進化したレンジローバーに試乗|Range Rover
CAR / IMPRESSION
2014年12月9日

進化したレンジローバーに試乗|Range Rover

Land Rover Range Rover|ランドローバー レンジローバー

砂漠のロールスロイスをモロッコで試す

進化したレンジローバーに試乗

フルモデルチェンジを果たし、パリモーターショーにも登場した、4代目となる「レンジローバー」は、オールアルミボディの採用で最大420kgもの軽量化を果たしたという、衝撃的なニュースが報じられるいっぽう、その外観はあくまでもこれまでのDNAを受け継いだ、SUV界に君臨する王者ならではの落ち着いたもの。その王者が、初の試乗会の地として選んだのは、なんとアフリカ大陸だった! 島下泰久氏のリポート。

Text by SHIMASHITA Yasuhisa

変化ではなく進化

新型レンジローバーの国際試乗会は、北アフリカのモロッコにて開催された。砂漠のロールスロイスとの異名を取るレンジローバーと言えども、プレミアムSUVの最高峰として君臨する今では、砂や泥といったイメージは決して濃くはない。それでも敢えてのこの場所の選定には、本質は何も変わっていないというアピールが込められていたのかもしれない。

ともあれショー会場のライトではなく、陽光の下ではじめて対面した新型レンジローバーは、前後のライトが装飾的になり、フロントウインドウの角度が寝かされ、ホイールベースが伸びて、リアエンドがギュッと絞り込まれて……という具合で、ディテールもフォルムも確かにあたらしい。

しかしいっぽうで、誰の目にも紛れもなくレンジローバーと見えるのも事実。「変化ではなく進化」という今回のモデルチェンジの主題は、見た目にも明確にあらわれている。

Land Rover Range Rover|ランドローバー レンジローバー

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実はショーで見たときには、少々大人し過ぎるんじゃないかという気もしていた。しかし今回、走る姿を見たら、躍動感や軽快感がグンと増していると気づいた。

定番と呼べるクルマのモデルチェンジだけに、本当の評価が決まるのは数年経ってからかもしれないが、とりあえず現時点では、いい仕事が為されたと評していいんじゃないかとおもう。

インテリアも、レイアウトはいつものレンジローバー流。

ただし、スイッチ類の数が大幅に削減されて、非常にスッキリとした。材質も品質もさらに磨きがかけられて、居心地は極上だ。

特に後席は、ホイールベースが伸びたこともあり、レッグルームは120mm、ニールームは50mmそれぞれ増加するなど、快適さに磨きがかけられている。

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砂漠のロールスロイスをモロッコで試す

進化したレンジローバーに試乗(2)

世界のプレミアムカーを見据える

こうした内外装とは裏腹に、中身のほうは大胆なまでの進化を果たしているのが新型レンジローバー。

なかでも衝撃的なのは車両重量が最大、実に420kgも軽減されていることだ。そのボディはSUV世界初のオールアルミ製とされ、これだけでスチール製にくらべて約4割、180kg以上も軽い。そのほかにも各部に軽量素材が使われて120kgが削り取られている。

ディーゼルエンジンを積むTDV6の場合、エンジンだけで従来のTDV8よりさらに100kg以上軽いという具合だが、ガソリンエンジンモデルでも、優に300kg以上も軽くなっているわけだ。


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3.0リッターTDV6 ディーゼルエンジン


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5.0リッター V8 スーパーチャージド ガソリンエンジン

パワートレインはガソリンが最高出力510psを発生する5リッターV型8気筒直噴スーパーチャージドと、375psの5リッター直噴自然吸気の2種類。
ディーゼルも2種類用意されるほか、遅れてディーゼルハイブリッドの登場も予告されている。試乗したのはガソリンエンジンの2モデルである。

走り出して、唸らされたのが静粛性の高さだ。

エンジン音、ロードノイズに風切り音などあらゆる種類の音が従来以上に抑えられていて、室内は心地良い静寂に包まれる。

データによれば、ロードノイズはメルセデス・ベンツ「Sクラス」やレクサス「LS」より静かであり、風切り音については、たとえばポルシェ「カイエン」より3割も抑えられており、アウディ「A8」をも凌駕するという。

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この静粛性という部分に限らず、新型レンジローバーはたんにSUVのなかでどうこうではなく、世界のプレミアムカー達を競合と見据えた開発がおこなわれている。

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砂漠のロールスロイスをモロッコで試す

進化したレンジローバーに試乗(3)

軽やかだ

乗り心地も相変わらず抜群だ。ストローク感たっぷりのサスペンションはしなやかに路面を捉え、決して良い状態とは言えないモロッコの道路でも、雲上に居るかのように快適。車両重量が軽くなり、ボディがオールアルミ化されるなど、乗り心地にとっては不利な条件も、まったく苦にしていない。

いっぽうで身のこなしには軽さがハッキリと反映されている。電動アシスト化された、こちらも軽めの操舵感のステアリングを切り込むと、グラリというロール感とは無縁にクルマが気持ち良く旋回していく。

このあたり、現行レンジローバーだって決して悪くはないのだが、それでも車重が軽くなり、そして重心が大幅に下がると、これだけちがうのかと唸らされることになる。あまりの軽快さにワインディングロードですら退屈にさせないのだから、本当に1台で何でもこなせてしまうなという感じだ。

