ジェフ・ミルズ×東京フィルハーモニー交響楽団の東京公演第2弾イベントレポート|MUSIC

MUSIC|ジェフ・ミルズ×東京フィルハーモニー交響楽団の東京公演第2弾イベントレポート

©正木万博

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MUSIC|ジェフ・ミルズ×東京フィルハーモニー交響楽団コラボ公演第2弾

エレクトロとクラシックが織りなす音楽の宇宙とは

2017年2月25日(土)、渋谷のBunkamuraオーチャードホールにて、「爆クラ!presents ジェフ・ミルズ×東京フィルハーモニー交響楽団×アンドレア・バッティストーニ クラシック体感系II-宇宙と時間編-」が開催された。このイベントは、昨年3月に同プロデューサーによって開催され、多くの反響を呼んだ「クラシック体感系-時間、音響、そして、宇宙を踊れ!-」の第2弾として、ジェフ・ミルズの最新作『Planets』のリリースを機に日本に再上陸したエレクトロニック・ミュージックとクラシックの異色なコラボレーションプロジェクトである。今回も前売りチケットは完売し、当日券の販売はゼロ。世界的なエレクトロニック・アーティストが新たに発表する史上最大の野心作をライブ体験しようと、約2000人が会場に集まった。

Text by ASAKURA Nao

前半目玉は100台のメトロノーム演奏、「The Bells」はタブラ奏者U-zhaan氏がゲストで参加

第一部の演目は「Short Ride in a Fast Machine / ジョン・アダムス 」、「月の光 / ドビュッシー」、「ポエム・サンフォニック(100 台のメトロノームのための / リゲティ) 、「BUGAKU(舞楽)より第二部 / 黛敏郎 」、そしてジェフ・ミルズの大ヒット・アンセム「The Bells」。「爆クラ!」のプロデューサーであり、本イベントの発起者である湯山玲子氏が前回と同様MCとして登場。存在感抜群の佇まいでユーモアを交えながら、クラシック初心者にもわかりやすく解説をしてくれる彼女は宇宙飛行のナビゲーターである。

今回、ジェフ・ミルズと東京フィルハーモニー交響楽団の共演に、次世代のクラシックを牽引していくと期待される若干29歳の指揮者、アンドレア・バッティストーニが参戦。切れのあるエネルギッシュな動きで、経験豊富なオーケストラ陣たちを堂々と導いていく。

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ミニマルなアプローチがエレクトロニック・ミュージックにも通じる「Short Ride in a Fast Machine」でダイナミックに幕開け、印象派ならではの浮遊感あるピアノ曲「月の光」オーケストラ編曲版により、フワフワと羽毛布団に包まれたような心地良さに浸り、続いて爆クラ!presentsのお楽しみ、問題作実演コーナー(前回は「ジョン・ケージ「4分33秒」で、無音の演奏というスリリングな時間体験をした)は「ポエム・サンフォニック(100 台のメトロノームのための)」。バッティストーニ氏が持つメトロノームをはじめ、奏者たちの足元にそれぞれメトロノームが置かれ、それら100台の「カチカチ」という響きのみで演奏をする。

湯山氏はその音を雨の音や人の心臓の音に例えていたが、だんだんと止まっていくカチカチ音に、緊張とリラックス感が混ざり合った不思議な空気が会場に立ち籠めていた。日本の独特な伝統的音楽の響きがオーケストラの奏でる音のうねりで見事に表現された「BUGAKU(舞楽)より第二部」を終えて、前半のラスト曲、ファンお待ちかねの「The Bells」。これには、タブラ奏者のU-zhaan氏がゲストで参加。

バランスの統一が難しい電子音とオーケストラのリズムに、民族楽器タブラのタカタカという生音を見事に融合させ、異色の3ジャンルの音世界を体感させてくれた。

『Planets』日本初公演、客席に奏者を配置し、サラウンドサウンドを生演奏で表現するという演出も

休憩をはさみ、いよいよ本イベントのメイン演目である『Planets』が始まる。ジェフ・ミルズが初めてオーケストラと演奏するために書き下ろした本作の、日本初公演の瞬間に、会場内が緊張感と期待でいっぱいになる。

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©正木万博

『Planets』は、太陽系の惑星「水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星」を科学的データにもとづいて制作した9つの曲と、惑星と惑星の間の闇=9つの「ループトランジット」から成る壮大な交響組曲である。曲間そのものが一つの曲(ループトランジット)であり、約60分通し演奏となる。

公演では曲の移り変わりを表現するために照明に趣向がこらされていた。惑星から惑星へ移動する度に、その惑星を特徴付けるカラーやライティングのパ

フォーマンスが展開され、視覚的な要素も加わってこの宇宙旅行をよりリアルに、よりファンタスティックに演出してくれた。

「Introduction」による壮大な幕開け後は、オーケストラの各パートとジェフ・ミルズによる電子音が主客を逆転したり、互いに絡まり合いながら各惑星を表現していく。中盤のクライマックスは「Jupiter」。生楽器が一斉にダイナミックな旋律を奏で、オーケストラの魅力が存分に発揮された。

第二部で、おそらく会場のほとんどの人が経験したことのないオーケストラの演出を体験したのは「Saturn」だろう。この曲では土星の環を表現するために、客席にトランペットとホルンを4組配置し、Blu-rayでは5.1chで表現されたサラウンドサウンドを生演奏で表現するというスペシャルな演出が行われた。また、ひと組のフルートとバスクラリネットを2階席に配置し、土星の衛星であるタイタンを表現するという演出もあり、生音に包み込まれるような感覚に、観客が皆思わず酔いしれた。

「Uranus」以降は演奏のタイミングを絶妙にずらすことにより、ディレイのような音響効果を生演奏で実現したりと、ミニマルかつ電子音楽的なアプローチの楽曲が続き、ミステリアスな曲調になっていく。CD音源を聴いた際には電子音であろうと思われた部分が、実は楽器による生演奏であったなど、実際の演奏を見て驚かされる部分が後半には端々に見られた。電子音とオーケストラのサウンドの境目がわからなくなるように追求したと発言していたが、そういった意味では見事に成功していたと言えるのではないだろうか。

Page02. 瞑想状態により、宇宙と時間軸の旅をする