信國太志さんからのメッセージ「連載スタートにあたって」
Fashion
2015年5月20日

信國太志さんからのメッセージ「連載スタートにあたって」

連載スタートにあたって

信國太志さんからのメッセージ

パリで2009春夏コレクションの展示会を終えたばかりのデザイナー信國太志さんと、東京のオフィスで会った。
OPENERSでの連載のテーマは、ずばり「SPIRITUAL FASHION」。「fashion is not just for wrapping body but spirit~ちょっと変になってしまったデザイナーのちょっと変わったファッションのはなし~」というサブタイトルが興味をそそる。
彼の新ブランド『BOTANIKA/taishi nobukuni』がスタートして増えたであろうエコの取材から話が始まった。

Photo by Jamandfixまとめ=梶井 誠(本誌)

本当のスピリチュアリティとは、良いとか悪いとかを超えること

──信國さんが『BOTANIKA/taishi nobukuni』を今春からスタートされて、エコロジーの取材でよくお見かけしますね

エコテーマでの引き合いが多いのは感じますね。その反面で、時代があまりにエコを声高に叫びすぎて、違和感を感じることのほうが多くなっています。

──ずれを感じると?

僕が『BOTANIKA/taishi nobukuni』を始めたのも、エコが理由ではなく、着心地や着ることの意識の問題、感覚的なとらえ方がまずありました。エコ視点での取り上げられ方もうれしいんですが、世間一般のエコとは違うんじゃないかと。
たとえば、僕は、地球温暖化は果たしてCo2が原因なのかということに疑問を感じて調べると、太陽の活動が活発になってきているという説もあって、太陽のエネルギーと地球の内部のエネルギーが反応して、大地震が起きたり、人間のバイブレーションと共鳴して、無差別殺人のような理解を超えた行動や、その逆の諦観など、感情の二極化が起きてきます。

──なるほど

そうするとスピリチュアルなことに興味をもつ人が増えるんですが、そこでまた違和感を感じるんです。目に見える世界がウソで、見えない世界が本当という、見えない世界のことを過大評価するという、いわゆる二元的な見方に陥ってしまう。
僕は、本当のスピリチュアリティというのは、良いとか悪いとかを超えることだと思うんです。

普通のコットンならむしろ化学繊維のほうが環境には負荷をかけない場合もある

──『BOTANIKA/taishi nobukuni』の反響はいかがですか?

それもやはり表面的なエコロジカルなとらえ方が多くて、今のところは違和感を覚えることが多いですね。もっと普通のこととして、素直に受け入れられるといいなと思います。
僕自身もほかで体験しましたが、オーガニックコットンが20%とか30%入っているという売り文句だけで、実際に触ってもそれを感じることができない。そういうのは、たとえブームになっても、お客さんがその違いを感じられなければ、すべて元に戻ってしまう。うんちくやセールスではなく、違いを感じられることが大事なんです。つくる側は、それを表現できないとウソになってしまう。
だから自分がファッションを考えるときも、「オーガニックコットンを使っているからリラックスできて、デザインなんか別にどうでもいい」とならないように気をつけています。

──たとえば、素材の可能性はどう考えていますか?

綿自体は使わないほうがいいんじゃないかと思います。普通のコットンを使うなら、むしろ化学繊維のほうが環境には負荷をかけない場合もあります。あと、麻などにも可能性は感じますね。
山形にある民俗資料館に行って昔の着物を見ると、綿は贅沢品です。これだけ綿が一般的になっているのは本来アンバランスなこと。みんながオーガニックコットンを使ったら供給量が足りないことはわかりきっている。
そうやって考えていくと、エコロジカルなのは、実はシルクかもしれません。桑を育てるところから一環的な生産ができます。あとはヘンプですね。

──染料はどうですか?

染料はオーガニックの風合いを生かそうと思うほどこだわらざるを得ません。染色すると、染める前の生成のオーガニックコットンに触れたときの感触が微妙に薄れてしまうことがあるんです。
染色家の山岸さんという方がいて、その方は染料の植物を育てるところから手がけていて、家の横に川が流れているという理想的な環境で仕事をされています。彼は「天然染料とは蛍光色」、暗闇の中で光るのが天然の色と言うんです。それを聞いてから既成概念が変わりましたね。
山岸さんは染めるときは絶対に手袋をしないんです。理由を聞いたら、色を手で感じるそうです。たとえば、赤い色の服は、からだを温めるんですね。

──今年の秋冬コレクションの特徴は?

テーマは特に設定していませんが、インスピレーション的には建築家のモルフォシスのトム・メインの作品があって、カッティングにこだわったりしています。
根底にあるのは、オーガニック素材を使うので、デザインはモダンなものにしたいという考えですね。

──信國さんはモア・トゥリーズの賛同人のお一人でもあり、これから商品企画などでもよろしくお願いします

こちらこそ、よろしくおねがいします。

次回より連載「SPIRITUAL FASHION」がスタートします。お楽しみに!
           
Photo Gallery