MOVIE|エル・ファニング主演『ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界』
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2015年4月7日

MOVIE|エル・ファニング主演『ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界』

MOVIE|思春期の少女の揺れ動く心と成長を描いた感動作

エル・ファニング主演『ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界』(1)

美しい映像美とともに、人びとの心と心のふれあいを大胆に描き、観る者を魅了しつづけてきたイギリス人女性監督、サリー・ポッター。彼女の最新作『ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界』が8月31日(土)より、シアター・イメージフォーラムほかで公開される。公開に先駆け、OPENERSでは8月12日(月)19:00から、渋谷の「さくらホール」で開かれる試写会に5組10名を招待する。

Text by YANAKA Tomomi

思春期ならではのはかない美しさ、溢れ出す魅力

『オルランド』『タンゴ・レッスン』『耳に残るは君の歌声』などで知られるサリー・ポッター監督。最新作は社会の矛盾や政治不安など刻々と変わりゆく時代を生きなければならない、思春期の少女の煩悶、葛藤により揺れ動く心と成長を描く感動作となった。

主演にはダコタ・ファニングの妹であり、『ヴァージニア』などの話題作に出演しつづけているエル・ファニング。思春期ならではのはかなげな美しさ、ほとばしる魅力をスクリーンに映し出した。そして、親友役にはジェーン・カンピオン監督とコリン・イングラート監督を両親にもち、全米ベストセラー小説の映画化『ビューティフル・クリーチャーズ』でブレークしたアリス・イングラートがみずみずしい演技をみせる。

MOVIE|エル・ファニング主演『ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界』02

MOVIE|エル・ファニング主演『ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界』03

明るい未来を手に入れるため一歩を踏み出すジンジャー

冷戦時代に突入した1960年代のロンドン。生まれたときからどこへ行くのも何をするのも一緒だった仲良しのジンジャーとローザの二人は学校の授業をさぼって宗教や政治、ファッションについて話し合い、少女から大人へと変化する青春時代を満喫していた。

しかし、思想家であり、ジンジャーの父親でもあるローランドにローザが恋をしたことや、それぞれの反核運動に対する考え方のちがいから二人の友情に亀裂が生じていく。家族や友人ともうまくいかず、日々核の脅威が報道されるなど、ジンジャーを取り巻く世界は思い描いていたものとはかけ離れたものに。それでもジンジャーは、明るい未来を手に入れるため、一歩ずつ前へ歩き出すのだった──

MOVIE|エル・ファニング主演『ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界』04

1960年代の社会が不安と変貌で揺れる雰囲気を見事に再現。吟遊詩人としても活躍するサリー・ポッター監督ならではの描写で、ときに固くときにもろい絆で結ばれた二人の少女の姿をそっと見守るかのように繊細に描いた本作。自分を取り巻く不秩序で矛盾だらけの世界を受け入れ、それでも懸命に生きていくジンジャーの姿は、観る者の心に濃い残像を残すことだろう。

MOVIE|思春期の少女の揺れ動く心と成長を描いた感動作

エル・ファニング主演『ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界』(2)

「ダコタ・ファニングの妹」という触れ込みはもはや不要なほど、活躍目覚ましいエル・ファニング。撮影現場の雰囲気から思い出深いエピソード、そして本作の見どころを語ってくれた。

Edited by TANAKA Junko(OPENERS)

その声はいつかだれかに届くはず

──この役を受けることになった経緯は? サリー・ポッター監督と仕事をしてみていかがでしたか?

最初に脚本が届きました。それから、サリーに会ってオーディションを受けて……。当時はまだ12歳だったので、16~17歳という設定のジンジャーの役には、若すぎるとおもわれないか心配でした。それにくわえて、イギリス英語でオーディションを受けなければならなかったので、なおさら緊張しました。ですが、サリーとはすぐに打ち解けて、その後も何度か会って話をするようになり、その翌年には撮影がスタートしました。

この脚本はサリーが長年温めてきた、彼女にとってすごくパーソナルなもの。1960年代に青春時代を過ごした彼女は、実際にキューバのミサイル危機も経験しています。少女から大人への成長過程を描いた作品なので、監督が女性だったのはとても助かりました。撮影中、サリーにたくさん質問しましたが、彼女はいつも自分の体験を交えながら質問に答えてくれたんです。贅沢でしたね。話を聞きながら、当時もいまも女の子が考えることに大きなちがいはないんだなと感じました。

──ベテラン俳優が勢ぞろいしていましたが、撮影現場の雰囲気は?

