フォルクスワーゲン グループを体感する一夜|Volkswagen Group
CAR / MOTOR SHOW
2015年4月6日

フォルクスワーゲン グループを体感する一夜|Volkswagen Group

Volkswagen Group Night|フォルクスワーゲン グループ ナイト
フランクフルト前夜祭

フォルクスワーゲン グループを体感する一夜

国際的なモーターショーの開幕前夜に、フォルクスワーゲン グループの全ブランドを一同に会して催される「フォルクスワーゲン グループナイト」が9月9日、フランクフルト西部の郊外に位置するフラポート・アリーナという室内競技場を舞台に催された。およそ15年前にバスケットボール用の競技場としてオープンしたこの施設は5,000名の観客を収容できるが、当日は数多くの立ち見を含めて多数の自動車メディアが集結し、世界的な影響力を持つフォルクスワーゲンへの関心が高いことをあらためて裏付けた。

Text by OTANI TatsuyaPhotographs by OTANI Tatsuya & Volkswagen AG

“Electric”ではじまった

イベントのオープニングアクトを務めたのは、今年7月に「Electric」というタイトルのCDをリリースしたばかりのペットショップ・ボーイズ。この点をみても、現在のフォルクスワーゲンがいかに「自動車の電動化」を重要なテーマとして位置づけているかがわかる。

各ブランドの“目玉展示品”を順に紹介するコーナーでは、グループ内のセアト「エステートツアラー」、ブガッティ「ヴェイロン 16.4 グランドスポーツ ヴィテス ジャン ブガッティ エディション」、フォルクスワーゲン コマーシャルビークル「e-load up!」、シュコダ「ラピッド スペースバック」などが手短に紹介されたあと、“本丸”のフォルクスワーゲンはコンセプトカーの「ゴルフ スポーツバン」を公開した。

Bugatti Veyron 16.4 Gran Sport Vitesse Jean Bugatti edition|ブガッティ ヴェイロン 16.4 グランスポーツ ジャン ブガッティ エディション

Bugatti Veyron 16.4 Gran Sport Vitesse "Jean Bugatti" edition|ブガッティ ヴェイロン 16.4 グランスポーツ ジャン ブガッティ エディション

Volkswagen e-load up!|フォルクスワーゲン eロード アップ!

Volkswagen e-load up!|フォルクスワーゲン eロード アップ!

ゴルフ スポーツバンは「ゴルフ プラス」の後継モデルにあたるもので、フォルクスワーゲンでは「コンパクトカーとミニバンの両方の価値を実現する」と説明している。気になるディメンジョンを現行型ゴルフと比較すると、全高は126mm高い1,578mm、全長は83mm長い4,338mmで、1,807mmの全幅はわずかに8mmだけ広いとされる。

デザインはゴルフ7の流れを汲むものだが、ゴルフ プラス同様、背が高いことは一目瞭然で、それが居住性の高さを視覚的に表現する役割を果たしている。インテリアではダッシュボードのデザインが見直され、水平に長く伸びたフェイシアを組みあわせることで室内の広さを強調する効果をもたらしている。コンセプトカーとはいえ、ほぼこのままの形で市販されるのは確実で、日本でも発売されることが期待される。

Volkswagen Group Night|フォルクスワーゲン グループ ナイト
フランクフルト前夜祭

フォルクスワーゲン グループを体感する一夜 (2)

今日、生産するクルマのEモビリティ化のために

ここでブランドごとの紹介は一休みとなり、グループ全体の今後の方向性をさししめすコーナーとなる。

個々のブランドに割り当てた時間をギリギリまで削ってイベント全体をコンパクトにしようとする(なにしろ合計9ブランドが登場するため、ひとつひとつのコーナーを短くしてもイベント全体としては2時間近くになる)傾向が今回はいままで以上に明確だったが、そうしたなかで独立した時間をもうけて紹介されたのは、グループのEモビリティにたいする取り組みだった。

Volkswagen e-Golf & Volkswagen e-up!|フォルクスワーゲン e-ゴルフ & フォルクスワーゲン e-up!

Volkswagen e-Golf & Volkswagen e-up!|フォルクスワーゲン e-ゴルフ & フォルクスワーゲン e-up!

Porsche Panamera S E-Hybrid|ポルシェ パナメーラ S E-ハイブリッド

Porsche Panamera S E-Hybrid|ポルシェ パナメーラ S E-ハイブリッド

ここでステージに登場したのはアウディ「A3 e-tron」、ポルシェ「パナメーラ S E-ハイブリッド」、フォルクスワーゲン「e-ゴルフ」、おなじく「e-up!」の4台。最初のふたつはプラグインハイブリッド、あとのふたつは純粋なEVというちがいはあるものの、いずれも既存のモデルをハイブリッド化、もしくはEV化していることがフォルクスワーゲン グループの特徴である。

カーボンコンポジット製の専用ボディを用意したBMW「i」とはここが決定的にことなる点で、プレゼンテーションをおこなったウルリッヒ・ハッケンベルグが「2、3のニッチモデルだけを生産するブランドとは一線を画す。われわれは明日ではなく今日、生産するクルマのEモビリティ化をはかってゆく」と言明したのが印象的だった。

Volkswagen Group Night|フォルクスワーゲン グループ ナイト
フランクフルト前夜祭

フォルクスワーゲン グループを体感する一夜 (3)

ランボルギーニからはガヤルドの最終進化版が登場

ここでブランド紹介のコーナーが再開。最初に登場したランボルギーニは、ワンメイクレースのランボルギーニ・ブランパン・スーパートロフェオ、それに世界各国のGT3レースに参戦する「ガヤルド GT3 FL2」という2台のレーシングカーとともに、同社代表のステファン・ヴィンケルマンが「史上最高のガヤルド」と称する、「ガヤルド LP 570-4 スクアドラ コルセ」が公開された。

