レンジローバースポーツに試乗|Range Rover
CAR / IMPRESSION
2014年12月25日

レンジローバースポーツに試乗|Range Rover

Land Rover Range Rover Sport|ランドローバー レンジローバー スポーツ

道をえらばぬ万能プレミアムクルーザー

新型レンジローバー スポーツに試乗

レンジローバーブランドにおいて、エントリーモデルである「イヴォーク」とプレミアムモデルである「レンジローバー」の中間に位置し、今年の春、2代目へとフルモデルチェンジを果たした「レンジローバー スポーツ」。オンロードとオフロード、その両方を世界一級のパフォーマンスで走破することを目的とし開発されたこのニューモデルを、ランドローバーの故郷イギリスで河村康彦氏がためす。

Text by KAWAMURA Yasuhiko

レンジローバー スポーツ独自のパッケージング

ランドローバーの作品史上、もっともオンロードでのダイナミクス性能にすぐれたモデル──今年春に開催のニューヨーク モーターショーワールドプレミアがおこなわれ、2005年の初代モデル誕生以来、初のフルモデルチェンジがおこなわれたレンジローバー スポーツの狙いは、ズバリそんな走りのキャラクターにあるという。

先般発売された新型から、日本市場でも単に「レンジローバー」と呼ばれるようになったフラッグシップモデルに対して、そんな狙いどころを謳うこちら“スポーツ”は、全高が65mm低い。

それもあって、一見して確かによりスタイリッシュで流麗と受け取れるそのエクステリアのデザインは、もちろん同社のデザインディレクターでチーフオフィサーでもある、ジェリー・マクガバンの作。

これによってレンジローバー、レンジローバー スポーツ、そしてイヴォークという、いずれもマクガバンの手による最新のレンジローバー車ラインナップが、さしあたりの完成を見たことになるわけだ。

左からレンジローバー、レンジローバー スポーツ、レンジローバー イヴォーク

そんなあたらしいレンジローバー スポーツのパッケージングはまた、従来型比で約60mmとわずかに伸ばされた全長のなかに、3列シートレイアウトを成立させたのが大きな特徴でもある。

5mを超える全長のフラッグシップモデルに対し、こちらは150mmほど“コンパクト”。

Land Rover Range Rover Sport|ランドローバー レンジローバー スポーツ

Land Rover Range Rover Sport|ランドローバー レンジローバー スポーツ

それもあって、一見ではそのなかに3列のシートが成立するとはおもえないのは、「さすがはマクガバン氏の手腕によるものだ」と感心をさせられるポイント。が、2,920mmというそのホイールベースは、実はフラッグシップモデルと同一値。「ホイールベースを伸ばしつつリアのオーバーハングを切り詰める」というプロポーションで、このモデル独自のパッケージングを成立させたというわけだ。

Land Rover Range Rover Sport|ランドローバー レンジローバー スポーツ

道をえらばぬ万能プレミアムクルーザー

新型レンジローバー スポーツに試乗(2)

プレミアムブランドに相応しいインテリア

もっとも、そうして捻出されたスペースに設けられた電動格納式の3列目シートが、あくまでも“緊急用”として開発されたものであることは、“シークレットシート”もしくは“5+2シーター”という開発陣が与えたネーミングからも察しがつく。さらに、そうしたスタンスは、本拠地で英国で開催された国際試乗会の場に、せっかくのそんな新アイテムをオプション装着したモデルが用意されなかった点からも読み取れるというものだ。

そのかわり、というべきか、ラゲッジスペースはまさに広大で、リアシート使用時でもその後方に残されるボリュームは780リットル以上という大きな値。

上下にひらくフラッグシップモテルのそれとは異なり、上部にヒンジをそなえた1枚開き式のテールゲートはもちろん電動パワー式。ボード下に標準サイズのスペアタイヤを格納する事もあってフロア位置はやや高めだが、そこでは荷物の積み下ろし時に標準位置よりも全高を50mmダウンさせるアクセスポジションが威力を発揮する。

Land Rover Range Rover Sport|ランドローバー レンジローバー スポーツ

ドアを開くとそこに広がるのは、吟味されたレザーとメタル素材をふんだんに用いて、いかにもプレミアムブランドの作品に相応しい仕上がりぶりをアピールする上質なキャビン空間。

“スポーツ コマンド ポジション”と称するそのドライビング ポジションは、フラッグシップ モデルほど高くアップライトではない一方で、逆にイヴォークほどには脚の投げ出し感が強くないという、両者の中間的な印象だ。