Land Rover Range Rover|ランドローバー レンジローバー

動力性能も余裕たっぷり。特にスーパーチャージドだと、エンジン自体もちろん力があるが、加速の爽快さにはそれ以上に軽さが効いているという印象だ。

もちろん、全開にすれば仰け反るような加速に圧倒されもするが、それよりも日常域で顕著な、大きく重いものが突き進む感じとはことなる、軽やかな感覚が気持ち良い。8段ATのおかげで巡航中のエンジン回転数は低く抑えられるが、それでも十分なトルク感を味わえるから、ただゆっくり走るのも快適なのである。

Land Rover Range Rover|ランドローバー レンジローバー

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おかげで自然吸気でも、動力性能には不満はない。やはり軽量化の恩恵は大きく、これでも力感は十分以上だし、音も爽快。自分が日本で乗るのに選ぶとしたら、きっとこちらにするだろう。

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砂漠のロールスロイスをモロッコで試す

進化したレンジローバーに試乗(4)

いざオフロードへ

わざわざモロッコにまで行ってきたのだから、オフロード性能にも触れないわけにはいかない。何しろ今回は山間のダートの一本道、砂漠(デューン)、岩場に一般道、高速道路と多様な道を走ることができたのだ。

新型レンジローバーはホイールトラベル量をライバル達を引き離す597mmにまで拡大し、地上高も引き上げられている。しかも「テレインレスポンス」には状況に応じて4WDシステムやエンジン、トラクションコントロールなどの制御を自動的に切り換えるオートモードも設定された。

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状況にあわせて電子デバイスをコントロールする「テレインレスポンス」

舗装路で感じた安心感は、当然オフロードでも生きてくる。ガードレールもろくに無い道を突き進んで行く時には、グラリとロールされるだけでも萎縮してしまうもの。それが無い分、リラックスしていられるのが、まずは大きい。

走破性についても文句などあるはずがない。オフロードについてはアマチュアもいい所な筆者が、下手したら膝上まで埋まりそうな砂地での走りを余裕で楽しめ、またサスペンションが極限まで伸び縮みし、車体がほとんど真横にまで傾きそうな岩場でも、ボディをどこかに打ち付けることなく安心してクリアできてしまったのだから。

走行中の各種制御の状況をディスプレイで確認していると、センターとリアのデフを細かくロックしたり緩めたりと、こちらがただ運転していても、クルマの方で実にきめ細かく制御してくれていることがわかる。基本性能を高め、さらに電子制御を充実させることで、オン/オフを問わない懐深い走りを実現しているのである。

レンジローバーの真価

こんな具合で、今回の試乗中はただただ感心し、圧倒されたという記憶しかない。ボディ構造をはじめ、革新のテクノロジーをこれでもかと投入しながらも、それをこれみよがしな変化に結びつけるのではなく、あくまでもレンジローバーとして真っ当な、しかし格段の進化に結びつけた、ブレの無いコンセプトと徹底的な開発姿勢には、深く頭を垂れるのみである。「ベストを、さらに進化させた」と胸を張っていた開発陣の自信満々の表情にも大いに納得させられてしまった。

とりわけオフロード性能にかんしては、これほどのものを実際に必要としている人などオーナーの中でもほんのひと握り、いや、それほども居ないだろう。

しかしレンジローバーの価値は、そうした圧倒的な性能をもつクルマを、至極快適に普段使いできることにこそある。この贅沢さは、飾り立てただけの高級車では決して得られないもの。敢えてモロッコという地を試乗の舞台に選んだのは、我々にそれを再認識させたいというおもいも、きっとあったにちがいない。

Land Rover Range Rover|ランドローバー レンジローバー

新型レンジローバーは2013年早々にも日本上陸を果たす予定だ。誰も届かない高みへと達したその走り、馴染みのフィールドで試すのが楽しみである。

spec

Land Rover Range Rover|ランドローバー レンジローバー
ボディサイズ|全長4,999×全幅1,983×全高1,835 mm
ホイールベース|2,922 mm
トレッド 前/後|1,690 / 1,683 mm
アプローチアングル|26.0度(スタンダードモード)/34.7度(オフロードモード)
デパーチャーアングル|24.6度(スタンダードモード)/29.6度(オフロードモード)
ランプブレイクオーバーアングル|20.1度(スタンダードモード)/28.3度(オフロードモード)
渡河水深|900 mm
最小回転半径|6.16メートル
トランク容量|909-2,030リットル + アンダーカバー下550リットル
重量|2,330 kg
エンジン|4,999cc V型8気筒 DOHC スーパーチャージャー、可変バルブタイミング機構付き
最高出力| 375kW(510ps)/ 6,000-6,500 rpm
最大トルク|625Nm/ 2,500-5,500 rpm
トランスミッション|8段オートマチック
駆動方式|4WD
サスペンション 前|マルチリンク式エアサスペンション
サスペンション 後|マルチリンク式エアサスペンション
0-100km/h加速|5.4 秒
燃費(NEDC値)|13.8 ℓ/100km
*5.0リッターV8スーパーチャージャーモデルの数値

           
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