スクアドラ コルセとは最近設立された同社のモータースポーツ部門のことで、2台のレーシングカーとともに公開したことを含め、ランボルギーニがモータースポーツをブランドのPRに積極的に活用しようとする意図のあらわれと理解できる。

実際、ガヤルド LP 570-4 スクアドラ コルセは「モータースポーツの世界から公道にいたるまで、傑出したパフォーマンスと比類なきスリルが味わえるモデル」と説明された。
ニューモデルはアルミやカーボンコンポジットを多用することで「ガヤルド LP560-4」より70kg軽い車重を達成。2.35kg/psというパワーウェイトレシオを実現し、0-100km/h加速を3.4秒、0-200km/h加速を10.4秒でクリアする。

Lamborghini Gallardo LP 570-4 Squadra Corse & Gallardo GT3 FL2|ランボルギーニ ガヤルド LP 570-4 スクアドラ コルセ & ガヤルド GT3 FL2

Lamborghini Gallardo|ランボルギーニ ガヤルド

台数は不明ながら限定生産で、現地価格は19万1,100ユーロ(約2,540万円)。

改良型エンジンを得たベントレー コンチネンタル GT V8 S

つづいて登場したベントレーは、「コンチネンタルGT V8」のエンジンをさらにパワフルにした「コンチネンタルGT V8 S」を発表した。

これは4.0リッターV8ツインターボエンジンを改良し、最高出力を21ps増しの528ps、最大トルクを20Nm増しの680Nmに引き上げたモデル。これにあわせて、既存モデルより全高を10mm落とした専用のサスペンションが採用され、スプリングレートやダンパー減衰率は一層高められたので、コンチネンタルGTシリーズのなかでも際だってスポーツ性の高かったV8の走りがさらに磨かれていると見ていいだろう。

Bentley Continental GT V8 S|ベントレー コンチネンタル GT V8 S

Bentley Continental GT V8 S|ベントレー コンチネンタル GT V8 S

Bentley Continental GT V8 S|ベントレー コンチネンタル GT V8 S

Bentley Continental GT V8 S|ベントレー コンチネンタル GT V8 S

満を持してポルシェ 918 スパイダーが登場

ポルシェ「918スパイダー」の量産モデルをついに発表した。

カーボンコンポジット製のオープンボディに608psを発生する4.6リッター V8エンジンと210kwの電気モーターを搭載し、システム出力887psを実現したハイブリッド スーパースポーツカーの918スパイダーは、先ごろニュルブルクリンク ノルドシュライフェで6分57秒のラップタイムをマークしたばかり。一般公道用のタイヤを装着した量産車で7分を切るラップタイムは驚異的な記録といえる。

Porsche 918 Spyder|ポルシェ 918 スパイダー

Porsche 918 Spyder|ポルシェ 918 スパイダー

しかも、918スパイダーはただ速いだけでなく、ファン トゥ ドライブの面でもポルシェの高い水準が満足されているらしく、テストドライバーで元ラリーチャンピオンのヴァルター・ロールは「私はもともとハイブリッドに懐疑的でしたが、こんなに楽しいクルマになるとは予想もしていませんでした」と驚きを隠さない。918スパイダーはまもなくラインオフし、予定される918台は15ヶ月かけて生産される見通しである。

Volkswagen Group Night|フォルクスワーゲン グループ ナイト
フランクフルト前夜祭

フォルクスワーゲン グループを体感する一夜 (4)

フォルクスワーゲン グループの4輪部門のトリをつとめたのはアウディ。このイベントではフランクフルトショーにサプライズとして出品された「ナヌーク クワトロ コンセプト」と「A3 カブリオレ」の2台をステージに上げた。

ナヌーク クワトロ コンセプトはジウジアーロ率いるイタルデザインの協力を得て開発されたコンセプトカー。5.0リッター V10 TDIエンジンは544psと1,000Nmを発揮し、0-100km/h加速3.8秒と最高速度305km/hを達成している。ボディサイズは全長4,541×全幅1,990×全高1,337mm、ホイールベースは2,710mmで、エンジンはミッドシップされる。ギアボックスは7段Sトロニックで、クワトロの名から想像されるとおり4輪を駆動する。

しかし、このモデルの最大の注目点は、なんと言ってもそのエクステリア デザインだろう。1970年代のグラマラスなイタリアン スーパーカーを彷彿とするボディは表情豊かな曲面で構成され、均整のとれたプロポーションとともに見る者の心に強く訴えかける力を有している。それでいながら、エクステリア全体から醸し出される印象はアウディそのもの。ただし、従来のように都会的でありながらやや冷たい印象をあたえたデザインとは一線を画し、温かみのあるエモーショナルな造形に仕上げられている。

Audi A3 Cabriolet|アウディ A3 カブリオレ

Audi A3 Cabriolet|アウディ A3 カブリオレ

Ducati|ドゥカティ

もう1台のA3カブリオレは、最新のA3がベースとなっていることはもちろんだが、ハッチバックベースだった従来型とは異なり、独立したトランクルームを持つ3ボックスタイプとされているところが最大の注目点。そのいっぽうで、開け放ったルーフがきれいにボディ内に収納され、クリーンなオープンスタイルを形作っている点は従来どおり。また、今回はこのソフトトップが静粛性の点から大きく改良されたことが強調されていた。

イベントの最後を締めくくったのはイタリアのモーターサイクルブランドであるドゥカティだが、グループ内に個性豊かなブランドを揃えていることがあらためて印象づけられる格好となった。フォルクスワーゲン グループの成長は、まだまつづきそうだ。

           
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