角田陽太|「東京浪漫酒場」|第七回 森下「山利喜」
DESIGN / FEATURES
2015年11月11日

角田陽太|「東京浪漫酒場」|第七回 森下「山利喜」

日本酒に洋食、洋酒に和食。いい意味で境界にこだわらないミックスを味わう

第七回 森下「山利喜」

東京・江東区森下 墨田区との区境にその銘店はある。東京大空襲で焼失し中断したこともあるが、90年前に誕生した歴史ある店である。地下鉄の森下駅から東に少し歩くと本館、北に少し歩くと新館。今回は新館の方にお邪魔した。

Text by KAKUDA Yota Photographs by YAMADA Kazunobu

明るいうちから1階はほぼ満員

豚が描かれているラブリーなのれんを目印に店に入ると、明るいうちから1階はほぼ満員。ちなみにのれんのキャラクターは焼きとんの部位をわかり易く説明したもので、二代目店主、山田要一さんのデザインだ。

カウンターに座り厨房を眺めると、ベテランの職人たちが黙々と働く姿がとても素敵だ。焼場で使われているうちわは四角い形状で、横長のグリル部のみに風を送ることができる優れもの。

冷酒から白ワイン、赤ワインへ

まずは冷酒とおぼろ豆腐、そして自家製のお新香でスタート。どれも吞ん兵衛にはたまらない逸品だ。その後いろいろな冷酒を飲みながらあじの刺身、焼きとんといただく。そしてここからがこのお店のおもしろいところ。白ワインに切り替えて、薫製盛り合わせをおいしくいただいた。三代目の現店主のバックグラウンドがフランス料理だったこともあり、そのエッセンスを取り入れたメニューをたくさん採用したのだ。

今度は赤ワインにあわせて名物の煮込みにガーリックトーストを添えていただく。6時間以上かけて牛のシロとギアラを煮込んだ絶品で、もちろんパンに汁を最後まで吸わせる。

その煮込みで使われる鋳物の鍋はカウンターからも見えるのだが、その存在感はまさに店の主役。

ソムリエでもあるフロアマネージャーの水上さんが豚肉と鶏レバのテリーヌにあわせて違うワインを選んでくれた。そのほか、ラタトゥイユなどがとてもおいしい。

最後の方にくさやもオーダーしたが、白ワインも意外に合うという感想だ。

日本酒に洋食、洋酒に和食。いい意味で境界にこだわらないミックスをゆっくり楽しんだ。下町の居酒屋でワインもなかなかいい。

山利喜 新館
東京都江東区森下1-14-6
Tel. 03-5625-6685
営業時間|17:00~23:00
定休日|日曜日・祝日

角田陽太|KAKUDA Yota
デザイナー。仙台生まれ。2003年渡英し、さまざまな事務所で経験を積む。2007年ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)を修了。2008年に帰国後、無印良品のプロダクトデザイナーを経て、2011年、YOTA KAKUDA DESIGNを設立。
http://www.yotakakuda.com/

山田和伸|YAMADA Kazunobu
1978年奈良県生まれ。2005年よりフォトグラファー熊谷隆志氏に師事。2008年独立、以降フリーランスフォトグラファーとして活動中。

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