戸田恵子|手強いミュージカル「サンデー・イン・ザ・パーク」上演中!
Lounge
2015年5月27日

戸田恵子|手強いミュージカル「サンデー・イン・ザ・パーク」上演中!

2009年上半期を振り返りつつ――

よく働きました(笑)。そして今は「サンデー・イン・ザ・パーク」上演中
悶々とした日々。手強いミュージカル!

2009年の年明けは腰痛を押して「グッドナイト・スリイプタイト」の大阪公演に。並行して山田太一さん脚本ドラマ「ありふれた奇跡」の撮影。そして「ザ・ヒットパレード」の稽古&本番。WOWOWドラマ「ママは昔パパだった」の撮影。BS「どれみふぁワンダーランド」と、中京テレビバラエティー番組「幸せの黄色い仔犬」スタート。キバコの会「素。」に参加。カジュアルライブvol.3。「探偵左文字進」の撮影。そしてミュージカル「サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ」の稽古。ざっと大きな流れはこんな感じでしょうか。

まとめ=K-co Toda

日本初演は1987年、まさか私が演じることになろうとは……

いや~とにかくよく働きました(笑)。そしてよく身体がもちました。これもたくさんの方に支えていただいたおかげです。ありがとうございました。

さて現在は7月5日にPARCO劇場で幕を開けましたミュージカル「サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ」の公演真っ只中。連日、奮闘中です。

演出家の宮本亜門さんのご友人でもあり、亜門さんがリスペクトしてらっしゃるスティーヴン・ソンドハイムの作詞・作曲であり、脚本はジェームス・ラパイン。1984年のブロードウェイ作品です。日本の初演は1987年、草刈正雄さんと鳳蘭さんが演じられました。私、その舞台は観ているんですよ。まさか私が演じることになろうとは夢にも思いませんでした(笑)。

〈あらすじ〉
第一幕は19世紀末、変わりゆくパリの街にジョルジュ・スーラ(ジョージ)という名の一人の画家がいました。彼は「点描」という手法を用いて自分の芸術をつくりあげ、恋人ドットをモデルに、のちに傑作と認められる「グランジャット島の日曜の午後」のためのスケッチをはじめる。絵のことで頭がいっぱいのジョージはドットも目に入らずひたすらキャンパスに向かいつづける。やがて待ちつづけることに疲れたドットは、ジョージの子を身ごもりながらもパン屋のルイとともにアメリカに渡ることを決意する。

第二幕はそれから約一世紀後、美術館のギャラリーに「グランジャット島の日曜の午後」が掛かっている。芸術家のジョージ。曾祖父に当たるジョルジュ・スーラの歴史を祖母のマリーと振り返る。その後グランジャット島を訪れたジョージは、マリーからもらった、かつてドットがもっていたという赤い本を手にする。するとそこにドットが現れて……。

暗黙のうちにあった今回のNGワードは「むずかしい」

私自身は宮本亜門さんとは古くから知り合いであり、舞台でのお仕事は20年振りくらい。意外にもこれが2本めです。いつもの如く? 稽古に遅れて参加した私は、遅れたうえにほかの仕事の都合で稽古を休まなければいけないときもあって、想像以上に楽曲が難しい今回のミュージカルに正直何度も心が折れてしまいました。

皆と一緒にやっていれば難なく進むことが、後からではつかみにくい。ひとりきりの自主練でもなかなか乗り切れない。ホントに手強い。「スティーブン・ソンドハイムめ!」と何度も思った。稽古中の私はあまりに出来ない自分に苛立ち、もしかしたら自分を過信しすぎていたのかもしれませんね。いくらか、登校拒否症っぽくなっておりました。そんな自分を奮い立たせるために、稽古場には誰よりもはやく行ってみよう! と思い、ただひたすらそれをつづけてみました。

今回のNGワードは「むずかしい」というのが暗黙のうちにありました。あまり「むずかしい」を強調するとお客さん来なくなっちゃうでしょ(笑)? でもどなたかがおっしゃっていましたよ、現存するミュージカルのなかでいちばんむずかしい作品だと……。

