柳本浩市|第14回 寺山紀彦氏にオランダデザインを聞く(後編)
Design
2015年5月15日

柳本浩市|第14回 寺山紀彦氏にオランダデザインを聞く(後編)

第14回 寺山紀彦氏にオランダデザインを聞く(後編)

studio noteを主宰する寺山紀彦さんの発想に迫る第3回は、彼が在籍したアイントホーフェン(Design Academy Eindhoven)から、彼の代表作である「f,l,o,w,e,r,s」や「r,o,o,t」、さらに今秋の展覧会まで語ります。

Text by 柳本浩市

日本的なアプローチについてかんがえる

柳本 寺山さんがアイントホーフェン(Design Academy Eindhoven)に在学中の校長先生はリー・エーデルコート(※1)ですか?

寺山 そうですね。

柳本 校長の影響力というのは、アイントホーフェンの校内に強くあるのですか? というのも、以前、オランダの著名なデザイナーたちに「影響を受けた人は?」と聞くと、出身校の校長の名前をあげる方が多かったので。

寺山 校長先生は、審査や卒業制作の発表時に出てくるといった感じでしたね。たしかに影響力はあったと思いますが。校長といえば、僕が卒業制作でつくった「Pick your light」(※2)で校長賞をいただきました。記念にニンジンでできた首飾りも(笑)。

寺山紀彦「Pick your light」
Design Academy Eindhoven 卒業制作 2006

(※1)リー・エーデルコート
トレンドクリエイター。幅広い分野において、分析とコンサルティングサービスを提供している。2009年には、パリのオランダ学院にて「Archeology of the Future(未来の考古学)」展を開催。

(※2)Pick your light
寺山紀彦氏がDesign Academy Eindhovenの卒業制作で発表したランプ。白布で覆われた柔らかい天井を棒で押すとその場所が点灯するというもの。寺山氏のホームページ(http://www.studio-note.com)内の作品紹介欄にて、動画を確認することができる。

柳本 面白さを追求するのは、西洋も東洋も同じだけれど、僕は「Pick your light」を見たとき、アプローチの仕方が日本的なのかなと思いました。とくに天井部分の見せ方は。

寺山 それは本当によく言われました。作品は和風というわけではないんですけどね。講師であるハイス・バッカーからは「白い布は取った方がいいよ」とアドバイスされたこともありました。結果的には生々しく機械が見えるよりも、白い布があった方がいいのかなと。

柳本 「見えない」というのが、日本的なのかな。薄い布一枚でも見えなくするって、日本には障子の文化があるから。そういうところに似ているのかなと。障子も「隔てる」ものでありながら、その向こうにある光も取り入れることができるから。日本的といえば、寺山さんは、「自分は日本のデザイナーだな」と思うところはある?

寺山 僕の場合、「できないものはできない」とモノづくりにおいて断念してしまうことが多いのですが、海外で僕が接してしたデザイナーの方々は、なんでも挑戦していましたね。その振り切り方、勢いが僕とは違いましたね。

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柳本 オランダは産業が発展していない国。日本はモノづくりの国。そういう意味では、日本で生まれ育った学生は「これはつくれる、つくれない」という判断ができ、さらには生産過程におけるラインについても、理解できる人たちがいっぱいいる。

オランダではこうした見解がないから、考え方から一気につくってしまおうという面白さがあるのかな。日本人はできるモノとできないモノが、すぐにわかるから、もしかしたらこうした土壌がモノをつくる際の可能性を狭めてしまっているのかも知れない。

たとえば、「全長1メートルもする携帯電話」をオランダ人は考えるかもしれないけど、日本人の場合、電池の大きさやスペックを考慮して、10人いたら10人ほぼ同じサイズの携帯電話ができあがってくるかもしれない。

寺山 そうかもしれないですね。

植物をモチーフにした理由

柳本 寺山さんはプロトタイプをつくるときから、じっくりつくりこんでいくタイプ?

寺山 モノ、コンセプトによりけりですね。

柳本 これまで手がけた「f,l,o,w,e,r,s」や「r,o,o,t」に代表されるように、植物をモチーフにした理由はなにかあるんですか?

寺山 植物はすぐに枯れてしまうので、ドライにすればずっと残りますからね。それとこうしたモチーフをずっと使ってみたいなと思っていたというのもあって。

柳本 ピート・へイン・イークが廃材をずっと使いつづけているように、植物とアクリル樹脂の組み合わせは、寺山さんにとって一生つづけていきたいものですか?

寺山 そう考えると……そうでもないですね。素材にかんしては、まだ見つけていない、出会っていないかもと思います。

柳本 たしかにスタイルに縛られてしまうと、とくに日本では消費されるという可能性を含んでいることもあり、難しいところはあるでしょうね。

「r,o,o,t」は自然と人工物のミスマッチな組み合わせにくわえ、これは定規になっていて、根の先は1センチごとのメモリになっている。これを最初に見たときは、狂気の沙汰だと思いましたよ(笑)。寺山さんにはこうした世界も引きつづきみせてほしいなと思います。

寺山 接着剤とアクリル樹脂のバランスが難しいので、「r,o,o,t」はひとつつくるに結構な時間を要しましたね。

寺山紀彦「r,o,o,t」 2008

柳本 今度はこの組み合わせで椅子は?(笑)

寺山 椅子……、すごい時間を想像してしまいましたね(笑)

柳本 今年の秋のデザインイベントでは、展示の予定はあるんですか?

寺山 昨年からはじまった「novelax」という合同展示会に出展します。総勢9組のクリエイターたちと、未発表の新作を発表します。

また期間中、会場にてショップ「novelax store」をオープンし、ここでは参加クリエイターのプロダクトを購入することも可能です。

柳本 今回はありがとうございました。

寺山紀彦(てらやま のりひこ)

デザイナー。1998年中央工学校、2001年KIDI(Kanazawa International Design Institute)プロダクト科卒業。
翌年オランダDesign Academy Eindhoven入学、在学中にStudio Richard Hutten、 MVRDVへ研修、2006年卒業。
同年にstudio note立ち上げる。

「novelax PREVIEW 2009 + novelax store」
会場|TOKYO FAMILY RESTAURANT「playroom」
東京都渋谷区東1-3-1カミニート20(2F)
会期|2009年10月31日(土) ~11月3日(火・祝) の4日間
時間|11:00~21:00 ※最終日は17:00まで
主催|novelax
出展者|fift, FormlessDesign, PRODUCTIVE MIND, Schatje Design studionote, 熊野亘, 能登夫妻, 堀圭輔, 水口奈美
http://novelax.jp/

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