BOGLIOLI|ピエルイジ・ボリオリ インタビュー

BOGLIOLI|ピエルイジ・ボリオリ インタビュー

躍進を続けるボリオリのすべて

BOGLIOLI|ボリオリ

サルト発の急伸メゾン

ボリオリが描く未来図とは(1)

これまで見てきたボリオリの現在と過去。ここではこれから先の未来について、来日したボリオリ社正統の血筋を引くデザイナー、ジジことピエルイジ・ボリオリ氏にインタビューを敢行した。これほどまでに急拡大したボリオリの市場をどう捉えているのか、そしてボリオリはこの先、どこへむかうのか。そこには意外な未来図が描かれていた。

Text by IKEDA YasuyukiPhotos by YOSHIZAWA KentaPhotos cooperation by BOGLIOLI

時代を読み解くピエルイジの感性

ピエルイジ・ボリオリは、創業者の直系3代目にあたる。長男のマリオは経営を、末弟の彼はデザイナーを務めている。カシミヤに洗いを掛けるという大胆な発想から生まれた「Kジャケット」も、一昨年登場し一世を風靡した「ドーヴァー」も、今年大人気となっている「ワイト」も、すべて彼の作品である。来日していた彼にインタビューする機会を得た。

──いま主流となっている、製品染め加工がほどこされた薄くて軽い仕立てのジャケットは、どのような経緯で誕生したのでしょうか?

「80年代末から90年代にかけて、いわゆるクラシックスタイルにおけるフォーマル観が変わってきたように思います。ジャケットをデニムに合わせるようなダイナミックな着こなしも、年齢を問わずスピリットが若い人びとに支持される時代になりました。敏感に反応したのはカジュアルウェアのほうでした。当時、多くのメーカーやデザイナーがTシャツやセーター、パンツに製品染めをほどこし、着込んだ風合いの加工を手がけていました。時代の空気感だったのでしょう。しかしジャケットに製品染めをほどこしたものはひとつもなかった。そこでジャケットの専門メーカーだったボリオリが、最初に製品染めのジャケットを手がけたのです。それは染料や生地だけでなく、仕立てにもかかわるところが大きく、試行錯誤を重ねるうち、古いナポリ風のジャケットにたどりつきました。生地屋、染め屋、仕立屋、すべての協力があって、ボリオリのスタイルが生まれています」

学生時代は会計を学び、その後、いくつかのショップでファッションビジネスを体得すると、父親が経営するボリオリ社に入社。デザイナーとして頭角をあらわしたのは、90年代の「コート」ジャケットの誕生に携わったところにはじまる。

サルトの家系に生まれた頑固な職人デザイナーを想像していたのだが、この日の彼はTシャツにジャケットを羽織ったラフなスタイル。それを指摘すると「半分バカンス気分なので許してほしい」と笑いながら、エスプレッソを飲み干した。今回の来日は、アシスタントデザイナーのマルコ・レとともに、休暇を兼ねて日本の生地、ショップをリサーチすることが目的だ。メディアの取材は『OPENERS』一誌だけが許されている。

BOGLIOLI|ボリオリ 01

コレクションは、時代とともに変遷する

イタリアのファッション業界のみならず、世界中が時代の先を読むピエルイジ・ボリオリの動向に注目している。それは先の言葉にあらわれるように、決してつくり手主体の抽象的なコンセプトではなく、着る側の時代感を読み解く綿密なマーケティングに基づいているからである。インターナショナルにおけるボリオリのシェアは、イタリアについで日本が2番手。ドイツ、オランダ、アメリカ、スペインとつづく。

「日本人はコンフォートであることと、そして上手に着こなすことを知っていますね。そして、こだわりをもってモノを選ぶことができ、かつ物の良し悪しがわかるひとも多いと感じます。日本はボリオリの魅力を理解した、イタリア国外では最初の国です。やわらかいこのジャケットは、軽くて肩ひじの張らないスタイルに似合います。それが日本人の好みに近かったのだと思われます。

世界的に見ても、現代の若いひとたちは正統派の重厚なクラッシックスタイルを知らずに成長しています。そんな彼らにとってのフォーマルは、たとえジャケットを着ていても、旧来のクラシックとはまったくちがうものなのです。製品染めやアンコンストラクションのジャケットが、あたらしい世代のフォーマルにふさわしいジャケットであり、新時代の”フォーマル”を生み出したことは明らかでしょう」

クラシックの視点から的確に市場を読んでいる。クラシックメゾンでありながら、コレクションはデザイナーズモードのように華麗に変化しつづける。ピエルイジはデザイナーであると同時に稀代のMD(マーチャンダイザー)でもある。

──来シーズンのコレクションはどのようなものになるのですか?

「来シーズン、ワイトはコレクションに名を残しません。ワイトがお好きだったひとには、つぎのデザインを受け入れていただけると確信するモデルを提案しています。ドーヴァーは、もう少し手の込んだものになります。着心地やジャケットとしてのルックスを追及した結果、構築性をくわえたドーヴァー2Gというモデルに代わり、これがワイトを統合します。スタイルとしての世界観に変わりありませんが、より柔らかで、少し構築的になるのです。肩には小さなパッドやユキワタも入ります。素材はウールとコットンを用意して、2ボタンのジャケットもコレクションにくわわります」