コンチネンタル GT スピード コンバーチブルで西部を走る|Bentley
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2014年12月5日

コンチネンタル GT スピード コンバーチブルで西部を走る|Bentley

Bentley Continental GT Speed Convertible|
ベントレー コンチネンタル GT スピード コンバーチブル

西部快走

コンチネンタル GT スピード コンバーチブルに試乗

最高速度330km/hを達成した、史上最速の公道用ベントレー「コンチネンタル GT スピード」にも、コンバーチブルモデルの「コンチネンタル GT スピード コンバーチブル」がくわわる。アメリカで開催された、このオープン コンチネンタル GT スピードの試乗会に、OPENERSでもおなじみの大谷達也氏が参加。アメリカ西部の広大な大地を走った。大陸でのグランドツーリングとあれば、まさに水を得たサカナ。きっとコンチネンタル GT スピード コンバーチブルは、その本領を、いかんなく発揮するにちがいない。

Text by OTANI Tatsuya

「本物のグランドツアラー」としての資質

いかに高い速度で、いかに長い距離を走りつづけられるか?

まだ自動車の実用性がはっきり確認されていなかった当時、高速走行時の耐久性を明らかにする数々の試みがおこなわれた。ベントレーは、この種の挑戦にとりわけ積極的に取り組んだブランドのひとつだが、なかでももっとも有名なのは1924年から1930年にかけて5度ル・マン24時間レースを制したベントレー・ボーイズたちの活躍で、次に知られているのはフランスのカンヌからイギリスのロンドンまで特急列車と競争してこれに勝った“ブルートレインレース”であろう(列車の終着駅はフランス国内のカレーだったが、列車がそこに着く前にベントレーはロンドンに到着した)。

いずれの例でも、ベントレーは当時の民衆には想像もできないほど速いスピードを保ち、信じられないほど長い距離を走りきった。こうした伝統を積み重ねていくなかで、ベントレーは「本物のグランドツアラー」としての資質を磨いていったのである。


ベントレー ボーイズのふたり グレン・キッドストンとウルフ・バーナート(1930年)


ウルフ・バーナートはベントレー スピード シックスを駆り 1930年3月 特急列車に勝利した

現在のベントレーに用いられているコンチネンタル、つまり“大陸”というモデル名も、同社のグランドツアラーとしての性格を色濃く反映したものといえる。

たとえば往年のブルートレインレースとは反対向きに、ロンドンからコートダジュールまでの千数百kmを一気に走り切ってもほとんど疲れを覚えないクルマ……コンチネンタルGTが目指した性能とは、そのようなものだったのだ。

世界最速の4シーターコンバーチブル誕生

そんなコンチネンタルシリーズにあらたにくわわったのが「コンチネンタルGTスピード コンバーチブル」である。

6.0リッターW12ツインターボエンジンの最高出力を標準の575psから625psまで引き上げ、ベントレー史上最速といわれる最高速度330km/hを達成した「コンチネンタル GT スピード」をベースに、オープントップドライブが可能なコンバーチブルに仕立て直したこのニューモデルは、クーペボディのコンチネンタル GT スピードより車重が175kgも重いにもかかわらず、0-100km/h加速4.4秒(4.2秒)、最高速度325km/hを実現(カッコ内はコンチネンタル GT スピードの数値)。

“世界最速の4シーターコンバーチブル”の称号を得た。

Bentley Continental GT Speed Convertible|ベントレー コンチネンタル GT スピード コンバーチブル

なお、「コンチネンタル GT」のオープントップ版は従来「コンチネンタル GTC」と呼ばれていたが、ベントレーはこれを順次「コンチネンタル GT コンバーチブル」に切り替えていくそうだ。「コンチネンタル GT スピード コンバーチブル」は、したがってその第一弾にあたる。

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ベントレー コンチネンタル GT スピード コンバーチブル

西部快走

コンチネンタル GT スピード コンバーチブルに試乗(2)

西部1,000km

アメリカ西部を舞台に開かれた「コンチネンタル GT スピード コンバーチブル」の国際試乗会は、おもいがけず長距離を走り抜けるものだった。

まず、アリゾナ州フェニックス郊外のスコッツデイルを出発。インターステイツの87号、17号、そして89号をつたい、投宿先であるグランドキャニオンに至るまでの約500kmが初日の行程。

2日目はまずインターステイツ40号で西進した後、テレビドラマや小説の舞台となったルート66を辿り、さらにインターステイツ93号でフーバーダムを経由、そこからラスヴェガスに辿り着くという、こちらも500kmほどの道のりだ。1,500km近い未舗装路を一昼夜で走りきったブルートレインレースにはくらべるまでもないが、最近の試乗会ルートとしては異例の長さといえる。

