連載|朝倉奈緒のMUSIC PLAYLIST Vol.6  暑い夏に聴きたい!涼むアンビエント・ドローンミュージック5選
LOUNGE / MUSIC
2017年7月28日

連載|朝倉奈緒のMUSIC PLAYLIST Vol.6 暑い夏に聴きたい!涼むアンビエント・ドローンミュージック5選

連載|朝倉奈緒のMUSIC PLAYLIST Vol.6

夏におすすめのアンビエント&ドローン5タイトル

「ambient=環境」という解釈でいえば、アンビエント・ミュージックは、生活の中で、誰もが必然的に耳にしている音楽なのかもしれません。ドローン・ミュージックはアンビエントと密接に関わり、普段耳にすることは少ないかもしれませんが、どちらも精神をリラックス(または覚醒)させ、日常と違った世界を見せてくれる、感覚的な音楽です。近年注目が高まる“マインドフルネス”=瞑想をするのには最適なものも。暑い日にこそ、ゆったりと流れるアンビエントに身を委ね、ホラー映画を観ているかのようにスリリングなドローンミュージックを聴いて、ぜひクールダウンしてください。

Text by ASAKURA Nao

アンビエント巨匠の最新実験作から
アヴァン・クラシカル、ノスタルディックなアンビエント・フォークまで

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photo by Brian Eno

BRIAN ENO『Reflection』
日本ではあまり馴染みのない「アンビエント」ミュージックでも、Brian Eno(ブライアン・イーノ)の曲ならどこかで耳にしたことがあるだろう。『Reflection』は、巨匠が1975年から取り組んできたアンビエント・シリーズの最新作。提唱者である彼自身、今現在「アンビエントという言葉の意味を理解しているとは言い難い」というのだから、彼の作品も、他の全てのアンビエント作品も永久に「実験作」ということになるのかもしれない。Enoは「流れる川のほとりに座っているかのように異なる展開を生み出しながら、流れ続ける音楽を作ることが、アンビエントミュージックを手がけることになった当初の意図だ」と述べている。止めどなく流れ続ける54分の『Reflection』をもって、それを体感することができるはず。


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Tim Hecker『Love Streams』
カナダ出身のサウンド・デザイナー/コンポーザー、Tim Hecker(ティム・ヘッカー)。カナダ政府で政治アナリストを務めたり、大学で「音の文化」に関する専門家として講義を行うなど異例のキャリアを持つ。昨年英名門”4AD”からリリースした最新作『Love Streams』は、米音楽メディア“Pitchfork”他、各方面から高く評価され、今音響エレクトロニック・アンビエント・ドローンシーンにおいて最重要アーティストと囁かれている。日本でも2014年のTAICOCLUBに出演を果たし、2度渋谷WWW(X)で公演。時に耳を塞ぎたくなる(?)ような止めどない音の波と会場に充満したスモークを体中に浴びるようなライブパフォーマンスは中毒性があり、毎度コアなファンが殺到。ドローン初心者には少々ヘビーかもしれないが、ハマれば電気マッサージのような心地よさが味わえる。


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Robert Lippok『Open Close Open』
ベルリンで活動するエレクトロニック・ミュージック・グループ「To Rococo Rot」の一人で、ソロ名義でもイノベーティブな電子音楽作品をリリースしてきたRobert Lippok(ロバート・リポック)。東京の良質エレクトロニカ・レーベルflauからクリア・ヴァイナル仕様のLPで再発される『Open Close Open』は、今ファッション業界で最も影響力があるとされる写真家・Tim Walkerの短編映画「The Lost Explorer」のサウンドトラックとして、また収録曲の「Close」はルキノ・ヴィスコンティの「ヴェニスに死す」にも使用されており、2000年代のミニマル・ミュージックを語るには外せない秀逸作。『Open Close Open』とタイトル付けされた本作は、生活と自分自身との隙間を埋めたり距離を取ったりし、日常では固く閉ざされている知覚の扉をほんの少し開ける手助けをしてくれるようだ。


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高田みどり『鏡の向こう側』
アンビエント・ミュージックシーンで活躍する、数少ない日本人女性アーティスト高田みどり。1977年にミュンヘン国際音楽コンクール打楽器部門3位に入賞し、翌年ベルリン・フィルハーモニーでデビューという華々しいキャリアをもつ世界的な打楽器奏者だ。1983年にLPでリリースされ、入手困難となっていた彼女の初ソロ作品『鏡の向こう側』が6月に再発、CD化もされる。マリンバ、ゴング、オカリナ、ビブラフォンなど多彩な楽器が絡み合う複雑なレイヤーは、ダイナミズムの中に女性ならではの繊細さを携え、意識を音の渦にのみこんでいく。「時間と体、体の内部に向かうことに対し体がどう反応するか」をテーマ に、彼女が全魂を込めて放った傑作は、30年以上経っても未だ色褪せることなく、前衛的だ。


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asuna『Tide Ripples』
国内のみならず、欧米を中心とする海外レーベルからもオリジナル作品を多くリリースし、世界的に評価されている希少な日本人音楽家、asuna(アスナ)。リードオルガンを使ったドローン作風や、カシオ・トーンをテーマにしたコンピレーションをミニCD(8センチCD)にて制作するなど、その実験的なリリーススタイルが特徴である。最新作『Tide Ripples』は、元ストロオズの加藤りまがハミングヴォーカルに参加しており、ノスタルディックな気配に酔いしれながら、一曲22分強の物語に陶酔できるアンビエント・フォーク。ノイズ系のドローンを苦手とする人、エレクトロニカ、ウィスパーボイス好きの人にもおすすめの、日本人の琴線に触れる名作。


朝倉奈緒|ASAKURA Nao
東京都・品川区出身。大学卒業後、モード誌『marie claire』の広告営業、レコード会社勤務、主婦雑誌の編集を経て出産を機にフリーランスに転身。編集・ライター・PRに携わる。カルチャー、フード、旅を中心に執筆、エレクトロミュージックのPRを担当。学生時代に世界28ヵ国放浪&日本列島ヒッチハイクの歴有り。


           
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