F12 ベルリネッタに宿るフェラーリのデザイン美|Ferrari
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2015年4月2日

F12 ベルリネッタに宿るフェラーリのデザイン美|Ferrari

Ferrari F12 Berlinetta|フェラーリ F12 ベルリネッタ
僕たちがこのクルマに惹かれる訳

F12 ベルリネッタに宿るフェラーリのデザイン美

いつの時代も人々を惹きつけてやまないクルマがある。フェラーリの魅力はどこからやってくるのだろう。スピード、サウンド、匂い、歴史、それともデザインだろうか。今回、フェラーリのフラグシップモデル、「F12」のステアリングを握る機会を得た九島辰也氏は、東京から成田まで、その答えを探しにアクセルを踏んだ。

Text by KUSHIMA TatsuyaPhotographs by NAKAGAWA Junai

フェラーリはこれが2度目だ

去る5月の終わりにフェラーリから興味深いニュースが入ってきた。フェラーリ「F12ベルリネッタ」が、ADIコンパッソ・ドーロ・デザイン賞を受賞したというものである。

“金のコンパス”を意味するコンパッソ・ドーロ賞は、今年60周年を迎える伝統あるデザインアワード。授賞式は3年ごとにおこなわれ、国際的な設計者やスペシャリスト、歴史学者、ジャーナリストによって直近3年間にイタリアの創造性と専門技術の範例となる20のプロダクトを選出するというものだ。

そこで今回、F12ベルリネッタが選ばれた。2012年にリリースされたモデルだけに「いまさら?」とおもったのは確かだが、3年に一度と聞けば納得である。

さらにおもしろいのはフェラーリはこれが2度目だということ。しかも、前回はクルマではなくルカ•ディ•モンテゼーモロ会長自身だという。そのときはマラネロで働く従業員の地位向上や企業的文化の浸透が讃えられた。ちょうど彼らが“フォーミュラ・ウォモ”プロジェクトを掲げたときとおもわれる。

一度だけマラネロのファクトリーを見学させてもらったことがあるが、その環境はすばらしいものだった。あれだけ自然光の入る生産工場をかつて見たことがない。建物の中に自然光を浴びる樹木があったのが印象的だ。フェラーリの美学をそこで感じた。

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Ferrari F12 Berlinetta|フェラーリ F12 ベルリネッタ
僕たちがこのクルマに惹かれる訳

F12 ベルリネッタに宿るフェラーリのデザイン美 (2)

ロングノーズ&ショートデッキのプロポーション

さてそんなF12ベルリネッタ。モノがモノだけになかなかステアリングを握る機会は少ないが、今回それを得た。

このクルマの特徴は前述したように美しいデザインもそのひとつに挙げられる。ロングノーズ&ショートデッキのプロポーションはまさにFRスポーツの極み。広いボンネットの下にはパワフルな12気筒ユニットがおさまり、生み出されるエネルギーを駆動力に変換しリアの太いタイヤが大地を駆る様子が伝わってくる。停まっているだけで、だ。

もちろん、それは見た目から想像されるだけではない。F1を実験室とする彼らは空力を味方につけている。そのひとつがエアロブリッジだ。これはボンネット上部を通る風の流れをフロントフェンダーにトンネルを設け、ダウンフォースに変えるというもの。

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資料によると彼らはこれをつくるために、5,000時間の演算と250時間の風洞実験をおこなっている。結果、ダウンフォースは13パーセントプラス、空気抵抗は3パーセント低減した。時速200キロ走行時のダウンフォースはフェラーリ「599」が70kgだったのに対し、F12 ベルリネッタは123kgとなる。

この他にはアクティブブレーキクーリングがある。こいつはグリル下左右のフラップを開けて空気を流れ込ませフロントブレーキを積極的に冷やすというものだ。もちろん、通常走行では必要なくトラックでしか効果はないが、あるとうれしい機能。というか、フェラーリオーナーの心をくすぐる装備と言える。

全体のフォルムに目がいきがちなフェラーリのデザインだが、細部まで精緻に計算されているのが彼ら流。なかなかニクい演出が散りばめられている。

Ferrari F12 Berlinetta|フェラーリ F12 ベルリネッタ
僕たちがこのクルマに惹かれる訳

F12 ベルリネッタに宿るフェラーリのデザイン美 (3)

クルマが軽く感じる

走りに関していまさら多くを語るまでもないが、740馬力のパワーは相当だ。というか、出だしや中間加速でその一端は垣間みれてもすべてを実感することはできない。サーキットへ持ち込めばある程度体感できるだろうが、いろいろと条件は必要だろう。

それと同時に最大トルクの80パーセントを2,500回転で発生させることも、パワーを実感できないことと関係する。ピーキーなところがないため、いつも低い回転域で走ることができてしまうからだ。つまり街中でもフツーに扱える。

もちろん、フェラーリサウンドを楽しみたければ、下のギアを引っ張ればOK。F1デュアルクラッチギアボックスがそれをかなえてくれる。レスポンスは一流だ。ちなみに、このサウンドは吸気側に二次吸気システムを設けたり、6気筒づつ1本に束ねたエキゾーストマニホールドのチューブ長を左右同じにしたりしてクリエイトしている。この辺のこだわりはかなりのものである。

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走りに関していろいろ感じることは多いが、一番言いたいのはクルマが軽く感じること。V8フェラーリよりもボリュームあるスタイリングからして、そうはおもえないところもあるが、実際は想像以上だ。この軽快さは、走れば走るほど驚きの連続である。個人的には599からその傾向は強くなった気がする。そしてこいつはそれを遥かに超える。事実、調べてみると、F12 ベルリネッタは599よりも50kg軽くなっていた。

そんなことを感じた今回のテストドライブだったが、やはりすごいのは注目度。撮影のため成田空港のそばまでドライビングしたが、高速も街中も視線は熱かった。でも似合うのはやはり六本木界隈。フェラーリ ジャパンのお膝元だけに、おもいのほかしっくりくる……。

Ferrari F12 Berlinetta|フェラーリ F12 ベルリネッタ
ボディサイズ|全長4,618×全幅1,942×全高1,273 mm
ホイールベース|2,720 mm
トレッド 前/後|1,665 mm / 1,618 mm
車輌重量|1,525 kg*
エンジン形式|65度V型12気筒
総排気量|6,262 cc
ボア×ストローク|94 × 75.2 mm
圧縮比|13.5
最高出力|545 kW(740 ps)/8,250 rpm
最大トルク|690 Nm(約70.4 kgm)/6,000 rpm
トランスミッション|7段AT(F1デュアルクラッチ)
サスペンション|磁性流体ダンピングコントロールシステム(SEM-E)
ブレーキ|カーボンセラミックブレーキ(CCM3)
タイヤ 前/後|255/35ZR 20 / 315/35ZR 20
ホイール 前/後|9.5J x 20 / 11.5J x 20
最高速度|340 km/h以上
0-100km/h加速|3.1秒
燃費|15ℓ/100 km(約6.6km/ℓ)
CO2排出量**|350 g/km
価格|3,730 万円

*軽量パッケージ装着車(オプション)
**HELEシステム搭載車

フェラーリ・コンシェルジュ
0120-325-408 (月曜日 - 金曜日、午前10時 - 午後6時)

           
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