Audi TTS coupe|“鍛え上げられたTT”の実力(後編)アウディTTSクーペ試乗
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2015年3月16日

Audi TTS coupe|“鍛え上げられたTT”の実力(後編)アウディTTSクーペ試乗

アウディTTSクーペ

“鍛え上げられたTT”の実力(後編)

さりげなくスポーティネスを放つルックスとは裏腹に、「アウディTTSクーペ」は、走行性能はもちろん、環境性能にも配慮した、骨太なパフォーマンスの持ち主だった。

文=生方 聡写真=荒川正幸

乗り心地のよさ、軽快な動き

乗り心地のよさ、軽快な動き

これだけエンジンがパワーアップすると、扱いにくいクルマなのでは……という不安が心をよぎる。しかし、スポーツシートに身を委ね、ひとたび走り出せば、それがとりこし苦労であることがすぐにわかる。

100mも走らないうちに、TTSクーペの乗り心地のよさに感心した。その秘密はTTSには標準装着される電子制御タンパーの「アウディ マグネティックライド」。TTS専用のチューンが施されるというが、「ノーマル」と「スポーツ」のうち、ノーマルを選ぶと、245/40R18タイヤを装着するTTSのほうが、17インチのベーシックモデルよりむしろ乗り心地は快適に思えるほど。

いっぽう、スポーツに切り替えると、ワインディングロードでは明らかにロールが小さくなり、軽快な動きに磨きがかかる。

エンジンも手放しに速い。デュアルクラッチトランスミッションの先駆けであるSトロニックにより、スムーズに発進するTTS。大径タービンターボを採用したおかげで、低回転では相対的に物足りなさを感じる一方、3000rpmを超えたあたりからは、なにか後ろから押される感覚をともないながら、あっというまにレブリミットの6800rpmまで吹け上がる。

すると、Sトロニックがスパッとシフトアップを決め、ふたたび刹那の快楽をもたらしてくれるのだ。一連の動作に荒さはなく、あまりのスムーズさには拍子抜けするほどだ。

あえて4気筒を選んだ理由

どんなパワーも手懐けるのは、もちろんクワトロが大きく貢献している。しかもこのTTSから、後輪にトルクを配分するハルデックスカップリングが最新の第4世代に進化し、ドライバーやクルマの動きを先読みするかのような素早いレスポンスがスポーツドライビングをいっそう楽しくする。

これだけの実力の持ち主にもかかわらず、10・15モード燃費をチェックすると10.8km/Lという好データ。「ポルシェ・ケイマンS」(828万円)や「BMW Z4クーペ3.0si」(578万円)、あるいは「メルセデス・ベンツSLK350」(743万円)など、ライバルたちが6気筒に頼るなか、あえて4気筒で立ち向かうのは、燃費性能をおろそかにしたくないというアウディの意図のあらわれだろう。

そうなると、あらゆる面で優等生過ぎる気もするが、そのクールさがまたアウディらしい。TTSはアウディのテクノロジーと魅力を凝縮した一台なのだ。

           
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