライバーの意思に応える。

標準のRデザインから80パーセントも高いバネレートと、それをスムーズなサスペンションの動きに変えるオーリンズ製ダブルバルブのショックアブソーバーによる乗り味も素晴らしい。

1996年のレース開始いらい、信頼関係を築く同胞オーリンズ社がポールスター専用に開発した製品は、レースやスーパーカー用の高精度高品質なモノ。

毛足が長く荷重をしっかり受け止め和らげる絨毯のような乗り心地がいい。フラットな姿勢を保つボディからは、サスペンションの硬さを想像するが、低速では凹凸の角を丸めて吸収し、高速では空力効果で車高をやや下げるボディと、突き上げの類を排除したしっとりと落ち着いた上質な乗り味が、スポーツと上級サルーンを融合させる。

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Volvo S60 Polestar|ボルボ S60 ポールスター
Volvo V60 Polestar|ボルボ V60 ポールスター

ボルボのあらたなコンプリートモデル

S60、V60ポールスターに試乗 (3)

スポーツ ボルボのあらたな世界

もちろん操縦性は20インチの高剛性なタイヤが生む強力なグリップ力と、ステアリング操作に対するレスポンスの高さにより、コーナリングすることそのものが、楽しくて仕方がない。手応え確かなステアリングは軽過ぎず重くもない適度な反力で、コーナーに対して正確な操作をするのにうってつけ。

凹凸を、まさに路面を舐めるかのようにサスペンションをストロークさせて路面をヒタッと捉える。コーナーのアールに舵角を合わせるだけの単純作業により尋常ではない速度でトレースしてゆく。止まる能力も、サーキット走行に耐えるタフなブレーキが、ブレンボ製6ピストンの大きく高剛性のキャリパーのもと、軽い踏力で引き戻されるような急制動を展開するブレーキ力は頼もしい限り。強弱のコントロールは爪先の力加減で正確に効く。

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その乗り味の豊かさと、室内の上質さによって、リラックスしたクルージングが楽しめ、右足をわずかに踏み込めば即モンスターに豹変するさまは、スポーツカー好き、過激なスーパーカー好きも理解できるハズ。

スポーツ ボルボの新たな世界がポールスターによってスタートした。変革するボルボをより輝かせる“1台”である。

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VOLVO S60 Polestar│ボルボ S60 ポールスター

VOLVO V60 Polestar│ボルボ V60 ポールスター

車重│1,752kg(S60 ポールスター)、1,822kg(V60 ポールスター)

エンジン│2,953cc 直列6気筒 DOHC 24バルブツインスクロールターボ

最高出力│257 kW(350 ps)/5,700 rpm

最大トルク│500 Nm/2,800-4,750 rpm

トランスミッション│6段オートマチック(パドルシフト付き)

駆動方式│4WD

ブレーキ前│ベンチレーテッドディスク(φ371×32mm ブレンボ製)

ブレーキ後│ベンチレーテッドディスク(φ302×22mm)

0-100km/h加速│4.9秒

価格│799万円(S60 ポールスター)、819万円(V60 ポールスター)

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