DESIGN / FEATURES
2015年1月23日

Salone in Roppongi|ジャパニーズ・デザインがきらめく10日間

Salone in Roppongi|サローネ イン ロッポンギ

デザイナー・吉岡徳仁氏、総合プロデューサー・笹生八穂子氏に迫る

ジャパニーズ・デザインがきらめく10日間

10月17日(金)、東京ミッドタウン内アトリウムにて「Salone in Roppongi(サローネ イン ロッポンギ) 2014」が開幕される。本年のフィーチャリングアーティストは吉岡徳仁氏。今春ミラノサローネをにぎわせた、新作家具「SPARKLE」を用いた展示「SPARKLE LOUNGE」について、吉岡氏および総合プロデューサー・笹生八穂子氏に話をうかがった。

「デザイナー・吉岡徳仁氏、総合プロデューサー・笹生八穂子氏に聞きたい7つのこと」はこちら

Text by TAN Miho (OPENERS)

ミラノサローネで注目されたクリエイションが六本木にやってくる

ミラノサローネ国際家具見本市(通称ミラノサローネ)が、2014年度の日本人来場者数が過去最高の5728人を記録したとのニュースを発表したのはつい数か月前のこと。その数は前年度比18.8パーセントをマークし、イタリアを除く世界ランキングではついに10位に入った。

日本人の間でミラノサローネへの注目がさらに高まる中、10月17日(金)~26日(日)の10日間、東京ミッドタウン内アトリウムにて開催されるデザインイベントが「サローネ イン ロッポンギ」だ。今季のミラノサローネでKartellから発表されて賞賛を呼んだ、吉岡徳仁氏の新作家具「SPARKLE」のサイドテーブルとスツールを80個以上も使用したインスタレーション、「SPARKLE LOUNGE」を展開。
つまり、53年目を迎えたミラノサローネの長い歴史が認めた価値あるデザインが、ミラノの街全体を沸かせた熱量をまとって、この秋、六本木にやってくるということ。

だが、サローネ イン ロッポンギをクローズアップしたいのはそれだけが理由ではない。実は、ミラノサローネの熱気を東京で再現する以外にも、本展の狙いがある。

ここ数年、日本人クリエイターや建築家、そして日本企業が、ミラノサローネにおいて目覚ましい活躍を遂げていることをご存知だろうか。たとえば2011年にはキヤノンが、そして2012年にはパナソニックが、各々日本の建築家とタッグを組み、会期中の最も優れた展示に授与されるエリータデザインアワード最優秀賞を獲得。

遺憾ながら、日本のクリエーションが世界をにぎわせている事実は日本国内では限られた人びとの間にしか浸透していない。だがだからこそ、サローネ イン ロッポンギがテーマに掲げたのは「日本のデザイン力」だった。屈指の日本人の「デザインクオリティ」を日本に“逆輸入”しようという意図が込められているのが、サローネ イン ロッポンギなのだ。

Salone in Roppongi|サローネ イン ロッポンギ

デザイナー・吉岡徳仁氏、総合プロデューサー・笹生八穂子氏に迫る

ジャパニーズ・デザインがきらめく10日間(2)

「デザイナー・吉岡徳仁氏、総合プロデューサー・笹生八穂子氏に聞きたい7つのこと」はこちら

スペシャリストとジェネラリストの化学反応が、心に届くクリエイションのエッセンス

本年のサローネ イン ロッポンギは2回目の開催となるが、そもそものはじまりは本展の総合プロデューサー・笹生八穂子氏がミラノサローネへ訪れた2011年のこと。

建築家・田根剛氏に誘われ赴いた初めてのミラノサローネ。あらたなデザイン界のスターや、やがてスタンダードとなるヒット作の輝き、そしてミラノ市民たちのデザインに対するオープンマインドに圧倒されるばかりだったという。

そこで翌年には参加者として再訪することを決意。事実、建築家・谷尻誠氏、照明デザイナー・岡安泉氏とともにユニット・Passing On Projectを組み、「Touch to turn light into delight」をテーマにしたインスタレーションを2012年のミラノサローネで発表。

さらに帰国してすぐ、毎年秋に開催されるデザインイベント「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH」の主催者へサローネ イン ロッポンギを自主提案する。そして2013年9月、「Tokyo Midtown DESIGN TOUCH」のコンテンツのひとつとして「サローネ イン ロッポンギ 2013」が実現することとなる。

