ブガッティ、これぞ究極のスーパーカー・ビジネス|Bugatti
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2015年4月1日

ブガッティ、これぞ究極のスーパーカー・ビジネス|Bugatti

Bugatti Vayron 16.4 Grand Sport Vitesse “Ettore Bugatti”
ブガッティ ヴェイロン 16.4 グラン スポーツ ヴィテス “エットーレ・ブガッティ”

ブガッティ、これぞ究極のスーパーカー・ビジネス

最後の「レジェンド」は3億2,000万円

1,200馬力のパワーを持つウルトラスーパスポーツ「ヴェイロン 16.4 ヴィッテス」をベースに、ブガッティ社にまつわる6人の名前を冠した特別仕様車として、2013年の夏にスタートした「ブガッティ・レジェンド」シリーズ。これまでに、「ジャン=ピエール・ウィミーユ」をはじめ、「ジャン・ブガッティ」「ブラック・ベス」など、5モデルを発表してきたが、第6弾にしてついに完結。創業者「エットーレ・ブガッティ」の名をもつ至高のモデルを、米国西海岸で開催された自動車イベント「モータースポーツ・ギャザリング」の会場から、小川フミオ氏がレポートする。

Text by OGAWA Fumio

発表したときにはすでに売り切れ

ブガッティ・オートモビルが手がけるウルトラスーパスポーツ「ヴェイロン 16.4」。2005年に第1号車がローンチされて以来、現在は1,200馬力の「グランスポーツ ヴィテス」に進化。10年ちかくたっても、ライバルを寄せ付けない存在感である。

2013年夏から、グランスポーツ ヴィテスをベースに、よりエクスクルーシブなモデルを求める富裕層のため“レジェンド”シリーズが設定された。個性的な内外装を特徴とし、価格は235万ユーロ(3億2,000万円)、各モデル限定3台となっている。

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Bugatti Vayron 16.4 Grand Sport Vitesse “Ettore Bugatti”

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シリーズをしめくくる「エットーレ・ブガッティ」が、さる2014年8月、米国西海岸で開催されたモンタレーカーウィークでお披露目された。場所は、高級リゾート、ザ・クェイルロッジでの「モータースポーツ・ギャザリング」である。

芝生の上に、6台の「レジェンド」が並べられたさまは圧巻。個性あるカラースキームにより、どれもベースはヴェイロン16.4グランスポーツ ヴィテスとは、にわかに信じられないほど、各車とも強いキャラクターを持つ。

基本的には、古いスポーツカーのお祭りなのだが、昨今では、ベントレー、ランボルギーニ、ポルシェ、ジャガー、マクラーレンなども、この場所を、ニューモデル発表の機会としたりしている。

多額の退職金とともにアーリーリタイヤメントをし、クルマ趣味を追求するひとなど、富裕層の多い米西海岸ならでのイベントだからだ。

Bugatti Vayron 16.4 Grand Sport Vitesse “Ettore Bugatti”
ブガッティ ヴェイロン 16.4 グラン スポーツ ヴィテス “エットーレ・ブガッティ”

ブガッティ、これぞ究極のスーパーカー・ビジネス

最後の「レジェンド」は3億2,000万円 (2)

ヘリティッジとモダンをどう融合させるか

「レジェンド」シリーズの特徴は、ブガッティにかかわる歴史上の人物の名をサブネームに持つこと。第1号車は、ブガッティのドライバー「ジャン=ピエール・ウィミーユ」で、彼が1937年に操縦してルマン24時間レースで優勝した「T57Gタンク」を彷彿されるブルーのカラースキームを特徴とした。

ジャン=ピエール・ウィミーユのデビューは、2013年8月のモンタレー・カーウィーク。以来、モーターショーを含む各地のイベントで、順次“レジェンド”シリーズがお披露目されてきた。

Bugatti Vayron 16.4 Grand Sport Vitesse “Jean Bugatti”

