新型XC90がついに登場|Volvo
CAR / MOTOR SHOW
2015年1月9日

新型XC90がついに登場|Volvo

Volvo XC90|ボルボ XC90
ボルボ新時代のフラッグシップSUV

新型XC90がついに登場

ボルボのフラッグシップSUV「XC90」がついにフルモデルチェンジを果たし、第2世代モデルが登場した。2002年に登場し、12年もの長きに渡り全世界で好調なセールスを行ってきた「XC90」は、どんな変身を遂げたのか。ニューモデルに込められた開発陣の思いと、今後のボルボの在り方を示す新しいデザインフィロソフィー、そして惜しみなく採用された最新テクノロジーの数々を見ていくことにしよう。

Text by SAKURAI Kenichi

新世代を名乗るにふさわしいフラッグシップSUV

昨年のフランクフルト モーターショーで公開された「ボルボ コンセプト クーペ」や、今年1月のデトロイト モーターショーの「ボルボ コンセプト XC クーペ」、3月のジュネーブ モーターショーで発表された「ボルボ コンセプト エステートボルボカーズ」。これら新世代のボルボを示唆するデザインコンセプト3部作が、ついにプロダクションモデルへと昇華した。

デザインを統括するトーマス・インゲンラート デザイン担当副社長を迎え、新世代を担うデザインの構築を急務としていたボルボは、今回発表した2世代目の「XC90」で使用したあたらしいデザインキューを今後デビューする次世代モデルにも拡大採用し、新ファミリーを形成していく予定だ。

反対に考えれば、ボルボは、XC90登場のためにデザインコンセプトカーを3台も開発し、1年にわたり用意周到にプレビューしたともいえ、使用されるこの新世代のデザインキューとイコールでもある新型は、絶対に失敗が許されないモデルだと紹介してもまちがいではないだろう。それほど、このXC90は、ボルボの本気度を示し、ボルボの未来がかかったモデルでもあるのだ。注目しないのは無理というものである。

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ボルボは、XC90のために世界有数の安全性や、あたらしいパワートレーン、プレミアムクオリティの7シーターキャビンを有するプラットフォームを新開発。トータル約110億ドルにもおよぶ投資プログラムの中心モデルとして開発され、現状ボルボが生産モデルに投入可能な最先端技術を、惜しみなく採用したモデルでもあるのだ。

「あたらしい『XC90』の発表は、わたしたちの歴史のなかで最も重要な日のひとつ。ボルボはXC90でブランドの再定義をおこない、同時にこのクルマは、あたらしいボルボの象徴となるはずです。未来に繋がるエキサイティングな新時代を、このXC90が切り拓くのです」とボルボ カーグループの社長兼最高経営責任者ホーカン・サミュエルソンCEOは、XC90への期待感を言葉にしている。

Volvo XC90|ボルボ XC90
ボルボ新時代のフラッグシップSUV

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あたらしいボルボの顔

ボルボのあたらしい顔をしめす縦格子を基調としたフロントグリルに備わるエンブレムは、これまで長年使用したSKFのベアリング商標にルーツを持つデザインをベースに、現代的なテイストでブラッシュアップ。円と矢印、そこにはいる「VOLVO」の文字という基本構成はそのままだが、より一体感ある洗練されたデザインに進化を果たしている。

これに、T字型のトールハンマー(映画「アベンジャーズ」に登場するマイティ・ソーが持つハンマーといえばイメージしやすいはず)をモチーフとしたDRL(デイタイム ランニング ライト)や、ショルダーラインの張ったメリハリのある筋肉質のアスリートを思わせるボディ形状、そしてそのボディに沿った形状を持つテールライトなどを採用。ボルボをよりボルボらしく、ボルボをよりあたらしく見せるアイコンになっている。3列シートを採用したSUVとしては、オーソドックスな2BOX形状ながら、そのディテールには“新世代”のキーワードが満載である。

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ラインナップ中唯一となる3列シートのキャビンは、ボルボの特徴であったスカンジナビアンテイストあふれるイメージをそのままに、よりラグジュアリーな雰囲気を醸し出す。

