新生ポルシェ 911 タルガを試乗する|Porsche
CAR / IMPRESSION
2015年2月10日

新生ポルシェ 911 タルガを試乗する|Porsche

Porsche 911 Targa|ポルシェ 911 タルガ

デザインからポルシェを語るときのアイコン

新生911タルガを試乗する

ポルシェ「911」のなかで、もっとも優雅で贅沢なモデル。それが「タルガ」だ。2011年に現行のタイプ991のカレラが登場して以来、満を持してのデビューとなった最新モデルは、ルーフの開閉システムを一新。見た目の印象も大きく変えてきた。アドリア海に面したイタリア南部の街を舞台に、九島辰也氏がオープンエアモータリングを楽しむ。

Text by KUSHIMA Tatsuya

日本人にはピッタリな乗り物

ポルシェ好き、いやいやクルマ好きならご存知だろうが、ポルシェ「911」には「タルガ」というモデルがある。クーペ然としたオープンモデルだが、カブリオレともまたひと味ちがった存在だ。

そもそもは60年代のアメリカ市場向けにつくられた。背景には当時コンバーチブルの横転事故で死傷者が多発したことがある。屋根を切っただけでは乗員を保護することはできないからだ。そこで考えられたのがセンターピラーを残すタルガトップ方式。これだとピラーがロールバーの役目を果たし、乗員を保護してくれる。

ポルシェはそのプロトタイプを1965年のフランクフルトモーターショーで発表し、67年には製品化している。911誕生から間もない話である。もちろん、カブリオレが生まれるずっと前。70年代は911シリーズの約40パーセントを占めるメインストリームの一角を担う存在だった。

そんなタルガを数年前まで個人的に所有していた。空冷最後の993型である。ご承知のように、そこから997型までタルガトップはパノラミックガラスルーフを意味していた。ルーフ面いっぱいのガラスがスライドしてオープンエアを司るのがそれだ。

Porsche 911S Targa(Type 901)

この方式はじつに都合のいいものだった。なぜなら横から見ても屋根が開いていることがわからない。つまり、カブリオレのように目立たずしてオープンエアモータリングを楽しめるのだ。

まさにアンダーステイトメントな日本人にはピッタリな乗り物と言えよう。結果、我が愛車遍歴のなかでも最長の7年間ガレージにおさまっていた。

Porsche 911 Targa|ポルシェ 911 タルガ

デザインからポルシェを語るときのアイコン

新生911タルガを試乗する (2)

あたらしい開閉方式

さて、新型タルガである。このクルマはご覧のようにこれまでのタルガとはちがう。モチーフとなったのは前述した初代タルガで、センターピラーを残して屋根が開く。パノラミックガラスシートからスイッチしたあたらしい開閉方式だ。

“あたらしい”としたのは、作動はすべて電動だからだ。スイッチひとつでリアのガラス部分が斜め後方へ持ち上がり、その下へ2分割されたトップがしまわれる。その間わずか19秒。リアガラスが元の位置に戻ったあとは、はじめからトップはなかったのではとおもえるほどの完成度を見せている。

この一連の動作は走行中にはおこなえない。最近は時速50キロ以下なら稼働するオープンモデルもあるが、こいつはダメだ。その理由をしつこく聞くと、なるほどという答えが返ってきた。

それは作動中リアガラスで一瞬ブレーキランプが隠れるからだという。確かに、ブレーキランプが光っているかどうかわからないのは危険。なかなか説得力ある話である。

それでは、実際に走った感想へ移ろう。

Porsche 911 Targa|ポルシェ 911 タルガ

デザインからポルシェを語るときのアイコン

新生911タルガを試乗する (3)

オープンエアモータリングを楽しむべきだ

グレードは「タルガ4」と「タルガ4S」が用意される。ベースになるのはカブリオレのボディで、そこにセンターピラーと可動式のルーフシステムが組み込まれた。エンジンはクーペとクーペSの関係とおなじ。

タルガ4は350psの3.4リッターで、タルガ4Sは400psの3.8リッターユニットを搭載する。“4”となっているのは4WDだからだ。先代のタルガから駆動方式は4WDオンリーになっている。

では、風の巻き込みだが、時速80キロまではほとんど気にならないといっていい。助手席との会話もスムーズで、高速道路を走っていても大きな声を出す必要はない。ただ、そこから加速していくと風の音は大きくなり、フロントガラス上部やサイドからも風は激しく流入する。

リアガラスが後方を遮るのでカブリオレのように大きく髪が逆立ちすることはないが、やはり快適性は奪われる。助手席のことをおもいやると、アクセルを踏み込むときはルーフを閉めることをお薦めする。

もちろん、ひとりで走るときはそのままオープンエアモータリングを楽しむべきだ。風を感じながら911の走りを堪能できるのは贅沢というもの。カブリオレより10%アップされたボディ剛性がこのとき威力を発揮する。