2号車「ジャン・ブガッティ」のモチーフとなったのは、1937年にデザインされた「T57SCクーペ・アトランティク」だった

2号車は、創設者の長男ですぐれたエンジニアだった「ジャン・ブガッティ」。3号車は、戦前のブガッティ・ワークスチームの監督「メオ・コンスタンティーニ」。4号車は、彫刻家でもあり有名な象のラジエターマスコットを制作した「レンブラント・ブガッティ」。5号車は、ブガッティを愛したフランスの飛行家ローラン・ギャロスの愛車「ブラック・ベス」。

たとえば、「ジャン・ブガッティ」は、彼が1937年にデザインした「T57SCクーペ・アトランティク」を彷彿させるカラースキームと、内装モチーフを採用している。いっぽう、「メオ・コンスタンティーニ」は、無敵のグランプリカーだった「T35」をおもわせるブルーとアルミニムの組み合わせ。活躍した伊タルガフローリオのコースを模したデザインが室内に採用されているのも興味ぶかい。

Bugatti Vayron 16.4 Grand Sport Vitesse “Meo Costantini”

3号車「メオ・コンスタンティーニ」(写真左)は、かつて伊シチリア島でおこなわれた伝説の公道自動車レース、タルガフローリオで活躍した「T35」を彷彿とさせるブルーとアルミニムの組み合わせが特徴。

「ヘリティッジとモダンをどう融合させるか。むずかしいけれど、やりがいのあるテーマとして取り組みました」。そう語るのは、ブガッティ・オートモビルのウルフガング・デュレハイマーCEOだ。

「ブガッティは多くのモデルを作っていないけれど、強烈に私たちの印象に残っています。実際に今回モンタレー・カーウィークでのイベントで歴史的なモデルの数かずを見ると、いまも大きな存在感を感じさせます。昔のブガッティに憧れるひとたちが、ヴェイロン16.4を購入して、かつてのカラースキームをそこに求めても不思議ではないのです」

Bugatti Vayron 16.4 Grand Sport Vitesse “Ettore Bugatti”
ブガッティ ヴェイロン 16.4 グラン スポーツ ヴィテス “エットーレ・ブガッティ”

ブガッティ、これぞ究極のスーパーカー・ビジネス

最後の「レジェンド」は3億2,000万円 (3)

つねに夢でありつづけるために

おもしろいのは、エットーレ・ブガッティはお披露目前からソールドアウトになっている事実だ。なのになぜ、ブガッティは大きな面積をもつブースを開設したうえ、モデルも多数動員して立派なディスプレイを作ったのか。

ペブルビーチの建物を借りて特設したブガッティのブースに姿を現したデュレハイマーCEOが答えてくれる。「“レジェンド”シリーズは、たしかにもう買うことの出来ないクルマです。それをわざわざ、モータースポーツ・ギャザリングにもちこんだ理由は、まさにそこ。すこし逆説的になりますが、実車を見せることで、ブガッティとは簡単に手が届くクルマではないことを、わかってもらうためなのです」

ヴェイロン16.4の後継車の発表もとりざたされている。いまは詳しく言えませんが、と前置きしたあと、デュレハイマーCEOは語る。「ブガッティのモットーは、fast、powerful、low、wide。これからもこれを守っていきます。そしてまた、廉価なモデルを作るつもりはありません。ブガッティは自動車ファンにとって、つねに夢でありつづけなくてはいけないのです」

金曜日に開催されたモータースポーツ・ギャザリングをはじめ、土曜日ラグナシーカでの「モータースポーツ・リユニオン」、そしてペブルビーチでの「コンコース・デレガンス」と主要なイベントを通して、歴史的なブガッティを何台も見ることが出来た。

「レジェンド」シリーズも将来そこで称賛されるモデルとなるか。「それはお約束できませんが、持つことでオーナーの方々を幸福にする自信はあります」。デュレハイマーCEOは笑顔でそう述べた。

           
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