Land Rover Range Rover Sport|ランドローバー レンジローバー スポーツ

Land Rover Range Rover Sport|ランドローバー レンジローバー スポーツ

当然ながら、用意される装備群はすこぶる充実。好みとあらば後席を独立させた4ゾーン式の空調システムや、23ものスピーカーを用いた1,700Wオーディオ、さらには「レンジローバー車で初」を謳うヘッドアップディスプレイなども選択可能。

同時に、最新モデルらしくセーフティテクノロジーも満載。路上の標識を読み取ってメーターパネル内に表示する”トラフィック サイン レコグニション”や、ヘッドライトの上下ビームを自動で切り替える”オートマチック ハイビーム アシスト”、並列駐車からの後退脱出時に側方からの接近車両を検出する”リバース トラフィック ディテクション”などはその一例だ。

Land Rover Range Rover Sport|ランドローバー レンジローバー スポーツ

道をえらばぬ万能プレミアムクルーザー

新型レンジローバー スポーツに試乗(3)

V6かV8か、加速力はどちらもじゅうぶん以上

テストドライブしたのは、フラッグシップモデルにももちいられる5リッターのV型8気筒と、あらたに設定された3リッターのV型6気筒という2種のガソリンエンジンを搭載したモデル。いずれのエンジンも機械式のスーパーチャージャー付きで、それぞれ最新の8段トルコンATと組みあわされたもの。

また、テスト車のグレードは前者がHSE、後者がオートバイオグラフィとシリーズ中でも上位に属するもので、とくに8気筒モデルには電子制御式の可変減衰力ダンパー“アダプティブ ダイナミクス”や、おなじく電子制御式のLSD、4輪個別のブレーキ力をもちいたトルクベクタリングなど、運動性能向上のための、さまざまなアイテムが標準装備とされている。

フラッグシップモデルと同様のオールアルミ製モノコックボディを採用し、25パーセントのボディ剛性アップを果たしつつ、シャシーを含めると300kgに及ぶ軽量化を実現させたという新型。

ただし、大型のSUVゆえにそれでも絶対重量は2トンを大幅に超える。が、前述2種のパワーパックを搭載したあたらしいレンジローバー スポーツは、それを物ともせず「おもいがけずに軽々した加速感」を味わわせてくれる事になった。

Land Rover Range Rover Sport|ランドローバー レンジローバー スポーツ

それもそのはずで、実はV6モデルの7.2秒という0-100km/h加速タイムは、「従来型の自然吸気5リッターV8モデルを凌ぐ」というもの。さらにV8モデルに至ってはその値がわずかに5.3秒と、まさしく世界一級のスポーツカー並みだ。

いずれにしても、6気筒モデルでも加速力そのものはじゅうぶん以上。それは「3リッターという排気量など忘れてしまう」といっても過言ではない印象だ。

Land Rover Range Rover Sport|ランドローバー レンジローバー スポーツ

Land Rover Range Rover Sport|ランドローバー レンジローバー スポーツ

もっとも、両者を比較してしまえば、より上質でプレミアム感に富んでいるのは間違いなく8気筒モデルの方でもあった。それは例えば、動きはじめの力感の強さや、回転フィールの緻密さ、そしていかにも吟味をされた感はあるものの少々“着色気味”でもある6気筒モデルにたいしての、より自然な排気サウンドなどに起因する。

そう、加速の能力にかんしては6気筒でもじゅうぶんだが、8気筒を知ってしまうとやはりその上質さに”グラッ”ときてしまうというのが本心。現時点では日本仕様の価格は発表されていないが、その価格差によってはここはなかなか難しい悩みどころとなってしまうかもしれない。

Land Rover Range Rover Sport|ランドローバー レンジローバー スポーツ

道をえらばぬ万能プレミアムクルーザー

新型レンジローバー スポーツに試乗(4)

ライバルはポルシェ カイエン

前述のように、新型の“みどころ”であるオンロードでのフットワークは、なるほど開発陣の自信のほどが素直に納得のできる好印象だった。まずは、直進時の安定感が素晴らしい。

「そんな事はあたりまえ!」とおもわれるかもしれないが、あたらしいレンジローバー スポーツの、いかにも地面にしっかりと根を下ろしたかのような直進安定感は、おもわずそんなコメントを発したくなるほどにレベルが高い。

それでいながら、そんな直進状態からわずかにステアリングを切り込んださいの、ほとんど応答遅れを感じさせないコーナリングフォースの自然な立ち上がりの感覚も、オールシーズンタイヤを履く事を意識させないこのモデルの走りの美点と紹介できる。もちろん、フル電動化されたパワーステアリングの違和感のないフィーリングも、そうした好印象の一助になっていることは間違いない。