「たしかに」。私はそう思った。「?」マークを頭のなかにいっぱい浮かべながら、難解メロディと変拍子と闘う日々。その難解さすべてが自分の筋肉に、身体に溶けてはじめて楽しめる時間が来るのだと思う。
これが更新されるころにはすこしは楽しめているだろうか? いまは正直まったくもって楽しめてない! 残念ながらいまはまだ……。そしてこのブロードウェイミュージカルのオリジナルをつくりあげるのにかかった時間を思ったら、日本の事情においてはまったく時間が足りないのが現実です。

大丈夫! 神様はネーサンのなかにいます

でもそんななか、何かに取り憑かれたかのように宮本亜門さんは初日前夜までダメ出しと稽古に心血を注いでいました。ゲネプロの夜、私と石丸さんは居残り稽古もしました。居残り稽古って、もしかして劇団以来かもです(笑)。

劇場入りをすると「舞台の神様」と私が勝手に呼んでいる神様なるものが、いついかなるときにも現れて私を助けてくれるんです。これまでもずっと助けてもらってきました。ところが今回、劇場に入りリハーサルやゲネプロで舞台に立っても一向に現れてくれないんです。かなりスピリチュアルな話に聞こえるかもしれませんが、すべて私の主観的な感覚の話です。このところマイケル・ジャクソンの突然の死もあり、マイケルを師と仰ぐブラザーGO(植木豪)とマイケルのことを今回の私の舞台のことと併せていろいろ話していたときのメールのやり取りで「なんか神様来ないみたいだ……」と送ったら、「大丈夫! 神様はネーサンのなかにいます。やるだけのことはやったんでしょ?」と返信が来たのです。

我がおとうと―。心憎いことを言いました。

そしてふとこんな話を思い出したのです。「砂の上の足跡」たしかこんなタイトルだったかと思います。皆さんもご存知かもしれませんが、ある人が死ぬ間際に自分の人生を振り返って神様に感動したという話。いつも自分の脇には神様の足跡があって、ずっと助けてもらってきました。でもある時期、とてもとても苦しい時期には自分の足跡しかなかったって。神様にどうしてあの時は側にいてくれなかったのですか? と聞いた。すると神様は「あの時はあなたがあまりに辛く苦しくもうダメだと思って私が背負っていたのですよ」と。

もしかして私も背負ってもらったのかもと思ったのでした。まあ今回の私は、そこまで苦しかったか? と聞かれれば、そこまでではない……かなとは思いますが(笑)、それほどに手強いと思った作品でした。夜明けは来るのか!?否か!?

8月はキンダー・フィルム・フェスティバルあります!

悶々とした日々でした。

現在はさすがにすこし慣れた感もありますが、いや~まだまだ気持ちよくはさせてくれませんね……(笑)。

でも初日の心臓バクバク感をレベルで言うと、やっぱり一番は「なにわバタフライ」、二番は「グッドナイトスリイプタイト」、三番は今回の「サンデー・イン・ザ・パーク」となる。間違いなく上位ランクだ。

ゲネプロ当日の朝だったか、初日の朝だったか、劇場ロビーで皆でウォーミングアップしていたとき、主演の石丸幹二さんが、「歌詞を忘れる悪夢で目覚めた! 寝なきゃよかった……」って話されていました。私よりはるかに厳しい壁を登られたんだとかたわらで見ていてそう思いました。私は悪夢を見ませんでしたから(笑)。

おかげさまで、幕が開いて自分の思いとは裏腹に高い評価をいただきまして、驚きやらうれしいやら……。公演は8月9日、日曜日までつづきます。

さて皆さん、来月はキンダー・フィルム・フェスティバル(8月9日(日)~8月12日(水)青山円形劇場・こどもの城、8月20日(木)~8月23日(日)調布市文化会館たづくり)があります。私も昨年から実行委員としてお手伝いをさせていただいている、子どもたちのための世界映画祭。子ども目線に立ったさまざまな映画が世界中から集まります。大人の方にもぜひ観ていただきたいです。どうぞ宜しくお願いします。

写真提供 キンダーフィルム

写真提供 キンダーフィルム

子どもたちの世界映画祭
第17回 キンダー・フィルム・フェスティバル

今年の戸田さんの出演日は、
8月11日(火)青山と、8月23日(日)調布です。
ぜひご来場ください!
詳しくは
http://www.kinder.co.jp/

戸田恵子

           
Photo Gallery