もうひとつ注目すべき点はアメリカを試乗会の場として選んだことにある。

よく知られているとおり、国土が広大なアメリカは道路の保守を行き届かせるのが難しく、このため荒れた路面が少なくない。

ましてや、砂漠に覆われた西部は寒暖の差が激しいため、舗装にダメージを与えやすいとされる。そこを、ボディ剛性の面で不利なコンバーチブルで走るのだから、みずからすすんで弱点をさらけ出すようなもの。正直、私はベントレーがコース設定を誤ったのではないかと、そんなことまで考えていた。

Bentley Continental GT Speed Convertible|ベントレー コンチネンタル GT スピード コンバーチブル

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ベントレー コンチネンタル GT スピード コンバーチブル

西部快走

コンチネンタル GT スピード コンバーチブルに試乗(3)

ウインドディフレクターは忘れずに

試乗初日、スコッツデイルの街には燦々と陽光が降り注いでいた。旅の友となるオーストラリア人のポールと私は迷うことなくルーフを開け放ち、1,000kmのコースを走りはじめた。

フリーウェイに入るまでの一般道は制限速度65mph(約104km/h)。しかし、4枚のサイドウィンドウは上げてあるのに、キャビンのなかを風がひっきりなしに舞っている。

「このままではオープンのまま1,000kmを走るのは辛いかも?」とおもっていた矢先、撮影していたカメラマンからウィンドディフレクターが倒れていることを指摘される。

リアシート付近に取り付けるネット状のパーツは、後方からの風の巻き込みを防ぐためのもの。これが畳まれた状態では、キャビンで風が渦巻くのも仕方がない。

さっそくウィンドディフレクターを立てると風がぴたりと止んだ。その後、フリーウェイに入ってスピードを制限速度いっぱいの75mph(約120km/h)まで上げても、車内は平穏なままだった。つまり、ウィンドディフレクターさえ立てておけば、日本の高速道路でも難なくオープンで走れることになる。これは、コンバーチブルカーにとって実に大切な性能といえる。

Bentley Continental GT Speed Convertible|ベントレー コンチネンタル GT スピード コンバーチブル

アンチオープン派も納得させるしっかりモノ

予想どおり、路面はところどころ舗装がはがれていて、平滑な区間はほとんど見当たらない。そこを、コンチネンタル GT スピードゆずりのソリッドなサスペンションで走り抜けるわけだから、ボディ剛性の低さはすぐに露呈するだろうとおもっていたが、あにはからんや、ボディは意外なほどしっかりしている。

ときおり、ステアリングポストを通じてかすかな振動を感じることもあったが、これをのぞけばオープン化の弊害は見当たらない。フロアの微振動もスカットルシェイクも、皆無といっていいレベル。ボディ剛性が低いことを理由にコンバーチブルボディを敬遠する“アンチオープン派”も、これなら納得するだろう。

Bentley Continental GT Speed Convertible|ベントレー コンチネンタル GT スピード コンバーチブル

Bentley Continental GT Speed Convertible|ベントレー コンチネンタル GT スピード コンバーチブル

ただし、コンフォートからスポーツまで4段階が用意されるエアサスペンションの設定を切り替えているうち、もっともハードなスポーツがクーペ版のコンチネンタル GT スピードほど硬くないことに気づいた。

こちらの4段階目と、あちらの3段階目がほぼおなじといった印象なのだ。この点をベントレーのエンジニアに質問すると、「コンバーチブルの捻り剛性はクーペよりも10パーセントほど低いため、これにあわせてエアサスペンションの設定もやや柔らかめにした」との回答が得られた。

もっとも、クーペの4段階目はまなじり上げて走るとき専用で、滅多に使うものではない。だから、実質的にクーペの3段階目までしかないコンチネンタル GT スピード コンバーチブルでも不自由することはほとんどないはず。むしろ、コンバーチブルの使い方を考えれば、このほうが理にかなっているといえるくらいだ。

Bentley Continental GT Speed Convertible|
ベントレー コンチネンタル GT スピード コンバーチブル

西部快走

コンチネンタル GT スピード コンバーチブルに試乗(4)

地球の記憶をたずねる

いずれにしても、コンチネンタル GT スピード コンバーチブルのサスペンションは従来のGTCよりかなりソリッドな印象で、高速域でも引き締まった乗り心地をもたらす。

ハンドリングもこれによく見合ったもので、どっしりとして座りがいい。技術陣がハイスピードクルージングに照準をあてていたことがヒシヒシと伝わってくる。

そんなことをアレコレ考えているうちに、グランドキャニオンに到着した。

コロラド川の流れが何千万年ものときをかけて大地を削り取り、複雑に入り組んだ渓谷をつくり出したことはモノの本を読んで知っていたが、実物を目の前にすると、そのスケールの大きさに圧倒され、人間がいかに小さく、いかに短い時間しか生きられない運命にあるかを思い知らされる。まさに大地に刻まれた地球の記憶といった印象だ。間違いなく一見の価値がある。

