more trees×丸の内朝大学|「アーバン木こりクラス」を密着取材
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2015年4月23日

more trees×丸の内朝大学|「アーバン木こりクラス」を密着取材

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「アーバン木こりクラス」に密着(1)

丸の内からはじまる都会と森をつなぐアクション

出社前の時間を活用し、充実した朝のひとときを過ごすというライフスタイルを「朝活」と呼ぶ。この「朝活」の筆頭格である「丸の内朝大学」は、丸の内を舞台にさまざまなジャンルの講座を展開している。先日、春学期のコンテンツとして、「アーバン木こりクラス 岩手編~都会に暮らし、森と生きる~」(以下、「アーバン木こりクラス」)がおこなわれた。講師を務めたのは、more trees(モア・トゥリーズ)事務局長の水谷伸吉氏だ。

Photographs by Shinya Hirose Text by HIKITA Sachiyo(Fukairi)

丸の内から岩手の森へ、都市と森をつなぐ「朝活」

「アーバン木こりクラス」は、丸の内朝大学「環境学部」の1コンテンツとして5月24日から6月21日までの毎週金曜日におこなわれた。7時15分という早朝からの講座にもかかわらず、32名の意欲的な受講生が集まった。

モア・トゥリーズの活動事例をもとに日本の森林について学習し、週末2日間でフィールドワークを実施。そして、受講生がチームとなってアクションプランを発表する、という内容だ。

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まず日本の森林についての基礎知識を学ぶ。「持続可能な森づくりのためにどのようなアクションが求められるのか」といったテーマで講義がおこなわれ、その後、週末2日間をかけてフィールドワークを実施。受講生は、モア・トゥリーズとゆかりの深い岩手県住田町、震災の被害を受けた陸前高田市などを訪問した。

最終日は、参加者がグループを組んでアクションプランを計画。各グループが「都会から発信するアクションプラン」を発表し、クラスは幕を閉じた。

受講生が語る「アーバン木こりクラス」の魅力

都会に住みながらも「なにかアクションをおこしたい」という姿勢は、受講生共通のもの。それはインタビューからも、うかがい知ることができた。

「私自身、地域活性化を目的とした企画にコミットしており、具体的なアクションプランを学ぶためにクラスを受講しました。フィールドワークでは、地域に根差す方々と都会に暮らす私たちとが、森を通じてつながっているということを実感しました。刺激的なこの経験を、都市でのアクションに活かしていけたらとおもいます」

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「フィールドワークの内容に惹かれて本クラスを受講しました。被災地と森林の関わり方について、具体的な取り組みを見たかったんです。間伐体験を通じて、森の香り、みずみずしさといった生命力を感じました。また、住田町の視察では、町が一貫して雇用生産のサイクルを作っている様子を目にし、林業の可能性を感じました。これからは、間伐体験の感想を周りに伝えるなど、人に森の魅力を伝えたいと考えています」

「自分の時間に余裕ができ、外に目を向けたときに偶然見つけたのが『アーバン木こりクラス』でした。以前から山登りは好きでしたが、国内の森林や林業についてあまり知識が無く、学ぶことはたくさんありました。また、被災地への訪問は自然との共存について熟考する機会となりました。これからは、まず、身近なことから森とのつながりを築いていけたらいいとおもっています。なにもしないより、小さなことからでもアクションした方がいいですから」

フィールドワークでは、間伐体験や被災地の視察によって林業からの地域再生を肌で感じられる。木造仮設住宅の見学や地元の人びととの触れ合いなど、参加者にとって忘れがたい経験となったようだ。最終日に発表されたアクションプランは、森にまつわるイベント開催や子どもに対する環境教育など、「都市からの発信」というポイントを押さえた具体的なイメージを獲得していた。

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「アーバン木こりクラス」に密着(2)
モア・トゥリーズ事務局長・水谷伸吉×丸の内朝大学 企画担当・宇田川裕喜

