メルセデス・ベンツS 63 AMGに試乗|Mercedes-Benz
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2015年1月6日

メルセデス・ベンツS 63 AMGに試乗|Mercedes-Benz

Mercedes-Benz S 63 AMG|メルセデス・ベンツ S 63 AMG

ロードキングとしての説得力

メルセデス・ベンツS 63 AMGに試乗

W222型となったあたらしい「Sクラス」に、より高性能で高品質を供する「S63 AMG」が登場。ハイエンドサルーンとは思えぬ卓越したパワーとともに、限りなく標準車に近いユーティリティやフィーリングを持つAMG。その魅力に、渡辺敏史氏が迫る。

Text by WATANABE Toshifumi

日本のユーザーとAMGとの信頼関係

日本において、メルセデスがどれほどコンフィデンシャルなブランドであるかをもっとも端的に示す数字は、Sクラスの販売台数だろう。モデルチェンジ直後の通年では1万台に迫る……といえば、同級車で比肩するものはレクサス「LS」以外にはない。

しかもSクラスの販売内訳の5-10パーセント程度は2,000万円級のAMGモデルが占めると聞けば、両車間の客単価の隔たりをわかってもらえるだろうか。ちなみにSクラス AMGの販売台数は、日本がアメリカ、ドイツに次ぐ3位の位置を占めている。日本のエスタブリッシュメントにとって、Sクラスがどれほど鉄板の存在であるかは、より高性能で高品質を供するAMGモデルの数字が鮮烈に物語っているといってもいいのかもしれない。

W222型となったあたらしいSクラスは、装備や内容を吟味し、レクサス LSの牙城をうかがうべく、より戦略的なラインナップと価格設定を整えてきた。対してAMGは、装備や内容が充実したとはいえ、孤高ともいえる価格設定を敷いている。

もはや値札が示すライバルはベントレー「フライングスパー」ということになるだろうか。この芸幅の広さに、日本のユーザーとAMGとの信頼関係をみてとるのは僕だけではないだろう。一番の問題は、果たしてあたらしいSクラス AMGがそれにこたえるものになっているかということだ。

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ロードキングとしての説得力

メルセデス・ベンツS 63 AMGに試乗 (2)

路面のサーフェスにあわせ乗り味を最適化

日本におけるSクラス AMGのラインナップは、ボディサイズはロングのみ。ドライブトレーンは従来からのFRにくわえて、このモデルから用意される4マチックの2グレード展開になる。

トランスミッションケースに内包される縦置きレイアウト用四駆システムの駆動配分は、旋回性を重視した33:67の固定式。複雑な制御システムを持たないこともあって小型軽量にしつらえられており、四駆化による重量増はFR比で70kgに収まる。

また、FRと4マチックではサスペンションの仕様も異なっており、前者にはカメラを使って路面のサーフェスをスキャン、通過直前に減衰特性を最適化してフラットなライドフィールを実現するマジックボディコントロールを付加した「AMGスポーツサスペンション」を標準装備。

対して後者は、メルセデスの十八番であるアクティブボディコントロールをベースに、エアスプリングとダンパーのレートを実入力に応じて瞬時に制御する「AMGライドコントロールサスペンション」が設定される。

5.5リッター V8直噴ツインターボのM157型エンジンは、先代S 63 AMGにも搭載されたそれのリファイン版となるが、最高出力は先代比41ps増の585ps、最大トルクは100Nm増の900Nmと、ベースモデルのフルモデルチェンジを踏まえて一気に増強された。

くわえてトランスミッションも、ベーシックなトルクコンバーター式の7Gトロニックから、一層のダイレクト感を求めて、湿式多板クラッチをロボタイズでリンケージする7段MCTスポーツシフトへと置き換えられている。その動力性能の一端を示す0-100km/h加速は、FRモデルで4.4秒、4マチックモデルで4秒フラットと、車格を考えると破格といっても過言ではない。

ちなみに最高速は通例にのっとって250km/hで規制されるが、オプションのパフォーマンスパッケージを装着すればリミッターは除去される。その状態では恐らく300km/hを伺うことは、間違いないだろう。

