さる山|食欲と所有欲を刺激する展示 「15と8展」開催

さる山|食欲と所有欲を刺激する展示 「15と8展」開催

些細なこと

さる山

カトラリーを使う魅力を五感で堪能する

食欲と所有欲を刺激する展示 「15と8展」開催

 

井山三希子、内田鋼一、岡田直人、新宮州三、辻野剛、濱中史朗、吉田直嗣、竹俣勇壱――カトラリーシリーズ「ryo」が15種まで展開することとなりました。お披露目に際し、それぞれのカトラリーに合わせて上記8名の作家の方々に器などを作っていただきました。食欲と所有欲が刺激される展示です。ぜひお出かけください。

Text by YAMAMOTO Chinatsu Photographs by MINAMOTO Tadayuki

「カトラリーの快楽」

ひとが一貫してもちつづける欲求の最たるものは食べることではないか。日々ほかの生命をいただくことでそれを自らの一部とし、私たちは保たれている。食べなくては生きられないこのどうしようもない弱さを、楽しむことで強さに変えようとしてきた。知恵を総動員し工夫を凝らし、世界中に幾千の料理を生み出した。そして楽しむことは料理そのものの探求にとどまらず、食卓における道具にまで広く及ぶことになる。何を食べるかだけでは料理の味は完成しない。どう食べるかもまた重要である。使う道具は料理の味を大きく左右する。手に持ち口へ運ぶ道具と器を日本と西洋とで比較すると、関係性が対角線上に浮かび上がる。

日本の箸は一度の食事で大抵おなじものを使うが、代わりに形や大きさ、素材もさまざまな器をいくつもならべることが珍しくない。もっとも適した料理と器が組み合わされる。これに対応するかのように、西洋の器は多少の形や大きさのちがいはあれど磁器の皿が中心となり、ボウルなどをくわえてもごく限られるが、カトラリーの種類は幅広く豊富である。ナイフやフォーク、スプーンが料理によって選ばれ組み合わされ、用途を細かくあたえられている。日本の箸と西洋の器はまったくちがう役割をもちながら、万能という点で一致している。万能のよさを実感しながら、しかしひとは使い分ける楽しみを忘れはしない。器と築いた親しい関係をあらためてカトラリーともはじめてみたい。

たとえば、焼かれた肉をフォークで刺すとき、こんがりとした香ばしさをその表面のかたさによって想像する。フィッシュナイフで魚をほぐすとき、ふわりとやわらかな食感を先取りしている。スープにポタージュスプーンをゆっくり沈め、すくいあげた複雑な香りにどんな味かと気がはやる。バターナイフでバターを切り分ければその厚みでミルクの濃厚さをひとあし先に味わい、バタースプレッダーをパンの上に滑らせればバターのなめらかさにとろけそうになる。ケーキスプーンでキャラメルの薄い膜をそっと壊したなら、パリッと聞こえる音にほろ苦さと甘さを交互に連想する。

料理を口にふくみおいしさがやってくるその前に、テーブルから口までのつかの間に、カトラリーを実際に使うことでしか味わい尽くせない魅力を五感で堪能する。視覚的なうつくしさにはじまり使うこと自体を楽しむとき、そこにはおいしい予感が満ちてきて期待が呼びよせられ、最後は舌で感じるおいしさがきっと増幅している。ひとが宿命的に抱えることになった欲求と、それを精一杯楽しむことを選んだ能動的な振る舞い。その両方こそがカトラリーの源である。おいしく食べることの快楽へと私たちを導き、使うこと自体にもまた快楽が潜んでいることを、カトラリーは教えてくれる。

「15と8展」
会期|2013年10月19日(土)~27日(日)
営業時間|13:00~18:00 会期中無休
『さる山』
東京都港区元麻布3-12-46和光マンション101
Tel. 03-3401-5935
http://guillemets.net/
http://www.facebook.com/guillemets.layout.studio.saruyama

https://twitter.com/conoide

ABOUT
SARUYAMA Osamu

1966年生まれ。デザイナー(ギュメレイアウトスタジオ)元麻布にて、古陶磁を含むテーブルウェア等を扱う「さる山」(電話03-3401-5935)を主宰。 演劇、映像及び展覧会のための作曲・演奏活動も。2001年よりシアタ …