カキツバタの「め」 第一回
Design
2015年5月15日

カキツバタの「め」 第一回

第一回「Gelman's Master pieces 山中漆と九谷焼」

東京・中目黒にあるインテリアショップ「燕子花」による新連載【カキツバタの「め」】。
今回は燕子花・別館にて開催中の「Gelman's Master pieces 山中漆と九谷焼」を紹介します。
世界的なアーティスト、アレクサンダー・ゲルマンと日本の伝統工芸が織りなす、珠玉のコラボレーションとは?

文=白水由紀子(燕子花)

アレクサンダー・ゲルマン氏は、数かずのクリエイティブ活動で知られる世界的なアーティストです。近年は日本のものづくり、伝統工芸にも着目し、『KIE』(家庭画報インターナショナル)にてクリエイティブディレクターを務め、日本の工芸がもつ技を極めたモノづくりにも強い関心を寄せています。

ある日、ゲルマン氏が石川県を訪ねたことが今回のプロジェクトの発端でした。石川県山中漆器職人たちとの邂逅。そしてお互いの妥協なき創造性に惹かれ、モノづくりがはじまります。
テーマは知性の代名詞とも言われる「チェスセット」。さらに同じく伝統工芸である九谷焼を代表するふたりの絵師もくわわり、宝石のように美しいチェスセットが完成しました。

ゲルマン氏は山中漆器職人たちを「同志」と呼び、山中漆器職人たちはゲルマン氏のデザインについて「彼のデザインは、見事に山中漆器の技法にかなっていることに気づいたとき、心底、参った、と思った」と述べています。完成にいたるまでさまざまなストーリーをもち、国境を越えた妥協ないクリエイティビティは、輝きにあふれています。

目に美しく、手になじむ触り心地を日本の「用の美=漆」が、世界中の人びとが興じる「チェス=用の美」に昇華されたことは、まさに「過去と未来の橋渡し」(ゲルマン氏)につながるといえるでしょう。

Gelman’s Masterpieces
山中漆と九谷焼

会期|2009年1月14日(水)~2月1日(日)
場所|燕子花別館
東京都目黒区青葉台 2-16-7
開館|13:00~19:00
閉館|月・火曜
Tel. 03-3770-3401
www.kakitsubataweb.jp

九谷焼の盛金技法「黒粒」によるチェス駒

粒の大きさ、色、間隔において失敗は許されない、精緻な手作業の賜物

黒漆、朱漆のチェスセット

駒はミズメという木材。その質は細かく、ろくろで挽きやすい。
漆においても直線を美しく表現できるよう、デザインをかえずに克服するために苦労した」(山中漆器・職人)

黒漆と金箔の卓

フラットでなめらかな卓は、漆を4回重ね塗りしてある。
「簡略化した技法ではなく、手間が掛かっても仕上がりにこだわった」(山中漆器・職人)

金箔と拭き漆のチェス駒

拭き漆の駒のみ、木目を美しく見せるため、ケヤキ材を使用している
「漆の新しいイメージが生まれた気がする」(山中漆器・職人)

黒漆、朱漆のチェスセット

山中漆器は、ろくろ挽きものの産地として知られている。
「山中の挽物ろくろの技術の高さを見せることができて良かった」(山中漆器・職人)

金箔と拭き漆のチェス駒

駒のデザインはゲルマン氏によるもの。エッジのシャープさを出すのが技術的に困難であった

サンプルの駒

妥協ないコラボレーションのサンプルづくりは数回に渡った

サンプルの駒

(左から)九谷焼、木田立による九谷焼の素地、金箔

Tシャツの上に置かれた駒

Tシャツもまたゲルマン氏のチェス卓と駒の図面より引用したデザインによるもの

九谷焼・福島武山による赤絵細描の上絵
精緻な幾何学模様に目を奪われる。すべて手作業というその技術に改めて驚く

朱漆と黒漆のチェスセット

「漆の最大の特徴は触感」(山中漆器職人)というように、思わず手を伸ばしたくなる

九谷焼・盛金技法「白粒」

仲田錦玉による「白粒」。文字通り一粒一粒で描かれている

九谷焼・盛金技法「白粒」

まさに「触感」。今回のキーワードが思い浮かぶ。

駒の裏に記されたクレジット

STUDIO GLMNの文字。駒の種類によってクレジットも異なる

駒の裏に記されたクレジット
「ゲルマン 錦玉」と筆で描かれている

駒の裏に記されたクレジット

九谷焼上絵師の名工・福島武山とゲルマン氏のクレジット。

漆塗りの自転車

今回特別に展示されたなんとも贅たくな自転車。

漆塗りの自転車

パーツは世界中のトップブランドのものを集めた。機能としても申し分ない。

サンプルの駒

「シャープでシンプル、格好いい」(山中漆器・職人)。凛としたたたずまいに惹かれる。

           
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