多彩な感化を受けながらも「第2回を迎える本年は、吉岡徳仁さん以外考えられなかった」と語るのは笹生氏。

吉岡氏は国内はもとより、ミラノサローネではCassina、driade、vitra、MOROSOといった有名家具ブランドおよびメーカーとコラボレーションし、毎年多くの新作を発表している建築家だ。今年はイタリア最大のプラスチック家具メーカー、Kartellとの協業で、プリズム効果によってまるでクリスタルガラスのような輝きを放つスツールとサイドテーブルを発表し大きな話題を呼んだ。

2011年からの4年間ミラノサローネを実体験してきた笹生氏は、吉岡氏は「ミラノサローネのスーパースターだ」と断言。そして、だからこそプロデューサーである自身はジェネラリストであることを強く意識したそう。

53年もの歴史を誇るサローネが開催されるミラノは、いわばデザインと日常が一体化している街。一方の東京ミッドタウンは、デザインへの知識の深さも興味関心の高さもあらゆるタイプの人々が訪れる開かれた場所。

笹生氏から吉岡氏への依頼内容は、「みんなにもっとも届く、そして響くデザインを作ってほしい」というシンプルなものにとどめた。なぜなら「日本の『ための』デザイン力」であるために。

スーパースターとジェネラリストの二者の視点が、「日本のデザイン力」を伝えるのではなく伝わるものに変えていく。

もはや「見る」デザインをめざさないサローネ イン ロッポンギ 2014

開催場所となるアトリウムは、東京ミッドタウンのスタイリッシュなアイテムやショップが立ち並ぶショッピングエリア「ガレリア」の奥に位置している。ガラス越しに芝生広場を眺めることができる3層吹き抜けの大空間で、「自然光はいちばん美しい」と語る吉岡氏のインスタレーションが繰り広げられる。

フィーチャリングアーティストである吉岡徳仁氏は語る。「もともとわたしの根底にあるのは、光を表現するものづくりなんです。特に自然光は計算することができないから、置く場所や瞬間毎に表情が変化してとても美しい。今回はプラスチックで、クリスタルのような雰囲気のSPARKLEを作ります。光によって屈折が生まれる雰囲気を、日常のきらめきにたとえました」

本作は、そんな想像を超える光のきらめきを「見る」だけでなく実際に椅子に「座れる」ようにするというのが大きなポイントのひとつである。

「みなさん座るの好きですよね」とは吉岡氏の言葉。きらめきに実際に触れ、座り、そして時間を過ごす。触れることの許されぬ美術展も数多くあるなか、「見る」から「対話する」インタラクティブなインスタレーションは、見るものの心のなかに、しっかりときらめきの余韻を残してくれるに違いない。

Salone in Roppongi|サローネ イン ロッポンギ

デザイナー・吉岡徳仁氏、総合プロデューサー・笹生八穂子氏に迫る

ジャパニーズ・デザインがきらめく10日間(3)

デザイナー・吉岡徳仁氏、総合プロデューサー・笹生八穂子氏に聞きたい7つのこと

サローネインロッポンギにまつわるあれこれに、ひと言あるいはワンフレーズで答えてもらった。吉岡徳仁氏、笹生八穂子氏それぞれの視点をより深く知るきっかけにしてほしい。

Q1.六本木とは
吉岡 文化。
笹生 あたらしくて古い街。いつもあたらしくあって欲しい街です。

Q2.ミッドタウンとは?
吉岡 大人の街。
笹生 世界に発信できる可能性を秘めている場所。

Q3.サローネ イン ロッポンギとは?
吉岡 日本とミラノとのコミュニケーション。
笹生 デザインを楽しむことを発見する場、あるいはデザインを体験する場。

Q4.ミラノとは?
吉岡 デザインの拠点。
笹生 古くてあたらしい街。

Q5.デザインとは?
吉岡 人。
笹生 思いやり。

Q6.人とは?
吉岡 感覚。
笹生 発見だしコミュニケーション。

Q7.アートとは?
吉岡 感動。
笹生 ・・・思いやりの真逆にあると思うんだけど。なんて言葉だろうな。(しばらく悩んだ後)思い込み! デザインが横軸での広がりだったら、アートは深さ。いい意味での思い込みだと思います。

Salone in Roppongi 2014|サローネ イン ロッポンギ 2014
会期|10月17日(金)~26日(日)
時間|11:00~21:00
会場|東京ミッドタウン アトリウム
東京都港区赤坂9-7-1
入場料|無料
主催|サローネイン六本木実行委員会 六本木経済新聞/赤坂経済新聞
後援|東京都港区
協力|東京ミッドタウン
http://www.tokyo-midtown.com/jp/designtouch/2014/event/event005.html

           
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