ベントレー クオリティの番人|Bentley
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2017年8月24日

ベントレー クオリティの番人|Bentley

BENTLEY|革の世界とワックスクレヨン

ベントレー クオリティの番人

ラグジュアリーモデルにおけるインテリアは、オーナー自身が常に目にし、触れる部分として大変に重要である。とくにレザーは、素材そのものが全体のクオリティと直結するため、マテリアルの段階から慎重な品質管理が不可欠だ。ベントレーでは、そのために専門の職人が従事し、ベントレー クオリティを維持しているという。

Text by SAKURAI Kenichi

職人技から生まれる高い品質

ご存知のように、フランスのラグジュアリー シューズ ブランド、ベルルッティには、近代ポップアートの巨匠、アンディ・ウォーホルの名を冠したローファーがラインナップされている。その名もアンディというこのラインは、1962年に当時まだ見習いだった現当主のオルガ・ベルルッティにアンディ・ウォーホルがビスポークでオーダーしたモデルに端を発する。

オルガはトゥの尖ったモダンなローファーをデザインしたが、この靴の片方には問題があった。レザーに大きな筋が入っていたのだ。彼女はこの欠陥ともいえる筋をアンディに「有刺鉄線をものともしない勇敢で気の強い牛のレザーを使用した」と説明。そんなオルガが語ったエピソードを気に入ったアンディは、以来「気の強い牛の革から作った靴しか履かない」と宣言した……というエピソードが残されている。

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この逸話が真実かどうかはともかく、顧客がアンディ・ウォーホルでもなければ一般的にはキズの入ったレザーは製品として使いものにはならないと相場が決まっている。もちろん、最高級の素材を使用するベントレーでは、その素材のセレクトや管理はとても厳しいものになっている。

そんなベントレー品質をコントロールしているのが、2名のレザー インスペクター(検査官)だ。アラン・ライダー(Alan Ryder)とデイブ・レッグ(Dave Legg)は、細かなストレッチマークはもちろんのこと、革の表面に浮かび上がる細かな静脈の筋までを完璧にチェックする。

その際に使用されるのがワックスクレヨン。オレンジ色のクレヨンでマーキングされた部分は、いかなる場合でも使用不可。薄いグリーンのクレヨンでマーキングされたキズと呼ぶにはあまりにも目立たない筋などは、それでもインテリアの中でもオーナーの目に触れない部分に使用される。

少しでも気になるレザーを使用しなければ、より高級ではないか。確かにそうも言えるが、できるだけ廃棄を少なく、限りある資源を有効に利用するのもベントレー流だ。

BENTLEY|革の世界とワックスクレヨン

ベントレー クオリティの番人 (2)

ベントレーのクオリティと直結する仕事

毎年ベントレーでは、70,000頭の牛から加工された本革を使用している。ベントレー各車のインテリア デザイン形状にカットされ、ステッチを施し、フィッティングされた革は、北ヨーロッパの契約牧場のものだ。各牧場は温暖な気候の地域にあり、これは昆虫の咬傷や牛のストレスを減らすことに貢献する。有刺鉄線フェンスがないのも特徴で、これは革の傷を減らす効果をもたらす。アンディ・ウォーホルの好んだローファーのように、そもそも有刺鉄線がないので勇敢な牛かどうかも分からない。

レザー インスペクターは、サドル型の検査テーブルを操作し、強力なライトの下で革を精査し、クレヨンで問題のある箇所をマークする。「良い目こそが実際に私たちが持っている主要なツールです」とデイブは説明する。もちろん永年培った経験やノウハウも重要である。

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デイブとアランは作業中の革を360度回転させ、我々が到底気づかなかったこれまでに見えなかった小さな欠点を指摘した。「シェーディング技術も重要です」と彼は付け加える。特に、明るい色の革では光が強く反射し、いわゆる雪盲(冬のゲレンデでまぶしくて前がよく見えないのと同じ状態)に注意しなくてはならない。

彼らは素材となる革を検査し、1日に80件以上の不具合を単に見つけるというが、それはレザー インスペクターの仕事の半分に過ぎないという。本当のスキルは、内装の各部位に合わせて皮革を引き伸ばした際、どのように皮が張られ、どんな表情を見せるのかを判断することにある。トリムの繋ぎ目が自然になるよう、表皮の均一化を図るのも重要だ。

アランは「我々が生産時点から吟味した最高品質の革を扱っているにもかかわらず、それが天然由来の製品である以上ストレッチマークや傷、シミのようなものを完全に排除することは不可能です。そうした隠れたキズや欠陥を発見し、いかに均一化されたクオリティの高いレザーとして内装に使用するか。この見極めがベントレーのクオリティと直結します」という。

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Bentley Mulsanne Speed

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チェックが終わったレザーは、必要な形状を抽出する最も効率的な方法を持つレーザーガイド切断機によってクレヨンのマークを検出、切り取られていく。いったん内装制作のプロセスに入ってしまえば革の精度を再検査するのは容易ではなく、取り返しが付かない。いかに自然が生んだ製品であるとはいえ、ユーザーはインテリア内に欠陥を見つけることを好むはずがない。小さなシワを持つレザーは、シートの中央に置かれオーナーの目に触れることなくなどは決してないが、構造的なアンダーパーツや固定用のストラップとして無駄なく使用される。

ふたりの革のレザーインスペクターのクオリティに対するこだわりは、時には個人の生活にも影響を及ぼす。アランは「ある日妻とふたりでソファを買いに行った際、家具店を一日まわったものの、私はついに気に入るソファを見つけることができませんでした。それどころか、あらゆる種類の欠陥を店の売り手に指摘したため、それ以降妻は私がショッピングに付いて行くことを禁止しました」と、笑う。

問い合わせ先

Bentley Call

0120-97-7797

http://www.bentleymotors.jp/

           
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