第35回 荒木経惟個展『好色』(その1)
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2015年5月8日

第35回 荒木経惟個展『好色』(その1)

第35回 荒木経惟個展
『好色』(その1)

現在ラットホールギャラリーでは、12月7日(日)までの日程で、荒木経惟個展『好色』を開催しています。
荒木さんに関しては、2006年11月からの『荒木経惟展』、2007年6月からの『愛の花』につづき、ラットホールでは3回目の開催となります。
内容は、1回目の開催時から彼が取り組むペインティング作品。しかし今回は、これまでのような作品群としての見せ方ではなく、1点1点で完結する作品になっているところがポイントです。

北村信彦/HYSTERIC GLAMOURPhoto by KITAHARA kaoruedit by TAKEUCHI Toranosuke(City Writes)

失敗の許されない方法の中に見た、巨匠の凄まじい集中力

第35回 荒木経惟個展<br><br>『好色』(その1)

じつは1回目の個展『荒木経惟展』が終わった時点ですでに、「次は1点1点で見せたいね」という話はしていました。だから今回の個展の方向性自体は、とても自然な流れで決まったんです。それでも、実際このサイズで見せられると、想像以上の迫力でした。

展示前に、引き伸ばした写真が持ち込まれ、荒木さんがこの場所でペイントしていく場面に僕も立ち会ったんですが、それはもう、すごい集中力でした。これだけ大きな作品をこの点数、一気に仕上げていくわけですから、体力的に考えてもかなりハードな作業です。

見ていると、この一筆って、野球のバッターのスウィングぐらいの勢いなんです。しかも、印画紙に直書きという失敗の許されない方法。ですので、本当に神経を集中させなきゃ出来ない作品なんだと痛感しました。

完成されている写真を自ら壊し、別の完成形をつくる凄さ

普通、荒木さんぐらいの人になると、やりたいことはやり尽くしてる感があってもおかしくないはずですが、今回あらためて、彼はいまだ進行形のアーティストだな、と感じました。普通の人は、こういうふうに自分の作品の上にペイントしたりはしませんよ。さらにすごいと思うのは、ペイントを施して初めて作品が完成するのではなく、一枚一枚の写真は、写真としてすでに完成されているものだという点です。

つまり、その完成度を自ら壊した上で、元の写真とは別の完成形をちゃんと成立させている。これはなかなか出来ることではないでしょう。もちろん、荒木さん自身は「写真家」として完成された作家ですし、その評価は今後も変わることはない思います。しかし、今回の作品を見ていると、すでに写真家という枠さえも超えているように感じます。ひとつ抜けきった感じとでもいうんでしょうか。書道などにも通じる研ぎ澄まされたものを感じました。

第36回 荒木経惟個展<br><br>『好色』(その2)

荒木経惟個展「好色」
2008年10月17日(金)~2008年12月7日(日)まで
ラットホールギャラリー
12:00-20:00(月曜休)

RAT HOLE GALLERY & BOOKS
東京都港区南青山5-5-3-B1
Tel. 03-6419-3581

           
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