特集|「第5回恵比寿映像祭」の楽しみ方|この11アーティストに注目せよ!

特集|「第5回恵比寿映像祭」の楽しみ方|この11アーティストに注目せよ!

「第5回恵比寿映像祭」の楽しみ方

特集|「第5回恵比寿映像祭」の楽しみ方

Curator’s Picks

この11アーティストに注目せよ!

今年も「恵比寿映像祭」がやってくる! 5回目を迎えるこの映像祭は、世界のさまざまな映像表現を展示する“国際フェスティバル”である。2日間の休館日を除く、2月8日(金)から24日(日)までの15日間、18カ国80人の作品が恵比寿に集結する。ここでは、恵比寿映像祭の“影の主役”として活躍するキュレーターの山峰潤也さんに聞いた、絶対に見逃せない11組のアーティストと、1人のキュレーターを紹介する。

Interview with YAMAMINE JunyaText by TANAKA Junko (OPENERS)

11人それぞれの「日記」のかたち


マンゴ・トムソン

マンゴ・トムソンは、米『タイム』誌の表紙を1923年の創刊号から2009年まで、パラパラ漫画のようにひとコマずつ高速で映し出す映像作品『無題(タイム)』を出展します。最初はモノクロ印刷だけだったのが、だんだんカラフルなイラストレーションへと移行していくんです。さらに時代が進むと、カラーテレビや映画が登場しはじめ、NASAが月に着陸したとか、核戦争がはじまったという話題まで……。次つぎにあらわれる時代のシンボルは、20世紀から21世紀への壮大な時代の変遷を私たちに実感させます。これは、いうならば『パブリックな日記』。社会が蓄積してきた記録ですね」


クリストファー・ベイカー

クリストファー・ベイカーは、今回のラインナップのなかで飛び抜けてキャッチーなアーティストです。日本初出展となる『ハロー・ワールド!または、私は如何にして聞くことを止めてノイズを愛するようになったか』は、ユーチューブなどの動画共有サービスに投稿された、不特定多数のビデオレターを集めた映像作品。そこから見えてくるのは、個人から個人に送られたものが、みんなに公開されてしまうという情報社会の一面。しゃべっている人たちの背後に家のリビングが写り込んでいたりして、彼らのプライベート空間まで垣間見ることができます。個人にとっての『日記』という概念が、すこしずつ変化してきている現状を可視化しよういう試み。それはすごく『いま』的であるとおもいます」


シェイラ・カメリッチ

シェイラ・カメリッチは、ボスニア・ヘルツェゴビナ出身のアーティスト。ボスニア紛争下の惨禍にあった自身の日々の記憶を思い返すように、音や色といった身体に刻み込まれた感覚を手掛かりに追体験していく様子をビデオに収めました。それは社会的な出来事に対する個人的なアプローチでありながら、『社会』と『個人』というものが入り交じった、カメリッチだけの問題ではないものが浮き彫りになってくるという、非常に興味深い作品に仕上がっています」


ジェレミー・デラー

ジェレミー・デラーは、何万匹ものコウモリが生息するというテキサスの洞窟をモチーフにした作品『エクソダス』を出展します。そこで暮らすコウモリたちは、超音波を出しながら『エコーロケーション(=反響定位)』という技術を使ってものを認知しているので、空間を把握する能力が高いんですね。『エクソダス』は、暗闇のなかでも生活できるコウモリたちが、その洞窟に出たり入ったりしている様子を3Dで見せる映像作品です。洞窟や鍾乳洞という場所が、コウモリたちの営みによってどんどん変わっていく。経年変化をしていくんです。それ自体が地球の営みを記録した『日記』と解釈することもできる。もしかしたら、自然というものが持っている、大きな時間の流れを紐解くためのヒントになるのかも知れません」


荒木経惟

「展示は動くものが中心ですが、『写真は日記である』としてセルフポートレートを撮りつづけてきた荒木経惟を筆頭に、写真で綴る『日記』も登場します。今回出展する『写狂老人日記 未来 2011.3.11-2015.4.24』は、『私日記』や『偽日記』などで知られる彼の最新日記シリーズ。1979年から荒木が100歳を迎える2040年に至る、日付入りの膨大な写真のなかから、2011年3月11日を境に過去をモノクロプリント、未来をカラーポジフィルムに分けて構成しています」


