谷尻 誠|第9回 展覧会『Relation』記念 谷尻 誠×青野賢一 対談

谷尻 誠|第9回 展覧会『Relation』記念 谷尻 誠×青野賢一 対談

Another Architecture

「自分の言葉で建築を伝えていこう」と決心するきっかけをつくったひと

谷尻 誠×青野賢一 対談(2)

「余白」にある美しさ。「余白」から生まれる関係性

青野 違和感があることって世の中にたくさんあるわけだけど、些細なことでもほったらかしにしておくとさまざまなことに対して無感覚になってしまうよね。反応が鈍くなっちゃうというか。そう感じることはよくある。いまは世の中が「親切丁寧」にできているからね。ついつい「考えなくても」で生きてしまうから。よくも悪くも親切だからこそ、それを気にするかしないかだと思う。

谷尻 その分、脳を使わなくなってきてますよね。建物を設計していても便利な家をつくろうとすると、決まってつまらない家になる。ところが機能がないものをつくると豊かな家になるんです。

青野 やっぱり。余白に美しさがあるからね。

谷尻 そうです、本当に。

青野 本の装丁やレイアウトもそうだけど、自分が感銘を受けたものって、余白の部分に配慮がなされている。気持ちも自然とそこに気がつくような。

谷尻 余白があることで本を読みながらも休める。だからこそ向き合えるし、リズムも生まれてきますからね。

青野 建築もリズムだよね。ひとが動く導線にしても、階段を登り降りするのも。つまり「そこしかとおりません」と行為を限定するのではなく、「ここもとおるし、あそこもとおる」というようなことを谷尻くんはつね日ごろから掘り下げているんだよね。

谷尻 そうですね。「そうなったほうがいいな」と思ってやってますね。

青野 そうなると施主とのせめぎ合いになるでしょ?

谷尻 なりますね。施主の立場からすると余計な場所をつくるというのは、自分が必要としているスペースを狭くするか、もしくは家を大きくするかのどちらにするかの選択肢なので。そこは理解していただくことが必要ですね。小さな家をつくるときに、少しでもリビングが大きいほうがいいと思って、あるスペースがあったとすると全部をリビングにしたくなります。だけど半分だけリビングにして余白をつくれば関係性が生まれるから、「広さ」は狭くても、「広がり」はもてるんですよね。といった具合に、言葉や頭で理解できても「何畳ですか?」と言われたり、具体的な数値であらわしてみると、こうした関係性がいきなり破綻する場合がありますね。

青野 よくよく考えてみると、たとえば20畳でリビングのスペースをつくったとしても、「居る場所」って決まってくるよね。「テレビが観られるところ」とか具体的なポイントなど。結果、半径何メートルには目がいくけど、遠くにあるものって関係なくなってしまう。それよりも住居の中で過ごす情景を外から眺められるようなゆとりがあるほうがいいなと思います。

谷尻 関係性があった方が絶対にいいですよね。もしも「広さ」しか存在しない世界だとしたら広さという概念は語れないはずで、「狭さ」をつくることで「広さ」を語れるようになる。それはどんなものにも適用できて、こうした関係性をつくることがとても大事。そこには余白が必要になってきます。

青野 全部黒く塗りつぶしてしまったら、そこに「白」というものが挟み込まれる余地がないようにね。白と黒といえば、震災以降、「白と黒どっちなんだ?」という世界がつづいているように感じていて。個人的には「いやいや、生きることってグレーなんじゃない?」と思っているんだけど。急進的な方々って「こっち」「あっち」の二元論でしか物事を言わない……そんな風潮に対して、僕は違和感がある。どんな分野にもグレーな部分が必要だし、濃いグレーか、薄いグレーかはわからないけど、そこに「本質らしきもの」が転がっているようには感じるだよね。

谷尻 音楽だって「ド」と「レ」のあいだに音があって音楽が成立しているわけで、「ドレミファソラシド」だけで音楽がつくられているわけでもないし。

青野 ピアノに黒鍵と白鍵があるようにね。音階の話でいうと、西洋音階以外で……たとえば沖縄、インドと独特の音階があるわけだけども、それはどこの基準に立ってモノを見ているかという視座によって変わる。インド人には普通だけど、西洋のひとにとっては変わって見える。その逆もしかり。どっちが正解というのではなく、共生できるもの、また混じり合うことで関係性が育まれるものだってあると思うし。

谷尻 そのとおりですよ。

ABOUT
TANIJIRI Makoto

建築家 Suppose design office 代表 1974年 広島生まれ 2000年 建築設計事務所Suppose design office 設立 住宅、商業空間、会場構成、ランドスケープ、プロダクト、アートの …

AONO Kenichi

セレクトショップBEAMSが手掛けるレーベルBEAMS RECORDSのディレクターであり、同ショップのバイヤー、そしてまたファッションの分野ではBEAMSのプレスを担当。 1980年代後半よりDJとしてのキャリアをスタ …