特集|「第5回恵比寿映像祭」の楽しみ方|スペシャル対談 アーティスト・鈴木康広×担当キュレーター・山峰潤也

特集|「第5回恵比寿映像祭」の楽しみ方|スペシャル対談 アーティスト・鈴木康広×担当キュレーター・山峰潤也

「第5回恵比寿映像祭」の楽しみ方

特集|「第5回恵比寿映像祭」の楽しみ方

スペシャル対談 アーティスト・鈴木康広×担当キュレーター・山峰潤也

「記憶をめくる人」 作品解説

山峰 今回の作品は「オフサイト」というガーデンプレイスのセンター広場のなかで、「鈴木さんのノートを公開する」というのがテーマになっています。「記憶をめくる人」という作品なんですが、構造物として巨大化した机を展示します。その上にノートの形をしたスクリーンを置いて、プロジェクターで鈴木さんがノートをめくっている映像を投影する。そこで、ノートと鈴木さんの手と、書き込んだりしている様子が見えると。

鈴木 ガーデンプレイスの広場は、スペースとしておもしろい構造ですよね。地上にいる人と、上から見る人がいて、ふたつの空間をゆるやかなスロープと階段がつないでいる。

山峰 どこからでも見られますから、いろいろ見る位置を変えながら楽しむことのできる作品だとおもいます。あと、昼と夜とでもずいぶん印象が変わりますね。
流されている映像自体は、事前に鈴木さんのほうで撮影したものと、巨大な机の下にもうひとつリアルスケールの机を置いて、鈴木さんがそちらにやってきて、リアルタイムでページをめくる映像とに切り替わるようになっています。

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鈴木康広「オフサイト展示に向けた新作のイメージ・スケッチ」 2012

鈴木 僕がいるかどうかは、上からはわからない。いまめくっているのか過去にめくっているのか、わからない。つまり、リアルタイムでノートに書いているところを見ることのできる構造にもなっているんです。そういうなかで何を書くかは僕もわからない。安定した自分の方法論があるなかで、状況が変わると何をおもいつくのかを、やってみたいなとおもっていて。

山峰  最初のころは中規模なサイズのノートをいくつか点在させて、そこにプロジェクションして見せるっていう話もありました。ボックスを作ってその上にノートの形をした面を作って、そこにプロジェクションするっていう話を詰めようかなっておもっていたときに、いまのスケッチができました。最終的に大きなものにするっていうのは、鈴木さんからの提案でした。

鈴木 「映像祭」なので映像的要素が必要じゃないですか? 大きさがあってこそだとおもったんですよね。そのときに昼間の作品とのかかわり方がより顕在化するというか。

山峰 そうですよね。いくつかあるよりも、シンプルにひとつのものとしてドーンと出したほうが強さがあるでしょうし、インパクトも。そういうところであのサイズになりました。

鈴木 あとはすごく単純なんですけど、あの空間にふさわしいスケール感。単に大きくすることって、場合によってはすごくつまらない話かもしれないですけど、パブリック・スペースという場所で、みんなで見るものは大きい必要があるとおもったんです。はじめは、いまよりもっと大きな机を作る予定で、僕の居場所はすこし離れたところにあったんです。

山峰 最初は15メートル×10メートルでしたよね。

鈴木 それはけっこうおもしろい変化で、離れたところに透明なガラス張りの僕の部屋があって、巨大なテーブルを客観的に見る位置に自分を設定していたんですね。そしたら、その部屋を作るのに、なかなかのお金がかかることがわかって(笑)。そこではじめて予算的な限界があることを知って、机の下に僕がいればいいんだっていうことを思いついて、一体化させました。すごくシンプルになったんです。よくなったとはおもってるんですけどね。

山峰 僕もよくなったとおもっています。その箱のこともそうなんですけど、15メートル×10メートルの机を作るっていうことも、物理的にかなりギリギリのところでした。結局、12メートル×8メートルにしたんですけど、それでもやっぱり建築家とか構造家の人を入れて実現するっていうじつに難しい案件で、プロダクションとしては極限に近い。くわえてプログラミングや音響でもサポートする方々もいる。この規模の展示ができることもなかなかないと思っているので、ぜひ遊びに来ていただきたいですね。

鈴木さんのノートの使い方

鈴木 ノートって、頭から順番に使っていきますよね? でも僕の場合は開いたところをランダムに使うんです。パラパラッとめくって、「これなんだっけ? あ、こういうことか」ってそのとき連想したものを書くんですね。
ただ、じっくり書きこんだものは過去のものになってしまうので、あまりそういうことはせずにサラッと書く。

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──「サラッと書く」ということを心がけているんですか?

鈴木 そうです。アイデアを生み出すためだけではなく、インスピレーションを得るためにノートをつけているんです。体験的に感じたことなんですが、じっくり考えて書きながらおもいついたことってほとんどないんですよ。だから、サラッと書くことで先延ばしにしようとしているんですね。いつかは気づくし、いつかはおもいつくので。むしろ前に書いた絵を見て「なんだこれ…… ああなるほど」とおもって書くときのほうがおもいつくことがある。

山峰 鈴木さんにお話を伺ったときにおもしろいとおもったのは、書き込まないことで記憶のインデックスにしているというところ。もう一度見たときに、その絵やスケッチを描いた瞬間の記憶や体験だったりをおもい出せるように、書いていけばいいとおっしゃっていたんですね。だから、ノートがアイデアを蓄える場所でありながら、アイデアを発火させるためのポイントでもあるというか。すごく多機能的なかかわり方をしているなと。

鈴木 今回の目標も、会期中にめくっていることで、いいアイデアを思いつくことなんです。そこでおもいついたものを見た人が、またそこに立ち合う。そんなふうに、プライベートな瞬間をパブリックなものとして共有できるスタートラインに立てる装置を作ったのかなって。僕としても、みんなが見ているなかでも自然体で書けるように、自分の身体や気持ちを作ることのできる機会になるとおもっています。だから今回の作品は常設にしていただければ(笑)。

山峰 そこについてはノーコメントで(笑)。

鈴木 まあ冗談ですけど(笑)。本当は、常設ってあまりよくないとおもっているんですよ。基本的には仮設がいいですよね。常設にすると作品が飽きられるんじゃなくて、みんなの感覚が麻痺するんですよ。たまに消えないとダメなんです、パッと。

山峰 パッとは消えないですけどね(笑)。ガチャガチャガチャ、ウィーンって感じですけど。

──15日という期間がいいと。

鈴木 それがいいとおもいます。「もの」として作る意味と、「もの」がなくなる意味とが、両方が活きるのは期間限定のものだとおもいますし。

ABOUT
SUZUKI Yasuhiro

1979年静岡県浜松市生まれ。2001年東京造形大学卒業。2001年NHKデジタル・スタジアムで発表した公園の […]