「都市に暮らす人びとと森をつなぎ、アクションを起こす」

今回の「アーバン木こりクラス」で講師を務めたモア・トゥリーズ事務局長の水谷伸吉氏と、丸の内朝大学の企画運営を担当している宇田川裕喜氏の両人に話を聞く機会を得た。クラス開講にいたった経緯、実施してみての手ごたえを語ってくれた。

Photographs by Shinya Hirose Text by HIKITA Sachiyo(Fukairi)

現地に赴くことで見えてくるものがある

宇田川 都会に暮らす人びとの多くは、森を守るために“木を切ってはいけない”という認識をしています。しかし、実際に現在の日本の森林に必要とされているのは、“計画的に木を切り、森に手入れをすること”です。つまり、木を伐採し、消費し、林業を活性化して、ふたたび人の手が入ることで森が健全化することが必要なのに、森との接点がない都市の人びとはそれを知らない。「アーバン木こりクラス」では、森林をめぐる諸問題を知り、森がどのような状態なのかを体感する機会を提供したいと考えました。

水谷 やはり、立場がちがえども、森に関わる人びとの多くは「都会と森をつなぎたい」という共通認識を抱いています。そこで、丸の内朝大学とモア・トゥリーズで「一緒に取り組むことはできないか」という話になり、今期の講座が実現しました。

「都市に暮らす人びとと森をつなぎ、アクションを起こす」というコンセプトは、モア・トゥリーズの活動に通ずるものがあります。そこで、このコンセプトを活かしながらスタートしたのが「アーバン木こりクラス」というわけです。

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水谷 卓上での勉強も十分に価値のあることですが、森づくりについて知るには、現場を見るのが一番早い。そこで、座学と現場での体験とを並行させ、学びを深めていくことのできるカリキュラムを構成しました。丸の内での学習と、フィールドワークとが化学反応を起こし、得られる効果が最大化されることを目指したのです。

宇田川 実際にフィールドワークを通じて、参加者のモチベーションも高まったように感じます。時間と空間、経験を共有することで、打ち解けあっていくのはもちろんのこと、協力して間伐を行うことによってチームワークも生まれる。森づくりはひとりではできない、ということを肌で感じてもらえたとおもいます。

森の魅力を伝える“インフルエンサー”を育成する

水谷 この講座は、田舎へ移住して林業を営む人間を育てようというものではありません。周囲を巻き込んで、アクションを起こすことのできる人を都会で増やすことが目的です。都会(アーバン)に暮しながら、森との接点をつくり、周りに影響を与える人、いわゆる“インフルエンサー”としての「アーバン木こり」を増殖させたいのです。

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宇田川 「丸の内朝大学」という場所には、これからの生き方、社会の問題など、さまざまな点においてコンシャスな人びとが集まっています。その力をどのように生かしていけるのか、常に意識していますね。

本講座の例でいうと、都会のコンシャスな人びとが森に赴き、間伐をするなんて、めったにないことです。これは地元の人にとっても、大きな刺激となります。都会のOLさんが大勢やってきて、「木こりってかっこいい!」というわけですから、それだけで林業に携わるおじさんだって嬉しくなれます(笑)。

実際にそれは、森づくりに欠かせない要素なのです。都市側にしたら、持続可能な社会にシフトしていくための“インフルエンサー”を生み出すきっかけになりますし、地方側にしても、その地域の価値を再評価することにつながります。都市と森、双方に刺激をあたえ合っていくことが大切なのです。

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水谷 クラスの最終回では、アクションプランを発表しました。しかし、これはスタートに過ぎません。プランをアクションにつなげてこそ意味があるのです。個人の生活のなかで実践するもよし、仲間を募ってアクションがするもよし。クラス終了後も人間関係を維持し、自発的に「アーバン木こり」を継続してほしいとおもっています。

宇田川 講座はあくまでもアクションへの入口です。ここでひとつのコミュニティを形成して、同じ目的・興味をもった仲間同士、積極的に活動する。そしてそれが、いつかメインストリームとなるように願っています。

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Tel. 03-5770-3969

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