サーキット試乗、BMW M3セダン & M4クーペ|BMW
CAR / IMPRESSION
2015年1月13日

サーキット試乗、BMW M3セダン & M4クーペ|BMW

BMW M3 Sedan|ビー・エム・ダブリュー M3 セダン
BMW M4 Coupe|ビー・エム・ダブリュー M4 クーペ

サーキット試乗、BMW M3セダン & M4クーペ

BMWのハイパフォーマンスシリーズ「M」の最新モデル「M3 セダン」と「M4 クーペ」をサーキットでテストドライブ。第5世代目へと進化したM3セダンにくわえ、先代のM3クーペに代わる後続モデルとして「4シリーズ クーペ」から派生したニューモデル、M4クーペの実力を渡辺敏史が試した。

Text by WATANABE ToshifumiPhotographs by ARAKAWA Masayuki

M社のポリシーとエンジニアリング

BMWにとって「M」とは、彼らの社是である「駆けぬける歓び」を最大限に満たすことを確約するコードだ。その体験はエアロパーツ&ローダウンサスを組んだカタロググレードからはじまることになるが、なかでも、もっとも純然と走りを追求し、そのためにエンジンからサスペンションシステムから何もかもを専用設計としたのが「M」を頂きに掲げる、すなわち「M3」「M5」「M6」、そして「X5 M」「X6 M」というラインナップである。

巷間のMスポーツとは繋がっていながらあまりに異なる世界観を呈している、その最大の理由はベース車とエンジンの設計を全面的にちがえることが大きいといってもいいだろう。

たとえば、この代からクーペを「4シリーズ」の登場に倣って「M4クーペ」と名乗りはじめた最新の「M3 / M4」も、レギュラーラインと同様の3リッター直6ターボエンジンながら、こちらはヘッドやブロックからして全くあたらしく設計された直噴ツインターボ(レギュラーラインはシングルターボ)となり、そこにはM社のポリシーとエンジニアリングがとめどなく注ぎ込まれている。

シリンダーのクローズドデッキ化や鍛造クランクシャフトの採用とともに、ボア/ストローク比を著しくショート側としたあたらしいM3 / M4のエンジンは、IHI製タービンを最大1Bar近くで過給し、431psという前型を上まわるパワーを7,500rpmで発生するという高回転型に設えられたかとおもう一方で、前型比で4割近くも向上した550Nmのトルクをわずか1,850rpmから発生する。従来の4リッターV8ユニットに対して、より大きなパワー&トルクを、より広い回転域に行き渡らせるという算段だ。

BMW M3 Sedan|ビー・エム・ダブリュー M3 セダン
BMW M4 Coupe|ビー・エム・ダブリュー M4 クーペ

サーキット試乗、BMW M3セダン & M4クーペ (2)

歴代最速であることに、まちがいはない

と、ここまでパワフルに進化した中身に対して、内外装はベース車の、ことMスポーツグレードに対して特筆するほど大きな変更を伴った感はない。整流を充分意識しただろうバンパーグリルの形状も、トランクのリッドやフレームも含めて軽量化のために樹脂で構成するリア周りも、強く意識しない向きにはそれがMの仕事であるとは察せられないかもしれない。

しかし、トレッド拡大の意も兼ねて拡幅されたフェンダーは、それを知る者に一瞥で只ならぬ妖気を伝えることだろう。おもえば「秘める」ことはMが貫いてきた流儀でもある。

そのちがいを、もっとも強く知らしめるエキゾーストノートは傍で聞く限り、全体的に低めに整えられている。これは昨今隆盛の直噴ターボに共通する特徴だ。が、ピタリとビートを揃わせてシュンシュンと吹けるストレート6のメカニカルなサウンドは、ブリッピングからしてドライバーの心を一気に昂ぶらせるはずだ。

走りはじめてみると、まず驚かされるのはやはりターボならではのトルクの厚さだ。トルコンを持たないデュアルクラッチ式のミッションのため、さすがに過給が立ち上がる1,000rpm前後、たとえば転がりはじめなどのちからの弱さは否めないが、1,500rpmもまわっていればアクセル操作に対して駆動輪はグイグイとレスポンスし、アップシフトによる加速のドロップもほとんど感じさせない。

たとえば高速巡航などの低回転域からシフトダウンなしにアクセルを一気に踏み込むような状況では若干の過給ラグも感じられるが、3リッターのキャパシティで430psオーバーを捻り出していることをおもえば、総じて扱いやすさは確保されているといっていいだろう。

試乗は富士スピードウェイのメインコースでもおこなわれたが、最終コーナー脱出から第1コーナー進入手前までのストレートで軽く全開加速を試してみたら、260km/hを超える速度をマークした。

この数字、GT-Rには劣るが911カレラには勝る──といえば、その動力性能をイメージしていただけるだろうか。とにかく歴代最速の速さであることに、まちがいはない。それでも、加速感的には分厚いトルクを利して前半にぐんぐんスピードを乗せるタイプゆえ、その速さが全体的に平板な印象となってしまうのは些か残念だ。この辺りがターボユニットの難しいところである。