Land Rover Range Rover Sport|ランドローバー レンジローバー スポーツ

さらに、より強い横Gを受けつつハイスピードコーナーをクリアするようなシーンでも、さしたるロールも発せずにおもいどおりのラインをトレースできるのが新型の実力。それはなるほど、テストドライブ出発前におこなわれたカンファレンスでの、「ライバルはポルシェ カイエン」と語る開発陣の自信ありげな表情が納得できるもの。

くらべれば、ここでも8気筒モデルの走りがより精彩に富んでかんじられたのは、前述のような様々な電子ディバイスの効果ももちろん後押ししてのものにちがいない。

Land Rover Range Rover Sport|ランドローバー レンジローバー スポーツ

道をえらばぬ万能プレミアムクルーザー

新型レンジローバー スポーツに試乗(5)

最高難易度をものともしない走破性

そんな新型レンジローバー スポーツの、もう一端の走りの実力の高さを身にしみて教えられたのは、試乗ルート内に設定されたタフなオフロードセッションにトライをした時だった。

ランドローバー社主催の国際試乗会では、その試乗メニューにオフロードプログラムがくわえられるのは毎度の事。だから、新型レンジローバー スポーツが「史上最高のオンロードダイナミクスを狙った」とあらかじめ耳にはしつつも、そのプログラムのなかにオフロードセッションも用意されていた点には驚きはなかった。

ところが、そうした走りのキャラクターを売り物とするモデルにもかかわらず、今回設定されたオフロードコースは、実はこれまで自身が経験したなかにあっても“最高の難易度”であったのだ。

Land Rover Range Rover Sport|ランドローバー レンジローバー スポーツ

Land Rover Range Rover Sport|ランドローバー レンジローバー スポーツ

何しろ、一見して「歩いてでも登るのは難しそう」なガレ場での登坂や、逆に奈落の底に落ちて行くかのようなぬかるんだ降坂路。さらに、常識的には絶対に諦めるはずの濁流内の“河渡り”から、最後にはわざわざ内部に障害物を設置した退役ジャンボの“機内走行”に至るまで、いかに外に立つインストラクターの誘導があるとはいえ、まさに「これでもか!」というほどのその舞台は、予想だにしていなかったハードなもの。そんなプログラムが、そこには用意をされていたのである。

ところが、そうして待ち構える数々の難関を、先ほどまでオンロードをスポーツカーのごとく駆けぬけて来たモデルが、まったくこともなげに次々とクリアしてしまうのだから、これはもうどうしても「このモデルこそが、世界で究極のオールテレイン プレミアムモデルだ」と、そう認めざるを得なくなってしまう。

Land Rover Range Rover Sport|ランドローバー レンジローバー スポーツ

Land Rover Range Rover Sport|ランドローバー レンジローバー スポーツ

オンロードを得意とするSUVは、今や数多ある。オフロードなら誰にも負けないと自負するモデルも、そう難しくなく見つかりそうだ。

けれども、「そんな両者を、それぞれの頂点に近いポイントでバランスさせたプレミアムSUV」となれば、これはもうこのモデルで決まりであるはず──あたらしいレンジローバー スポーツは、自信をもってそう断言したくなる1台であったのだ。

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Land Rover Range Rover Sport 3.0 V6 SUPERCHARGED|
ランドローバーレンジローバー スポーツ 3.0リッターV6スーパーチャージド

ボディサイズ|全長 4,850 × 全幅 1,983 × 全高 1,780 mm
ホイールベース|2,923 mm
最小回転半径|6.3 メートル
トランスミッション|8段オートマチック(ZF社製 8HP70)
駆動方式|4WD
重量|2,144 kg
エンジン|3リッター V型6気筒 24バルブ
最高出力|340ps(250kW)
最大トルク|450 Nm
ブレーキ 前/後|350mmベンチレーテッドディスク / 350mmベンチレーテッドディスク
最高速度|209 km/h
0-100km/h加速|7.2 秒
CO2排出量|249 g/km

Land Rover Range Rover Sport 5.0 V8 SUPERCHARGED|
ランドローバー レンジローバー スポーツ 5.0リッターV8スーパーチャージド

ボディサイズ|全長 4,850 × 全幅 1,983 × 全高 1,780 mm
ホイールベース|2,923 mm
最小回転半径|6.3 メートル
トランスミッション|8段オートマチック(ZF社製 8HP70)
駆動方式|4WD
重量|2,310 kg
エンジン|5リッター V型8気筒 32バルブ
最高出力|510ps(375kW)
最大トルク|625 Nm
ブレーキ 前/後|380mmベンチレーテッドディスク / 365mmベンチレーテッドディスク
最高速度|225 km/h(オプション装着で250km/h)
0-100km/h加速|5.3 秒
CO2排出量|298 g/km

           
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