中原慎一郎のalso craft 11│藤城成貴「eiffel」
Design
2015年3月13日

中原慎一郎のalso craft 11│藤城成貴「eiffel」

also craft #11 「eiffel」
藤城成貴が生み出すインダストリアル──スツール「eiffel」

「バルカナイズド・ファイバーに惹かれたのが、eiffel製作へのきっかけでした」と語るデザイナーの藤城成貴さん。絶妙な安定感を生み出す三本脚のスツールは、完成された工業製品を想起させる。

文=中原慎一郎


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偶然にも同時期に「バルカナイズド・ファイバー」でモノづくりをしていたふたり

友人から見せてもらった古いアメリカのホテルのキーホルダーの素材が、紙と樹脂繊維を混ぜたようなすごく硬いもので、バルカナイズド・ファイバーというものらしい。それ以来、その素材が気に入っていたのだけれど、デザイナーの藤城成貴くんに会った際には彼はすでにその素材のことを知っていて、かなりその素材に近い硬質パルプ材でつくったスツール「eiffel」を見せてくれた。

紙なんだけれども、すごくインダストリアルなイメージをもつ素材感。それらにビスが加わることによってさらにインダストリアルなイメージになる。まるでエッフェル塔だし、ゴールデンゲートブリッジのフレームのようでもある。そして紙という素材がもたらす価格も魅力だ。

藤城成貴のデザインは、彼の素材や機能への独特の視点で見極めたものが、彼自身によるモックアップ制作を通してカタチとなっていく。以前彼にみせてもらったさまざまな折りたたみのスツールのときもそうだったけれど、動きの面白さに着目してその動きから自身のカタチを発見していこうとする彼の取り組みは、箱ものばかりつくるぼくにとっては非常に興味深い。

今回の「eiffel」も現段階では1種類だが、この素材でのシリーズ化も考えているようで、その完成が楽しみである。

Profile
藤城成貴
1974年東京生まれ。和光大学経済学部卒業後、桑沢デザイン研究所夜間部を卒業し、1998年より株式会社イデーに入社。オリジナル家具などのデザインを行う。その後、2005年に退社し、shigeki fujishiro designを設立し、デザイン活動を行っている。
2009年1月から3月に、国立新美術館のミュージアムショップ内 SFT GALLERY にて個展を開催。最近では、株式会社サイトーウッドのディレクションを手がけるなど、ブランドディレクションも行う。

           
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