連載・きき酒師 チズコ│第5回 石川県 有機農場「金沢大地」ニューヨークツアー
LOUNGE / EAT
2015年4月28日

連載・きき酒師 チズコ│第5回 石川県 有機農場「金沢大地」ニューヨークツアー

いま、農家がアツい! 地方がアツい!

第5回 石川県 有機農場 「金沢大地」 ニューヨークツアー

ニューヨークからきき酒師チズコが送る「Sake And The City」第5回目は、お酒の醸造元さんだけじゃなく、日本の農家をニューヨークでプロデュースしたお話です。

文=チズコ

普段みなさんが食べるお米、日本酒をつくるためのお米

いつも日本酒の醸造元の方たちや、レストラン関係者とお仕事することがつねではあるのですが、ひょんなことから石川県の農家とコラボレートするとてもすてきな機会をいただきました。

日本酒がお米からできる、というのは、日本酒にとくに興味がない方でもだいたい知ってると思います。では、普段みなさんが食べるお米と、日本酒をつくるためのお米がじつはまったくちがうものだって知ってました? 普段食卓に出てくるお米は、ビタミンや脂肪、栄養化が高く、半透明で、炊くとふっくらとみずみずしいものですが、お酒をつくるお米の「酒米」(酒造好適米)というのは食べておいしい旨味成分は食用米よりも少なくて大粒。そして内側にある「心白」と呼ばれる白い部分が大きなものがより良いとされ、雑味のないきれいな味わいのお酒を生み出すといわれています。

そこに、ちょっと待った! といわんばかりに、有機農家歴50年以上、石川県金沢大地の井村滉(いむらあきら)さん68歳が丹誠込めてつくった有機食用米のお米「みつひかり」を使用して醸したお酒、その名もずばり「滉(あきら)」を紹介されました。

新川智慈子|チズコ|きき酒師 02

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「旨味」という5つ目の味覚をもっている日本人

正直、味わいはいわゆる「スムーズで飲みやすいタイプ」とは言い難いもの。だけど、なんだか妙にあったかい。これが有機米のチカラなのか? とにかくお米本来の味わいがしっかりしている。これは、絶対に燗だな……とにらみ、冷やと常温でのテイスティングのあと、すぐに燗でのテイスティングに。いやー、これには正直「ぶはっ!ウマい!!」と、お友だちで酒サムライの称号をもつティモシー・サリバン氏と大盛り上がり! テイスティングが、気づいたら酒盛りに……。

ということで、ニューヨークのひとたちに日本の農家魂を伝えるため、ニューヨークを代表する老舗ホテル「THE KITANO」内にある懐石レストラン「白梅」にて、金沢大地の有機大豆でつくったお味噌、お醤油、有機小麦でつくったうどん、有機大麦の麦茶などの素材を活かし、白梅の佐藤料理長にアレンジしてもらい、盛大なパーティーを開催いたしました。

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東京には全国各地の地方出身者がたくさんいるけれど、ニューヨークは世界中の地方出身者の街。この街に住んでいると、自分のルーツや、日本人でいることの意味、世界とのかかわりあい方、いろいろなことを日常のなかで考えさせられます。よく「お国柄」って言いますが、本当にいろいろな人種のパーソナリティが背中合わせ・隣り合わせで感じることができます。私が日本人としてこの街で生きて思ったのは、日本人ってやっぱり真面目な職人気質の方が多いこと、そしてほかの国とケンカしないで生きていくのが上手ということ。

やはり、甘酸辛苦の4つの基本味覚のほかに、「旨味」という5つ目の味覚をもっている日本人は、4つの味のバランスを取るのがうまいのかな? なんて。日本酒や日本の食材でいうと、お米でできている日本酒は、じつは世界中の食事とマッチングしてしまうし、お醤油やお味噌をはじめ、こんぶや椎茸の出汁の旨味、ゆずやわさびのアクセントなど、いまや日本の食文化の魅力に気づいた世界のシェフたちはどんどん取り入れています。

そして、気づかなければならない、忘れてならないのは、この当たり前に口にしている自慢するべき食材の陰には、毎日朝から晩まで、お天道さまや害虫たちと日々闘っている農家の存在があること。金沢大地のみなさんから、忘れてはならない「食への感謝の気持ち」をあらためて学んだ夜でした!

次回のSAKE AND THE CITYは、きき酒師チズコ、ハワイできき酒をする! です。お楽しみに!

金沢大地
http://www.k-daichi.com/

The KITANO
http://kitano.com/

SAKE DISCOVERIES
http://www.sakediscoveries.com/

           
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