Vol.3 岡田 栄造 インタビュー
DESIGN / FEATURES
2015年4月8日

Vol.3 岡田 栄造 インタビュー

Vol.3 岡田 栄造インタビュー

デザインという視点から、建築とアートをつなぐ、現代建築のキーパーソン

建築、デザイン、アートに関する最新情報を毎日更新するバイリンガルのウェブサイトdezain.netを主宰。またリボンを使ったプロダクト、リボンプロジェクトをディレクションする岡田栄造氏。
昨年、自ら出資しディレクターをつとめる『DEROLL Commissions Series 1:box』では若手建築家たちがデザインを手がけたプロダクトを発表し話題になった。大学でデザインプロセスを教える准教授でありながら、現在の建築、アート、デザインをつなぐキーパーソンである岡田栄造氏にお話をうかがいました。

インタビュアー、まとめ=加藤孝司

──現在、大学でされていることを教えてください

もともと私の博士論文は日本の椅子の研究なんです。なぜそれをしたかといえば、ひと昔前まで日本人は椅子を使っていなかったじゃないですか。それで現在では当たりまえに椅子に座って暮らしている。それってすごいことだなって思ったんですよ。ライフスタイルがここまで変わってしまうということ。
それはどうやって変わったのか?デザインが変わるというか、住み方がまったく変わってしまうということがどうして起こるのか?それとデザイナーの関係はどういうものなのだろうと、それに興味があって始めた研究です。
その前に、ジャーナリストみたいなことをしていた時期があってフラストレーションが溜まっていたんです。それは何に対してかといえば、世の中くだらないデザインが多すぎるとか、デザインに興味がない人が多すぎることに対して。

明らかに若さゆえの傲慢な感情なんですけど(笑)、ともかく、社会に訴えていってデザインを変えていかなければいけないだろうと思っていた時期があって、それで社会的プロセスだとか、デザインが社会の中にどう入っていくかみたいなことを研究しようと思ったんです。

リボン=プロダクト

──リボンプロジェクトが生まれた経緯を教えてください

リボンプロジェクトの製造を手がけているのが井上リボン工業といって家内の実家なんです。それで私がデザインの仕事をしていた関係で、リボンを使って何かができないかとたびたび相談を受けていました。最初はリボンだし、何もできないんじゃないかって、ピンときていなかったんです。である時にリボンがプロダクトになったらおもしろいんじゃないかと思いました。それで若いデザイナー5人にデザインを頼みました。
ロンドンで展示会に出したら結構評判が良かったんです。それで日本でも展開するようになりました。

──リボンプロジェクトには以前から若い建築家の方も何名か参加されていて、昨年11月に発表された『DEROLL Commissions Series 1:box』は、そんなリボンプロジェクトが発展したものなのかなとも思いましたが

そうですね。もともとデロールはリボンプロジェクトの別ブランドみたいな感じでつくったんです。たとえば山口誠さんにリボンプロジェクトとしてデザインしていただいたスプーンのように、リボンを使わないプロダクトも出てきていたので、いつまでもプロジェクトっていうのもなぁと思ってデロールを考えたんです。
昨年のデロールのコミッションズは定番ものではなく、限定もののラインをデロールでやろうということで企画しました。ですので基本的にはおおもとにリボンプロジェクトがありますね。

──そういった意味ではコミッションズ1は限定品ということでしたが、デロールとしてのプロダクトもあり得るということですか?

限定品なんですけれども、それをもとにしたプロダクトもあり得るかなとも思っています。それとは別に新しいプロジェクトもやろうと思っています。

──コミッションズもリボンプロジェクトと同様、井上リボン工業が出資しているのですか?

コミッションズのほうはすべて私がやっています。

DEROLL Commissions とは?

──コミッションズの5人の建築家はどのように選ばれたのですか?

私の中では間違いのない方々でしたので、選んだというより、彼らと一緒に何かをやりたくてはじめた企画、と言ったほうが正確かもしれません。もともと中山英之さんとは友人で彼から建築家の方を紹介してもらいました。まず山口誠さんを紹介してもらってリボンプロジェクトをやってもらったりとか。
永山祐子さん以外の皆さんは東京芸大出身なんですけれども、ほとんど同世代で皆さん学生時代からの知り合いなんですよね。あの世代の芸大はものすごい才能が集まっています。それも不思議で前々から気になっていました。しかも皆さんいわゆる建築家がやる堅いデザインではないデザインが出来るから、何かデザインを頼んでみたいなと思っていたんです。
それで建築家によるプロダクトの展示はいいかなというアイデアがあって、それでこの5人の方にお願いすることにしました。

──先ほどもお話にありましたがその内4人の方が芸大ご出身で、それ以外の唯一女性の永山さんも昭和女子大学ご出身ということで、皆さんいわゆる工科系ではないということも、いわゆる建築家がつくるデザインではないというコミッションズのコンセプトに影響がありましたか

それはバックグラウンドとしてあるのかもしれないですね。だからあの5人なのかもしれませんね。みんなアートにすごく興味がある人たちですし。

──昨年辺りから世界ではデザインとアートなんて言われていましたが、建築もアートに近いものなのかなとも思っています

私もまったくそう思います。一品ものという意味ではデザインより建築のほうがアートに近いのかもしれません。

──建築もデザインも人間の生活をより豊かにするという意味では同じだと思っていて、問題解決の方法という点でも同じだと思っています。その点はどう思われますか?