素晴らしかったです。はじめてアネット(・ベニング)に会ったときのことをいまでも覚えています。尊敬する先輩たちの演技する姿や役作りを身近で見ることができて、とてもいい経験になりました。

MOVIE|エル・ファニング主演『ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界』07

──本作でははじめてのキスシーンがありましたが。

(照れ笑い)そうなんです。これがわたしにとって初のキスシーンでした。最終日に撮ったんですが、その日までずっと「どうしよう」とおもっていました。だけど相手役の男の子が紳士的で優しかったので助かりました。

──本作の見どころを教えてください。

映画の冒頭は、広島の原爆を映した映像からはじまります。舞台となっている1960年代は、反核運動が盛んにおこなわれていた時代。サリーに聞いたのですが、当時彼女が参加したデモは何日間もつづいたそうです。奇しくも震災後、反原発を訴える動きが高まっています。こういった運動に若い人たちが参加すること、自分の信念を見つけて、それに従って行動することは素晴らしいとおもいます。その声はいつかだれかに届くはずなので。

──ラストシーンがとても印象的でした。もしあなたがおなじような立場に立ったら、どんな決断をするとおもいますか?

ジンジャーが前に進むためには、ローザを許す必要がありました。ローザの行為を忘れ去ることはできないとおもいますが、あの経験を通して彼女はひと回り大きくなったのではないでしょうか。わたしも最後には同じ決断を下すことになるとおもいます。

──撮影現場での思い出深いエピソードがあれば教えてください。

撮影現場ではまるで別人になったような気分でした。サリーはジンジャーの髪色にとてもこだわりを持っていたので、8時間(!)もかけて髪を染めて、何度もカメラテストをしました。でも一番難しかったのは、イギリス英語もマスターすること。これはわたしだけではなくて、母親役のクリスティーナ(・ヘンドリックス)やアリス(・イングラード)も同様でした。大きなチャレンジでしたが、イギリス英語を話すスタッフに囲まれながら、ロンドンで撮影したので、おもったよりも早く習得できました。

MOVIE|思春期の少女の揺れ動く心と成長を描いた感動作

エル・ファニング主演『ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界』(3)

友情も家族も愛でできている

──役作りのために当時の情勢などを勉強しましたか?

リハーサル中はアリスと一緒にたくさん本を読みました。サリーが用意してくれた当時の反核運動に関する本や写真集なども読みました。それから、メイク室には当時の髪型やメイクを写した写真が飾られていて、1960年代のヘアメイクを忠実に再現できるようになっていました。

──思春期ならではの繊細な描写でしたが、あなた自身はどのような女性だとおもわれますか?

難しい質問ですね……。あたらしいことに挑戦するのが好きで、よく笑っています。あまり小さいことは気にせずオープンでいようと心がけています。

──役柄について、姉のダコタ・ファニングさんに相談することはありますか?

それがあまりないんです。姉が大学に通うようになってからは、離ればなれになってしまって……。いままでずっと一緒だったので不思議な感じです。で、姉が帰省するときも、あまり映画の話はしないんです。お互いの脚本も読まないので、完成した映画を観に行くときはお互いにサプライズで。それが気に入っています。

MOVIE|エル・ファニング主演『ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界』06

──今後はどのような役柄に挑戦してみたいですか?

姉と一緒に映画に出演してみたいです。友達の役を演じてみるのは楽しいとおもいます。

──これから観に行こうという方にどんな言葉をかけますか?

オープンな気持ちで映画館に行ってほしいですね。最後に少しでも希望を感じてもらえたらと。そして、この映画の「許し」というテーマが伝わればうれしいです。

──自分、愛、友情、家族、信仰。このなかからひとつ選ぶとしたら、なにを選びますか?

どうしよう……。私たちの家族は本当にお互いのことを大事におもっているので、わたしにとって愛と家族は同じ存在なんです。ひとつだけ選ぶってすごく難しい! 友達も大事ですし……。でもやっぱり最終的には「愛」を選ぼうとおもいます。友情も家族も愛でできているとおもうので。

Elle Faning|エル・ファニング
1998年、アメリカ・ジョージア州生まれ。姉は子役出身の女優、ダコタ・ファニング。2歳のとき、ダコタの幼いころを演じた『I am Sam アイ・アム・サム』(2001年)でスクリーンデビュー。その後、トッド・ウィリアムズ監督の『ドア・イン・ザ・フロア』(2004年)、テリー・ジョージ監督の『帰らない日々』(2007年)など、子役として数々の映画やテレビドラマ、CMに出演。『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(2008年)では、ケイト・ブランシェットの少女時代を演じる。ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した、ソフィア・コッポラ監督の『SOMEWHERE』(2010年)や、フランシス・フォード・コッポラ監督の『ヴァージニア』(2012年)にも出演。姉をしのぐ活躍をみせている。


MOVIE|エル・ファニング主演『ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界』09

『ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界』試写会に5組10名をご招待!
日程|8月12日(月)
時間|18:30開場、19:00開演
会場|渋谷区文化総合センター大和田「さくらホール」
東京都渋谷区桜丘町23-21-4
応募締切|7月31日(水)午前10:00まで

応募は終了しました。
たくさんのご応募ありがとうございました。

『ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界』
8月31日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー
監督│サリー・ポッター
出演│エル・ファニング、アリス・イングラート、クリスティーナ・ヘンドリックス
配給│プレイタイム
2012年/イギリス、デンマーク、カナダ、クロアチア/90分http://www.gingernoasa.net/

© BRITISH FILM INSTITUTE AND APB FILMS LTD 2012

           
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