立体的に層を重ねるようにデザインされたウッドとレザーのコンビネーションは、天然素材を多用することで得られる温かみを表現し、これぞまさにスカンジナビアンテイストと思わせる演出である。現行XC90との比較では、デザインクオリティや質感が大幅に向上したことも窺い知れる。

既報だが、オプションで用意されるスウェーデンの有名なガラスメーカー、オレフェス社製のクリスタルガラス製シフトレバーをはじめ、エンジンスタートボタンやドライブコントロールボタンにもアクセサリー然とした特徴的なダイヤモンドカット加工が施されるなど、質感や細部にまでこだわりをもってデザインされているのが理解できる。

ダッシュボード中央に備わる大型のスクリーンは縦型に装着され、iPhoneを車両のインターフェイスで活用できる「CarPlay」も利用可能だ。スマートホンややタブレット型端末のようにタッチクリーン式で操作をおこなうほか、音声認識システムである「Siri」に対応しているため、ハンズフリーでコントロールすることができる。

メーターナセルに備わるのは、他ブランドでも一般的になってきた液晶モニターで、ここにスピードやタコメーターといった一般的な車両情報のほかに、各種アラートやナビゲーションの表示など、ドライバーが任意に表示をセッティングできるようになっている。

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7人乗りを可能とするシートレイアウトは、前列2座席、2列目3座席、3列目が2座席を用意する。それぞれ立体的なシート形状が特徴で、乗員の体をしっかりとサポートしてくれるデザインを採用した。3列目は、身長170cm程度の大人2人が快適に過ごせる空間を構築しているという。

Volvo XC90|ボルボ XC90
ボルボ新時代のフラッグシップSUV

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スケーラブル プロダクト アーキテクチャー(SPA)

こうした実際に目で見て触れて分かるパート以外にも、革新的なボルボとして、「XC90」は歴史にその名をとどめる。新開発のプラットフォーム「スケーラブル プロダクト アーキテクチャー(SPA)」を採用した初のボルボであり、これは今後のボルボのパフォーマンスと生産性を大きく左右するテクノロジーだと紹介できる重要なキーワードでもあるからだ。

「スケーラブル プロダクト アーキテクチャー(SPA)」は、他モデルへの応用や展開が可能な車台構造で、今後登場するボルボ車の大半が、このあたらしいシャシーを採用する予定だ。システムはモジュール化されさまざまなモデルで共用できるうえ、さらにそれぞれの車種キャラクターに合わせ拡張も可能。フレキシビリティが向上した生産工場で、効率よく製造できるのも、メーカーサイドの大きなメリットである。

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この「スケーラブル プロダクト アーキテクチャー(SPA)」と同時に、ボルボでは「ボルボ エンジン アーキテクチャー(VEA)」と呼ぶ、燃料効率に優れる完全新設計の4気筒エンジンを開発し、市販モデルに採用している。

われわれにとっては、「ボルボ エンジン アーキテクチャー(VEA)」というよりも、8段ATと組み合わせられた2リッター直列4気筒直噴ターボユニット「B420」の型式で知られる、新世代パワーユニット「Drive-E(ドライブ イー)」と紹介した方が馴染みはあるかもしれない。

ともかく、ボルボは、シャシーとドライブトレーンというクルマにとっては基本性能を決定づけるハードの両輪で、次世代への移行を完全にスタートさせたことになる。

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ボルボ新時代のフラッグシップSUV

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T8ツインエンジンをはじめ5種類のエンジンバリエーション

しかし、パワートレーンハイライトはこれだけではない。SUVに求められるパワーと、燃費の向上を果たすために、新型XC90には、「Drive-E(ドライブ イー)」をベースに開発された「T8“ツインエンジン”」をトップモデルに採用したことも大きなトピックスだ。そのネーミングから、エンジンを2基搭載しているような印象をもつが、既報の通りこれは、エンジン+モーターのボルボ初となるプラグインハイブリッドのパワーユニットである。“2つの動力をもつ”という意味で、「ツインエンジン」と呼ぶ……と、理解すれば良いだろう。