いっぽうで、動力性能にもまちがいなく作用している、先代比で100kgに達する軽量化のメリットは、燃費にも現れている。EU基準で10.1リッター/100kmという数値は、ライバルにも充分なアドバンテージを築くものだ。

Mercedes-Benz S 63 AMG|メルセデス・ベンツ S 63 AMG

ロードキングとしての説得力

メルセデス・ベンツS 63 AMGに試乗 (3)

モードのセレクトでアグレッシブに変貌

ご多分に漏れず、S 63 AMGにはスロットルマップや変速マネジメント、操舵力などを切り換えるモードセレクトが設けられているが、標準モードで扱う限り、その走りは限りなく基準車のそれに近い。アクセルコントロールに特段気遣わなくとも不用意なレスポンスで車体が煽られることもなく、ギアも豊かなトルクを活かして低回転域を好んで摘んでいく。

乗り心地にかんしてもむしろランフラットタイヤを履く基準車よりまろやかなのではないかという場面もあるなど、秘めたる火力をおもえばその反応はすこぶる穏やかだ。

仮にショーファードリブンに用いたとしても、ゲストはそれがAMGであることにまったく気づかないだろう。が、モードをスポーツの側へと切り換えた際のS 63 AMGは、そのサウンドからからして強烈なコントラストをみせる。パワーのツキや変速のレスポンス、操舵応答性といったドライビングファクターのあらかたがギュッと引き締められての走りは、乗っているブツが全長5,250mmにもなるハイエンドサルーンとは思えない。

とはいえ、そのアグレッシブな変貌の中でもサスペンションの反応は綺麗に定常を延長したところにあるのがAMGらしいところだろう。微細な入力をサラサラと流しながら必要なインフォメーションをドライバーにキッチリ伝え、大きな入力では底知れぬ懐深さをもってボディを徹頭徹尾フラットに保ちきる。

AMGモデルの特筆点を敢えてひとつに絞りきるなら、劇的な高性能を限りなく標準車に近いユーティリティやフィーリングとともに供することにあると思うが、その達成感はやはりハイエンドモデルによって鮮明に示される。世界の誰もが認める「ロードキング」としての説得力を、あたらしいS 63 AMGは再び更新したといえるだろう。

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Mercedes-Benz S 63 AMG long|メルセデス・ベンツ S 63 AMG ロング
ボディサイズ|全長 5,295 × 全幅 1,915 × 全高 1,500 mm
ホイールベース|3,165 mm
トレッド 前/後|1,630 / 1,640mm
重量|2,180 kg
エンジン|5,461 cc V型8気筒 直噴DOHC ツインターボチャージャー付
最高出力| 430 kW(585 ps)/ 5,500 rpm
最大トルク|900 Nm(91.8 kgm)/ 2,250-3,750 rpm
トランスミッション|7段オートマチック
駆動方式|FR
タイヤ 前/後|255/45R19 / 285/40R19
0-100km/h加速|4.4 秒(本国値)
燃費(JC08モード)|9 km/ℓ
トランク容量(VDA値)|480 リットル
価格|2,406 万 8,000 円(8%税込み)

Mercedes-Benz S 63 AMG 4MATIC long|メルセデス・ベンツ S 63 AMG 4マチック ロング
ボディサイズ|全長 5,295 × 全幅 1,915 × 全高 1,500 mm
ホイールベース|3,165 mm
トレッド 前/後|1,645 / 1,640mm
重量|2,190 kg
エンジン|5,461 cc V型8気筒 直噴DOHC ツインターボチャージャー付
最高出力| 430 kW(585 ps)/ 5,500 rpm
最大トルク|900 Nm(91.8 kgm)/ 2,250-3,750 rpm
トランスミッション|7段オートマチック
駆動方式|FR
タイヤ 前/後|255/45R19 / 285/40R19
0-100km/h加速|4.0 秒(本国値)
燃費(JC08モード)|8.9 km/ℓ
トランク容量(VDA値)|480 リットル
価格|2,406 万 8,000 円(8%税込み)

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