BMW M3 Sedan|ビー・エム・ダブリュー M3 セダン
BMW M4 Coupe|ビー・エム・ダブリュー M4 クーペ

サーキット試乗、BMW M3セダン & M4クーペ (3)

Mらしいフレキシビリティ

だが、それを補って余りある印象を与えてくれるのが、ステアリングでもアクセルでもおもうがままにラインを変えていける柔軟性をもったハンドリングだ。操舵開始時から初期ゲインが強めに現れるあたりはMらしいが、ロールスピードと量はしっかりチューニングされており、唐突な姿勢変化がないぶんコントロールの安心感は高い。

そして追い込むほどに後輪左右に駆動配分を最適制御する電子制御デフの効果がしっかり現れ、まるで舵角からの旋回イメージを先回りするかのごとく、車両をピタリとインに張り付けてくれる。回頭性の高さは下級のFRモデルも舌を巻くほどで、特に30Rやシケインのようなタイトターンでの連続でも更にインに切れ込むような修正舵に難なく応答するなど、その走りの自在性には驚かされた。

いっぽうでスタビリティにも何ら問題はなく、250km/h超からでも安心してフルブレーキを踏んでいけるなど、大負荷での足回りの接地変化も努めて小さく仕上げられている。

430ps超のパワーをFRで支えるとあらば、そのバネやスタビライザーはさすがに高いレートのものが使われているのだろう。大きなアンジュレーションや強い凹凸では車体は正直に反応するが、ごく低速域からしっかりとダンピングは効いていることもあってそのショックは気になるほどではない。

標準のスチールであれオプションのカーボンセラミックであれ、極端な温度変化でもなければブレーキのタッチに乱れはなく、微妙な速度コントロールもそつなくこなしてくれる。短時間の試乗ゆえ、色々にシーンを試せたわけではないが、パフォーマンスを鑑みればその快適性は充分以上といって良さそうだ。

つまり、週末はサーキットで存分にその走りを堪能しながら、平日は平穏なファミリーサルーンとしても機能してくれる。スペースユーティリティも含め、Mらしいフレキシビリティは最新のM3 / M4にもしっかり備わっているということである。

BMW M3 Sedan|ビー・エム・ダブリュー M3 セダン
ボディサイズ|全長 4,685 × 全幅 1,875 × 全高 1,430 mm
ホイールベース|2,810 mm
トレッド 前/後|1,579 / 1,603 mm ※
最低地上高|120 mm ※
重量|1,640 kg
エンジン|2,979cc 直列6気筒 直噴DOHC ツインターボ
ボア×ストローク|84.0 × 89.6 mm
圧縮比|10.2
最高出力| 317 kW(431ps)/ 5,500-7,300 rpm
最大トルク|550 Nm/ 1,850-5,500 rpm
トランスミッション|7段 M DCT
駆動方式|FR
サスペンション 前|ダブルジョイント スプリング ストラット
サスペンション 後|5リンク
タイヤ 前/後|255/40R18 / 275/40R18
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ベンチレーテッドディスク
最小回転半径|6.1 メートル ※
トランク容量|480 リットル ※
0-100km/h加速|4.1秒 ※
0-1000m|21.9秒 ※
最高速度|250km/h(リミッター制御)※
燃費(NEDC値)|8.3 ℓ/100km(およそ12.0km/ℓ)※
CO2排出量|194 g/km ※
ハンドル|右
価格|1,104 万円
※は欧州仕様の値

BMW M4 Coupe|ビー・エム・ダブリュー M4 クーペ
ボディサイズ|全長 4,685 × 全幅 1,870 × 全高 1,385 mm
ホイールベース|2,810 mm
トレッド 前/後|1,579 / 1,603 mm ※
最低地上高|121 mm ※
重量|1,610 kg
エンジン|2,979cc 直列6気筒 直噴DOHC ツインターボ
ボア×ストローク|84.0 × 89.6 mm
圧縮比|10.2
最高出力| 317 kW(431ps)/ 5,500-7,300 rpm
最大トルク|550 Nm/ 1,850-5,500 rpm
トランスミッション|6段MT / 7段 M DCT
駆動方式|FR
サスペンション 前|ダブルジョイント スプリング ストラット
サスペンション 後|5リンク
タイヤ 前/後|255/40R18 / 275/40R18
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ベンチレーテッドディスク
最小回転半径|6.1 メートル ※
トランク容量|445 リットル ※
0-100km/h加速|(6MT)4.3秒  (7M DCT)4.1秒 ※
0-1000m|(6MT)22.2秒  (7M DCT)21.9秒 ※
最高速度|250km/h(リミッター制御)※
燃費(NEDC値)|
  (6MT)8.8 ℓ/100km(およそ11.4km/ℓ)※
  (7M DCT)8.3 ℓ/100km(およそ12.0km/ℓ)※
CO2排出量|(6MT)204 g/km  (7M DCT)194 g/km ※
ハンドル|(6MT)右/左  (7M DCT)右
価格|(6MT)1,075 万円  (7M DCT)1,126万円
※は欧州仕様の値

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