ルート66

翌日もよく晴れ渡ったが、標高が2000m近いとあって、さすがに冷え込んでいる。それでも、ヒーターとシートヒーターを組み合わせれば十分に暖がとれる。2日目も、私とポールはオープンのまま走り続けた。

インターステイツ40号を1時間ほど走るとウィリアムズという街に着いた。ここからは、あの伝説的なルート66を走ることになる。

Bentley Continental GT Speed Convertible|ベントレー コンチネンタル GT スピード コンバーチブル

Bentley Continental GT Speed Convertible|ベントレー コンチネンタル GT スピード コンバーチブル

昔のアメリカ映画によく出てきた、荒野をまっすぐに進む一本道。ルート66を走っていると、まさにそんな景色に出くわす。走っても走っても真っ直ぐなまま。そしてすれちがう者もいない。そんな時間がいつ果てるともなくつづく。

ベントレーの試乗会は縛りが緩く、各自が思い思いのペースで走るため、我々が乗るコンチネンタル GT スピード コンバーチブルだけが広い大地のうえを1台だけで走る、なんてシーンが何度もあった。もしもこんな道を真夜中にひとりだけで走っていたらさぞかし心細いだろうが、加速時に響く6.0リッターW12ツインターボの逞しいエグゾーストノートが、私の頭からそんな不安をかき消してくれる。

クーペモデル同様、コンバーチブル仕様のコンチネンタル GT スピードもスロットルを踏めばかなり勇ましいサウンドを奏でる。ただし、巡航状態では風切り音のほうが大きく、エグゾーストノートはほとんど耳に届かない。おかげで快適なクルージングを楽しむことができた。

Bentley Continental GT Speed Convertible|
ベントレー コンチネンタル GT スピード コンバーチブル

西部快走

コンチネンタル GT スピード コンバーチブルに試乗(5)

325km/hは伊達じゃない

見通しのいい直線路で周囲にクルマの流れがないことを確認したポールが、時にスロットルペダルをフロアまで踏みつけることがあった。

全身がシートのなかに埋もれそうになる加速Gが、いつまでもつづく。スピードメーターは急上昇していったが、ポールは右足に込めた力を抜く気配がない。果たして、数秒の間に我々は非現実的なスピードに到達したが、この軽い恐怖を覚えるほどの加速感はコンチネンタルのスタンダードモデルでは味わえないものだ。625psの大出力、そして325km/hの最高速度は伊達ではない。

途中、コロラド川をせき止めるフーバーダムに立ち寄った。

高さ221mにもなる巨大なコンクリートの建造物は、それがいまから80年も前に造られたとはおもえないほど美しく、また偉容を誇っている。

柵からやや身を乗り出すようにしてはるか下方に視線を向けると、ふーっと吸い込まれそうになって足がすくむ。高所恐怖症の私は早々にその場を立ち去った。

Hoover Dam|フーバーダム

ラスベガスでゴール

フーバーダムからラスヴェガスまでは50kmほど。雄大な大自然に囲まれた景色から、まるで街全体がテーマパークのようなネヴァダ州最大の都市までは、およそ1時間の行程でしかない。私とポールは、そこで高価なコンバーチブルカーを無傷のまま返却するとほっと胸をなで下ろし、そして笑顔を浮かべた。

振り返ってみれば、数々のシーンが頭に思い浮かぶ。ひとつの試乗会でこれほど多彩な景色に出会ったのは久しぶりだ。

Bentley Continental GT Speed Convertible|ベントレー コンチネンタル GT スピード コンバーチブル

そして、その長い行程をコンチネンタル GT スピード コンバーチブルで走りきったことに深い満足を覚える。長距離を走ってこそ、その真価がわかる。

その意味において、コンチネンタル GT スピード コンバーチブルは真のグランドツアラーであり、真のベントレーだといえるだろう。

spec

Bentley Continental GT Speed Convertible|ベントレー コンチネンタル GT スピード コンバーチブル
ボディサイズ|全長4,806×全幅1,943×全高1,393mm(全幅はミラーをたたんだ場合 ミラーを含めた全幅は2,227mm)
ホイールベース|2,746 mm
トレッド 前/後|1,667 / 1,663 mm
トランク容量(VDA値)|260 リットル
重量|2,495 kg
エンジン|5,998cc W型12気筒 ツインターボ
最高出力| 460 kW(625 ps)/ 6,000 rpm
最大トルク|800Nm / 1,700 rpm
トランスミッション|8段オートマチック
駆動方式|4WD
タイヤ|275/35ZR21
0-100km/h加速|4.4 秒
燃費(EU DRIVE CYCLE combined)|14.9 ℓ/100km
CO2排出量|346 g/km

           
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