川口隆夫

「『自分のことについて語る』をテーマに、2008年から継続している川口隆夫のソロ・パフォーマンス・シリーズ『a perfect life』。自分のことを語ると同時に、その土地ごとの話を汲み取りながらパフォーマンスする川口は、いわば日記を“見せる”アーティスト。今回は2011年に沖縄で制作・公演した『vol.5』を、恵比寿で再編成して公演する予定です。ダムタイプの藤本隆行をはじめ、いろいろなアーティストが携わった作品なので、非常に見ごたえがあるとおもいます。ぜひ足を運んでいただきたいですね」


ベン・リヴァース

ベン・リヴァースは近年、世界各地の映画祭で注目を集めているアーティスト。4つの島々を舞台に、隔離された環境におけるユートピアの可能性を探る“ポスト黙示録”的なSFフィルム『スロウ・アクション』を、4面プロジェクションのインスタレーションで再構成します。『スロウ・アクション』の展示にくわえて、スコットランドの僻地で暮らす初老の男の孤高の日々を、モノクロの16ミリフィルムで捉えた彼の長編作品『湖畔の2年間』の上映も予定しています」


マイク・ケリー

マイク・ケリーは、ブルー・カラー出身の奇才アーティストとして非常に注目されていた人です。2012年1月に急逝した彼を追悼して、いくつか上映プログラムを実施します。まず<追悼マイク・ケリー『MOBILE HOMESTEAD』>と題したプログラムでは、彼の最初にして最後のパブリックアート・プロジェクトとなった『MOBILE HOMESTEAD』を日本ではじめて公開します。インタビューで綴られた故郷デトロイトの人びとと、その日々の生活から見えてくるものとは――。そして、『-下級階級のアナーキスト-マイク・ケリーは何を遺したのか』と題したスペシャルトークでは、1993年におこなわれたマイク・ケリーの初回顧展(ホイットニー美術館)を企画して以来、ケリーの活動を見守りつづけてきたキュレーターのエリザベス・サスマンを招き、彼の活動の軌跡をたどりながら、遺作となった『MOBILE HOMESTEAD』について考察していきます」


鈴木康広

「アーティストが、心に思い浮かんだ情景を逃がさないようにスケッチを描きためたノート。それは、まだやわらかい状態の作品の“種”たちで溢れた、アーティストにとってもっともプライベートな領域です。今回の目玉のひとつ『オフサイト展示(=屋外展示)』に出展する鈴木康広は、そのノートを大胆にも巨大な立体造形物に変えて観客に公開します。設置場所は、恵比寿ガーデンプレイスの中心にあるセンター広場。昼と夜でだいぶ見え方がちがうので、屋外ならではの作品の表情の変化も併せて楽しんでいただきたいですね」

※鈴木康広さんと担当キュレーターである山峰潤也さんのスペシャル対談はこちら


石田尚志

「恵比寿映像祭は、2008年に実施したプレ・イベント『映像をめぐる7夜』によって開幕への扉を開きました。その記念すべき第1夜に登場したのが石田尚志です。その彼が、ふたたびライブ・ドローイングを携えて帰ってきます。描画・描線という営み、実演と記録、過程と成果、時間、そしてパフォーマンス性。『日記』というキーワードを伏線に、自身の記してきた描線をたどりつつ、またあらたに派生していくとどめない思考を、映像上映、トークを織り交ぜながら掲示していきます」


野口靖

野口靖の『レシート・プロジェクト』は、今回の『変り種』として個人的に注目している作品です。まず観客からレシートを回収して、そのレシートにIDマークをつけます。それを使うと、その人がいつどこで買い物をしたのか、あとから調べられるようになる。さらに、それをデータベースに蓄積していくと、恵比寿周辺でこの人とこの人はおなじ空間にいた、なんていうことがわかるんです。ある意味、個人の営みを俯瞰して見るというか。私たちは普段、『Suica』とかいろんな端末を通じて、自分たちの情報を他人に預けています。知らず知らずに吸い取られている。野口の作品は、それをもう一度自分たちの元に引き寄せて『知ること』に対してもっと意識的になろうよと呼びかけます」


One more thing…この人にも注目!

ジェイ・サンダース

ジェイ・サンダースというホイットニー美術館所属のキュレーターがいまして、彼を今回のゲストキュレーターに迎えます。36歳と若手の部類に入るのですが、インディペンデント・キュレート・アワードを取ったり、2012年に開催されたホイットニー・ビエンナーレのキュレーションを、エリザベス・サスマンと一緒に手がけたりと、世界的に注目されている新鋭キュレーターです。彼がキュレーションした上映プログラム『ソングス・フォー・レント-実験映像の現在』が非常に充実していて、ぼくもまだ全部観れていません(笑)。ブルース・ナウマンやジャック・スミスなど、面白い内容になっているので、彼が参加するシンポジウムと併せて楽しみにしていてほしいですね」