Porsche 911 Targa|ポルシェ 911 タルガ

デザインからポルシェを語るときのアイコン

新生911タルガを試乗する (4)

こだわるべきはボディカラー

タルガ4とタルガ4Sのちがいはクーペとおなじ。必然的に、軽快さを求めれば前者、パワーを追求すれば後者となる。まぁ、どちらにせよ、速いことは速い。個人的にはタルガ4で十分におもえた。

それよりもタルガを選ぶ上でこだわるべきはボディカラーだろう。どのカラーでもセンターピラーのシルバーは変わらないから、相性を見極める目が必要だ。実車を見た感じでは、ダークブルーメタリックとアンスラサイトブラウンメタリックがセンスよく見えた。訴求色となるサファイアブルーメタリックもワルくないが、オトナっぽさは薄まってしまう。

このような新型タルガだが、これだけデザイン性が高いとクリエーターの熱い視線を集めることが想像できる。ファッションデザイナー、クリエイティブディレクター、空間プロデューサーなんかが飛びつきそうだ。ニューヨーク、ミラノ、パリ、ロンドンあたりでそんな現象が起こっても不思議ではない。

その意味からすると、こいつがポルシェの別の一面をアピールするモデルとなるかもしれない。デザインからポルシェを語るときのアイコン、それがこの新型タルガである……。

Porsche 911 Targa 4|ポルシェ 911タルガ 4
ボディサイズ|全長 4,491 × 全幅 1,852 × 全高 1,298 mm
ホイールベース|2,450 mm
トレッド 前/後|1,532 / 1,560 mm
重量(DIN値)|1,560 kg
エンジン|3,436 cc 水平対向6気筒 直噴DOHC
圧縮比|12.5 : 1
ボア×ストローク|97.0 × 77.5 mm
最高出力| 257 kW(350 ps)/ 7,400 rpm
最大トルク|390 Nm/ 5,600 rpm
トランスミッション|7段オートマチック(7PDK)
ギア比|1速 3.91
    2速 2.29
    3速 1.65
    4速 1.30
    5速 1.08
    6速 0.88
    7速 0.62
減速比(前/後)|3.44 / 3.33
駆動方式|4WD
サスペンション 前|マクファーソンストラット
サスペンション 後|5リンク
タイヤ 前/後|235/40R19 / 295/35R19
ブレーキ 前|ドリルド ベンチレーテッドディスク(φ330 × 28 mm)
ブレーキ 後|ドリルド ベンチレーテッドディスク(φ330 × 28 mm)
最高速度|280 km/h
0-100km/h加速|5.0 秒(スポーツクロノパッケージの場合、4.8秒)
0-200km/h加速|17.5秒(スポーツクロノパッケージの場合、17.2秒)
燃費(NEDC値)|8.7 ℓ/100km(11.5 km/ℓ)
CO2排出量|204 g/km
燃料タンク容量|68 リットル
トランク容量(VDA値)|フロント125リットル、リア160リットル
価格|1,500万円

Porsche 911 Targa 4S|ポルシェ 911タルガ 4S
ボディサイズ|全長 4,491 × 全幅 1,852 × 全高 1,289 mm
ホイールベース|2,450 mm
トレッド 前/後|1,538 / 1,552 mm
重量(DIN値)|1,575 kg
エンジン|3,800 cc 水平対向6気筒 直噴DOHC
圧縮比|12.5 : 1
ボア×ストローク|102.0 × 77.5 mm
最高出力| 294 kW(400 ps)/ 7,400 rpm
最大トルク|440 Nm/ 5,600 rpm
トランスミッション|7段オートマチック(7PDK)
ギア比|1速 3.91
    2速 2.29
    3速 1.65
    4速 1.30
    5速 1.08
    6速 0.88
    7速 0.62
減速比(前/後)|3.44 / 3.33
駆動方式|4WD
サスペンション 前|マクファーソンストラット
サスペンション 後|5リンク
タイヤ 前/後|245/35R20 / 305/30R20
ブレーキ 前|ドリルド ベンチレーテッドディスク(φ340 × 34 mm)
ブレーキ 後|ドリルド ベンチレーテッドディスク(φ330 × 28 mm)
最高速度|294 km/h
0-100km/h加速|4.6 秒(スポーツクロノパッケージの場合、4.4秒)
0-200km/h加速|15.5秒(スポーツクロノパッケージの場合、15.2秒)
燃費(NEDC値)|9.2 ℓ/100km(10.9 km/ℓ)
CO2排出量|214 g/km
燃料タンク容量|68 リットル
トランク容量(VDA値)|フロント125リットル、リア160リットル
価格|1,800万円

※価格以外の数値は本国値

           
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