エンジンパートは、2.0リッター直列4気筒ガソリンエンジン「Drive-E(ドライブ イー)」をベースとし、これをスーパーチャージャーとターボチャージャーのツインチャージャーで過給。まさに“現代技術の全部のせ”で、フロントを駆動する。

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対する電気モーターは、最高出力80ps(60kW)を発生。こちらは、車体後部に配置され、後輪を駆動。SUVに求められる4WDの走破性を、ガソリンエンジンとモーターで実現しているのである。「T8“ツインエンジン”」システム全体で、最高出力400ps、最大トルク640Nmの動力性能を誇り、二酸化炭素排出量はわずか60g/kmという数値にとどまる。プラグインハイブリッドとして期待される電気モーター+バッテリーでのEVモードでは、満充電で約40kmのゼロエミッション走行を可能とする。

こうしたパワートレーンのハイブリッド化によって搭載の必要に迫られるバッテリーやモーターといった付加物の設置にも、スケーラブル プロダクト アーキテクチャー(SPA)が柔軟に対応している点も見逃せない。

一般的な車両では、プラグインハイブリッドシステムの搭載にあたっては、キャビンのスペースや荷室の容量に影響をもたらすが、SPAではそうした設計上の制約も解消すると、ボルボではそのメリットを説明する。

いっぽう、欧州市場で主力エンジンとして期待される「D5」ツインターボディーゼルエンジンは、最高出力225ps、最大トルク470Nm、シングルターボのディーゼルエンジン「D4」は、最高出力190ps、最大トルク400Nmという実力。ガソリンエンジンでは、最高出力320ps、最大トルク400Nmを誇る「T6」を筆頭に、最高出力254ps、最大トルク350Nmの「T5」の2タイプのターボエンジンを設定。計5種類のパワートレーンをラインナップする。

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ボルボが誇る最先端のセーフティデバイス

最後になったが、“ボルボ”と聞き誰もが即座に思い起こす“安全性”というキーワードでは、2020年までに「今後登場するボルボ車が関与する交通事故の死亡者や重傷者をゼロにする」という安全目標、「ビジョン2020」の実現に沿ったセーフティデバイスの採用が特徴としてあげられる。

万が一の衝突時に乗員を守るため、車体構成鋼材としてもっとも強度が高い熱間鍛造のボロン鋼を使用した「セーフティケージ」や、車両が道路外に飛び出したと判断すると、停止するまで運転席と助手席のシートベルトを自動的に強く巻き上げ、乗員を適切な位置に固定して保護する「ランオフ ロード プロテクション」、路上から逸脱した車両が勢いよく地面に着地したときに発生する縦方向の衝撃力を最大で1/3まで低減させる「エネルギーアブソービング」といったパッシブセーフティ機能のほか、ステアリングに修正舵をくわえて進路を修正し車線内の走行をサポートするする「レーン キーピング エイド」、ドライバーの疲労や不注意を感知して警告する「ドライバー アラート コントロール」などのアクティブセーフティ機能も備わる。

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さらに、シティ セーフティやヒューマン セーフティで知られるボルボ自慢の自動ブレーキシステムは、従来からの追突回避や衝突衝撃軽減の機能にくわえ、交差点を曲がるさいに、対向直進車両との衝突の危険を検知して作動するという世界初の安全機能のほか、より高い速度での自動制動機能も備わった。

さらに、個性を演出する2つのスタイリングパッケージを用意したのも、XC90のプレステージ性を高めている。フロントデコレーションフレームや輝きを放つステンレス製のフロント&リアスキッドプレート、サイドスカッフプレートやカラーコーディネートボディキットを組み合わせ、それに21インチのポリッシュホイールを加えた“アーバンラグジュアリーパッケージ”、ハイテクマットブラックの外装トリム、ステンレス製のスキッドプレート、イルミネーションやインテグレードエキゾーストパイプ、ランニングボード22インチホイールを採用した“ラギッドラグジュアリーキット”がそれだ。

まさに待望の、という紹介がふさわしいボルボのあたらしいフラッグシップSUV「XC90」は、まもなく開催されるパリ モーターショーで、全世界に向けて一般公開される予定である。2015年に見込まれる日本上陸を期待したい。

           
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