絶対そうであってほしいと思いますね。
自然に接することが出来るんだけれども、建築としてのオリジナリティもある。
今、日本の建築はもの凄く面白いですね。

──コミッションズ1は「箱」がテーマでしたが、箱とひとくちに言っても抽象的にも具体的にもとれますね。そんなテーマのかかげかたもアートっぽいと思います。デロールのプロジェクトから建築とデザイン、アートがリンクするものが生まれるような予感がしますね。

彼らがいいなと思うのは、いわゆる「建築家のデザイン」ってたとえば自分がつくった建築のなかに何を置くかとか、置きたい家具をデザインするというように、どことなく建築とデザインのあいだにヒエラルキーを感じるんですよね。あくまで建築がトータリティを担っていて、家具は単に備品としてデザインしているように感じたんです。もしくは建築家がなかば趣味的にプロダクトをやっていて、必ずしもそれはそれによって自分が社会に何かを訴えるようなものとしてはやってなかったと思うのです。

しかし彼らはそこのところに差がないんですよ。
たとえば建築をつくるのもひとつの「箱」をつくるのもクリエーションとして同じ重さを感じさせてくれるからそれがいいなぁと思います。
だからひとつひとつの箱を「小さい建築」って言われたくないんです。小さい建築ではなく「建築」と言うべきだと。

──建築というと周辺にあるものとの関係を持ちながらスケール感の中でつくっていくものだと思っています。それはプロセスの問題だから大きい小さいはあまり関係がないと思います。

たとえば石上さんの作品「リトルガーデン」にしてもひとつの建築のように見えました。
皆すごいこと考えてくるなと驚きますけど、でもそれぞれ自分のやりたいことがはっきりしてるんだとあらためて思いました。
予想はしていたんだけど思ってもいないものがでてきたなと。

──期間はどのくらいで仕上げたんですか?

当初デザイン2ヶ月、制作1ヶ月の予定でしたが、制作に3ヶ月くらいかかったものもありました。

──それはいい意味で予想を超えたものが出てきてしまったからですか?

はい。一番ギリギリだったのが石上さんだったのですが、とにかく小さな入れ物ひとつずつ形が違うし、それは全部どうでもいい形ではなく決めているわけですね。370個つくるのにそれの数倍スケッチを書いて、数倍模型をつくっている。その上で絞り込んでいるんですよ。だからそれはもう当然時間がかかりますよね。

──中山英之さんの作品はどうですか?

中山さんはやることが最初からはっきりしていました。時間カメラのデモ画像は中山さんが建築でやろうとしていることの一端をとても明快に見せてくれているように思います。背景は真っ白で、人が現れることではじめてそこに空間が出来る。空間のかたちをさわるのではなくて、時間をコントロールすることで空間の可能性を展開させていく。あの作品もやはり建築です。

建築家、5人それぞれの作法

デロールでは展覧会にあわせてカタログもつくりました。1日スタジオを借りて撮影したのですが皆それぞれスタイルがあるからおもしろかったですよ。永山さんは小道具を用意してびっちりコンセプトを決めて、これで、って感じで撮影しています。作品には彼女の建築と同様、見えるんだけど手に届かない場所をつくるべきだというコンセプトが反映されています。そうやって誰のものでもない所有出来ない場所みたいなものがあることが豊かだと永山さんは言っています。

山口誠さんは、自作の住宅の中であらかじめ撮影しておいてくれた分とスタジオで撮影した分を掲載しています。山口さんはリボンプロジェクトからお付き合いさせていただいているのですが、ものの完成度が上がったときにどういうことが可能か、ということに対してとても強い意識を持っている方だと思います。「DRAWER, 2007」はまさにそれが現れた作品ですよね。最初に話を聞いたとき、私には「引き出しが積み重なったもの」ぐらいしかイメージできなくて。でも完成したものは全く引き出しが見えない。参りました。

中村竜治さんは撮影中、最後まで悩み続けていたのが印象的でした。彼の「虫かご」は、0.3mmという極細の線を空間上に丁寧に引いた作品です。線の細さと数にこだわることで見たことのない抽象度を持ったプロダクトが出来上がった。そこが中村さんのインテリアデザインにも共通するところかな、と思います。見る方向によって線がくっきりと見えたり、全体が靄のようにぼやけてしまったりするのも面白いし、CGのようなグリッドの中に生きた蝶々がいる、という対比もドキッとします。

──しいて共通するものを挙げるとしたら、植物や蝶など生物のイメージの扱い方に近い考え方を感じました

石上さんは建築をつくるのではなく風景をつくりたいって言っています。リトルガーデンは、遠くから見ても視点を近づけても、そこにはいつも同じ細かさがあるというか、極大も極小も同じ解像度を持っている世界を感じさせる作品です。その意味で自然に近いと言える。作品に花を使っているから、ということではないですよね。

──中山さんもそうですが植物を単にかわいいとか美しいとかではない、異なる観点から捉えているところは共通しているような気がしますね

中山さんが描く自然はどれも、人の気配を感じさせます。「時間カメラ」のムービーでも、実際には木が立っているだけなのに、時間がずれることでその周りを自転車でまわる人が出てくる。人と自然の関わり方をデザインしたいという気持ちがあるのかもしれませんね。

──今年のデロールはどのようになっていますか

今年はプロダクトデザイナーでいきます。テーマは「日本史」です。デザイナーはリボンプロジェクトでもお願いしているキヤノンのインハウスデザイナーでもある清水久和さんです。以前から私がもの凄く尊敬しているデザイナーさんです。楽しみにしていてください。

岡田栄造
京都工芸繊維大学准教授
千葉大学大学院博士後期課程修了(学術博士)
大学でデザインの社会的プロセスについて研究するかたわら、
リボンの素材としての可能性を追求する『リボンプロジェクト』のディレクションを手がける。毎日更新のデザインニュース dezain.net 主宰

           
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