Japan Craft Sake Company主催「The Master of Craft Sake」VOL.5 黒龍酒造|INTERVIEW

Japan Craft Sake Company主催「The Master of Craft Sake」VOL.5 黒龍酒造|INTERVIEW

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The Master of Craft Sake VOL.5「黒龍酒造」

8代目蔵元・水野直人氏インタビュー(2)

―― 海外での日本酒人気は高まっていますが、国内でのお酒への注目度は変わってきているとお感じになりますか?

水野 人口が減少傾向にあり、アルコール全体の消費が減っていますが、地方の蔵元さん、いわゆる地酒メーカーさんがどんどん良い日本酒を作ってがんばっていますから、評価は高まっていますね。今、若手の蔵元、地方の蔵元さんが個性を打ち出してきて、いろいろなお酒を造り始めていて、現代的な酒造りというより、昔ながらの酒造り、いわば原点回帰のような酒造りを行っています。地産地消を意識して、ワインのように地元でとれるお米を中心にして造ったり、酵母や酒米を開発したりすることも盛んです。華やかな香りのわかりやすいお酒が流行し、皆が同じようなお酒を造っていた時期もありましたが、ここ最近は多様化していて、それぞれの蔵元の方針がきちんと固まってきたと言えます。

―― 日本酒文化が熟してきたのでしょうか。

水野 そうですね。面白い時代になってきたんじゃないかと思います。黒龍酒造について言えば、お酒の味自体はある程度確立しています。福井は越前ガニが有名で、白身魚がたくさんとれる地域ですから、繊細な甘みを持った淡白な食材が多い。そういった食材を生かすような日本酒にしたいと、お酒自体に香りと味が強調されるものではなく、上品で柔らかくほんのりとうまみが広がり、それでいてあと味のキレがすっとしている、そんなお酒を目指しています。お料理に寄り添うといったイメージですね。そのコンセプトからは、今もブレていません。今テーマとして掲げているのは、日本酒とお料理を一緒に楽しむ文化を作っていこうというもの。そのためには、ワインのように味や種類によってグラスを変えるといった演出も必要です。オリジナルのグラスや盃、燗酒をする道具、例えば錫のとっくりなどを作っているのはそれが理由です。

―― お酒を味わう道具が増えれば、楽しみも広がりそうですね。

水野 江戸時代にはお酒を楽しむいろいろなツールが、たくさんありました。当時は、お酒は常温で飲むもので、温めるというひと手間を加えた燗酒はおもてなしのお酒だったんです。料理屋にもお燗番がいたほど。そんな文化を復活させ、利便性ではなくひと手間かける楽しみをもっとご紹介できたらと思っています。最近はワイングラスでゆっくり日本酒を飲むというスタイルも人気です。日本酒を存分に楽しめるさまざまなスタイルをご提案して、“酒道”を作っていけたらと思っています。

―― 水野さんご自身はどんなふうに日本酒を楽しんでいらっしゃるのですか?

水野 私はお燗が多いですね。お燗は冬場だけのものではないんですよ。本当に日本酒がお好きな方は1年中楽しんでいらっしゃいます。お燗用ではなくても、大吟醸をはじめ何でもお燗にしてしまうんです。熱燗をさましながら、少しずつ飲むのもおすすめです。温度の違いで、味が変化していくのを楽しむこともできます。

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―― 黒龍酒造さんの今後は?

水野 大吟醸の祖であり、酒造りの師である私の父、先代(正人)の名前から一文字とって、正龍蔵という酒蔵を作りました。さらに製造量を増やすためではなく、より良い日本酒を造るため、様々なチャレンジを行うための蔵です。日本酒の多様性のため、研究を続けなければ、良き文化を継承することはできないと考えています。つまり伝統を守ることとは、新しいことを取り入れて品質を高めていくこと。和食と合うのは当たり前ですから、どんな料理をいただくときでも、日本酒がチョイスのひとつとして考えてもらえるよう、さらに良い酒を造っていきたいと思っています。日本酒はもっと評価されるべき素晴らしい文化。その素晴らしさをもっとお届けできるよう、今日のような会に参加し、客観的な視点を養っていきたいですね。今日のように、いろいろなお料理をわせて、同じお酒が温度変化によってどれだけ変化するか、合わせるお料理でどれだけ日本酒の楽しみ方がかわるか、感じていただけたら嬉しいです。

インタビューを終えて

今回、「ひのきざか」の和食を合わせたのは、前菜に合う透き通るような味わいの「黒龍しずく」、淡白な白身魚の旨味を引き立てる瑞々しい「黒龍 二左衛門」、貝やうに、いくらに合うなめらかな「黒龍 石田屋」。そして焼き物のような強い味の料理にも負けない華やかでリッチな「黒龍 八十八号」、さらに、燗酒である九頭龍の「大吟醸」と「純米」。食前酒としてふるまわれたマスカットのような爽やかな香りの「黒龍 吟醸ひやおろし」を含め、7種の飲み比べを行った。いずれも、きれいで、なおかつ熟成による奥行きのある味が、つつましくも印象的な日本酒ばかり。決して料理の味を損なわず、むしろ引き立てる味わいで双方の美味がふくらんだのは言うまでもないが、やはり一番驚いたのは、繊細な白身魚と「二左衛門」とのマリアージュ。これほどまでに、白身のあま味が引き出される組み合わせは初めてのこと。うに・いくらとの「石田屋」、漬け鮪のような濃厚な味わいと燗酒との組み合わせも至福で、もうお酒なしに料理を味わうのはもったいないと思うほどの豊かさを感じさせる調和だった。

問い合わせ先

Japan Craft Sake Company

http://www.craftsake.jp/

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牧口じゅん

牧口じゅん|MAKIGUCHI June 共同通信社、映画祭事務局、雑誌編集を経て独立。スクリーン中のファッションや食、音楽など、 ライフスタイルにまつわる話題を盛り込んだ映画コラム、インタビュー記事を女性誌、男性誌にて …