MOVIE|3.11で故郷を失った家族の再生物語『家路』
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2015年2月2日

MOVIE|3.11で故郷を失った家族の再生物語『家路』

MOVIE|3.11で故郷を失った家族の再生物語

再び希望を見出そうとする人間ドラマ『家路』

東日本大震災という予想だにしていなかった未曾有の状況を前に、人はどのように生きるのか──。ドキュメンタリー出身監督ならではの確かな視点で描かれる普遍的な人間ドラマ『家路』。3月1日(土)より、新宿ピカデリーほかでロードショーされる。

Text by KUROMIYA Yuzu

喜びも苦しみも、笑顔も涙もすべて“故郷”にあった

東日本大震災によって故郷を失ってしまった家族が、音信不通だった弟の帰郷をきっかけに、さまざまな試練を乗り越え絆を強めていく姿を映し出した人間ドラマが完成した。

監督は、ギャラクシー大賞をはじめ数々のドキュメンタリーの受賞歴を持つ久保田直。脚本は『いつか読書する日』(2005年)の青木研次によるオリジナル。現地での綿密な取材をもとに、未曾有の事態を経験した人びとが決して他人に伝えることのできない、心の奥底にしまわれた「感情」を丁寧に描き出した。

『家路』 02

10代で故郷を出たまま音信不通となった主人公・次郎役には松山ケンイチ。兄の総一役には演技派俳優、内野聖陽を配役。そのほか母・登美子役には田中裕子、総一の妻・美佐役には安藤サクラなど卓越した演技力をもつキャスト陣が集結した。

震災後、故郷に突然帰ってきた弟がもたらす家族の未来とは

震災後、福島。立ち入り禁止区域となった故郷に、次郎が20年ぶりに帰ってきた。父と母、そして腹違いの兄という家族の中で複雑な少年時代を過ごし、ある「事件」の罪をかぶったまま後にした故郷。もう二度と帰らないことを心に決め、家族との連絡を絶っていた彼は、そこが無人になったいまだからこそ、戻ることを決意したのだった。

『家路』 03

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一方、震災の影響によって、先祖代々受け継いだ土地から離れることを余儀なくされた次郎の母と、前妻の子である兄。故郷であり、生活のすべてを注いできた場所を失うという不条理な現実に疲れ果て、希望を失ったままに生きつなぐ彼らの心身は限界を迎えつつあった。やがて再会を果たした家族は、過去の深い葛藤と震災による苦境を乗り越え、前向きに生きる決意をする。

「ドキュメンタリーでは描けない福島を描く」という監督の熱意が込められた本作。震災後の家族に焦点を当てながらも“被災地の物語”に終わることなく、兄弟の愛憎、母と息子の愛情、父と子の葛藤、そして夫婦の絆も描き出すストーリーが秀逸だ。

 

『家路』

3月1日(土)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー

監督|久保田直

脚本|青木研次

出演|松山ケンイチ、田中裕子、安藤サクラ、内野聖陽

配給|ビターズ・エンド

2014年/日本/118分

http://bitters.co.jp/ieji/

©2014『家路』製作委員会

           
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