LEXUS HS250h(後編)|新しい時代を象徴する高級セダン
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2015年8月28日

LEXUS HS250h(後編)|新しい時代を象徴する高級セダン

LEXUS HS250h|レクサス HS250h(後編)

新しい時代を象徴する高級セダン

日本のみならず、欧米でもハイブリッドカーが注目を集める昨今。レクサス初のハイブリッド専用モデルとしてHS250hが満を持してデビューした。さっそく同車に試乗、その真価をたしかめた。

文=小川フミオ写真=荒川正幸

ソフトでもなくハードでもない、独自の乗り味

レクサスHS250hはトヨタ・プリウスと同様、通常走行モードにくわえ、エンジン回転を抑える「ECOモード」、加速力が必要なときの「パワーモード」、そして電気モーターの力だけで走行する「EVモード」が選べるようになっている。EVモードだけでも、一定の速度域で、バッテリー残量が一定の水準を超えて下がるまでは走行可能。これもプリウスに通じるが、静かで、かつトルキーで、独特の走行感覚であることもおもしろい。

静かという点では、HS250hの車内静粛性は特筆もの。風切り音、エンジンルームからの透過音、さらに路面やタイヤハウスからのノイズ、すべてがごく低レベルで抑えられている。加速時に少しだけザラついたエンジン音が聞こえるが、全体の騒音レベルを下げることに成功した結果、わずかなエンジン音が際だつ結果になってしまった(といっても小さな音だが)というのが、むしろ驚きだ。

前輪駆動はいわゆる「高級車」のイメージと合わない、と考えるひとは、アウディの台頭などでもはや少数派だろう。レクサスの開発陣にも当初はそんな懸念もあったようだが、「駆動方式に関係なくどのモデルも、レクサスの水準で完成させる指標を満足させることに心を砕きました」と古場博之主査が語るように、それがなにか違和感をおぼえさせる場面はいっさいない。フロントにおよそ60パーセントの荷重がかかる重量配分にハンドリングが影響を受けていると感じさせることはなかった。

いっぽう、定速走行時の乗り心地はフラット。車体のよじれもサスペンションのつきあげも感じられない。ドア開口部やフロアなどのスポット溶接の個所を緻密に計算したり、サスペンションタワーとカウルの接合部などボディ各所の剛性を高くすることで車体の剛性を高めつつ、リバウンドスプリングをショックアブソーバーに採用するなどしている。緻密なチューニングの結果、ソフトでもなくハードでもない、独自の乗り味をもったクルマに仕上がった。「しなやか」という言葉がもっとも近いような気すらする。

395万円の標準グレードから535万円のversion Lまで

インテリアは作り込み品質が高く、LSやGSのユーザーのなかでさまざまな事情からよりコンパクトなモデルを必要として乗り変えるというひとたちも満足させるレベル。レクサスRXで採用されたコンピューターのマウスのように正確な、カーナビゲーションなどを操作する「リモートタッチ」も備わり、ドライバーにとってクルマを意のままに使える、いわゆる「コクピット」感覚が強くなっているのも魅力だ

車体色と、本革シートを選択した場合のシート地の色は豊富に用意されていて、それぞれ熟練職人が塗装から縫製にいたるあらゆるところを手がけるレクサスならでの品質感が、他ブランドとは一線を画しているといえよう。

グレードは4つに分かれる。快適装備がやや簡略化された標準グレード(395万円)にはじまり、よりスポーティな走りを求めるユーザーのためにショックアブソーバーの減衰力を1割弱スポーティに設定した「version S」(415万円)、本革シートなど豪華志向の強いユーザーのためのもっともボリュウムゾーンにある「version I」(453万円)、そして衝突軽減に居眠り警告機能や白線から逸脱しないためのレーンキーピングアシスト、前方左右の障害物をモニターで確認できるようにしたワイドビューフロントモニター、そして10個のエアバッグといった安全装備の数かずを標準装備した「version L」(535万円)。乗った印象はたしかにversion Sはスポーティな雰囲気が強いが、標準グレードでもどこかに不足を感じることはなかった。自分の好みに応じて選べばいいだろう。

「高級車でもエコロジカルなクルマがいい、というのが、いまの消費者の視点。そこにも満足していただけるよう開発しました」という古場主査の言葉どおり、燃費から品質、そして走りまで、新しい時代を象徴する高級セダン、それがHS250hなのだろう。

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LEXUS HS250h
ボディ|全長4700×全幅1785×全高1505mm ホイール2700mm
エンジン|2.4ℓ 直列4気筒
最高出力|110kW〔150ps〕/6000rpm
最大トルク|187Nm[19.1kgm]/4400rpm
電気モーター|交流同期電動機
最高出力|105kW〔143ps〕
最大トルク|270Nm〔27.5kgm〕
駆動方式|FWD
トランスミッション|電気式無段変速機
バッテリー|ニッケル水素電池
価格|395万円 ~

レクサスインフォメーションデスク 0800-500-5577
http://lexus.jp

BRAND HISTORY
トヨタがアメリカ市場において高級車ブランドLEXUS(レクサス)を立ち上げたのは1989年のこと。トヨタが誇る高い技術力と優れた品質、そして極上の顧客サービスにより、アメリカやドイツの高級車とは一線を画す新しい価値を提供しようというのが狙いであった。

同年9月、「LS400」(日本名セルシオ)と「ES250」(同カムリ)がアメリカ市場に投入されると、翌1990年2月には早くもLS400がベストインポートカーを獲得している。その後もレクサスの評価は高まるばかりで、ラインナップの拡大とともに、高級車ブランドとしてのポジションを確実にしていった。

アメリカでの成功を受けて、2004年にはヨーロッパ進出を果たしたレクサスは、同年5月、日本での事業展開を発表。翌2005年8月には、母国での高級車ビジネスをスタートさせた。開業当初は、「GS」(トヨタブランドのアリストの後継車)、「SC」(同ソアラ)、「IS」(同アルテッツァの後継車)と、フラッグシップの「LS」を欠くラインナップだったが、2006年9月には待望の新型LS、そして、2007年5月にはそのハイブリッド版の「LS600h/LS600hL」を投入することで、ラグジュアリーサルーン購買層の期待に応えている。

一方、2007年10月にスポーツモデル「IS F」を発表、また、2008年5月に行われたニュルブルクリンク24時間レースに開発中のスポーツクーペ「LF-A」を投入するなど、スポーツイメージの獲得に力を入れており、さらなる人気拡大が期待される。

           
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