トヨタの最新コンパクトSUV「C-HR」に試乗|TOYOTA
CAR / IMPRESSION
2017年1月31日

トヨタの最新コンパクトSUV「C-HR」に試乗|TOYOTA

TOYOTA C-HR|トヨタ C-HR

トヨタの最新コンパクトSUV「C-HR」に試乗

プリウス以上ともいえる出来のよさ

2014年のパリモーターショーで発表されたコンセプトカー「C-HR Concept」のイメージを色濃く残す斬新なスタイリングが特徴のコンパクトSUV「C-HR」。OPENERSではプロトタイプの試乗記はすでに掲載済みだが、このたび生産モデルを試乗する機会に恵まれた。

Photographs by ARAKAWA MasayukiText by OGAWA Fumio

トヨタニューグローバルアーキテクチャー(TNGA)採用第2弾

トヨタの世界戦略モデルともいえる「C-HR」。個性的なスタイルが目を惹くが、しっかりした走りも魅力である。いいクルマを作ると意気込みをみせるトヨタ肝煎りのSUVなのだ。

2016年12月14日に発売されたトヨタC-HR。プロトタイプの試乗記は既報ずみだが、量産車に乗ることができた。

C-HRは「プリウス」と基本プラットフォームを共用したSUVだ。全長は4,360mmとコンパクトだが、全高は1,550mm。存在感がある。ディメンションだけでなく、ディテールまで凝ったスタイリングが際立ったキャラクターとなっている。

エンジンからみたラインナップは2つ。1.2リッター4気筒ガソリン搭載モデルと、1.8リッター4気筒エンジンに電気モーターを組み合わせたハイブリッドモデルだ。前者は4輪駆動となる。

TOYOTA C-HR|トヨタ C-HR

TOYOTA C-HR|トヨタ C-HR

C-HRの特徴は「ディスティンクティブ」とメーカーが定義するスタイリングにある。際立つという意味の英語だ。観る時間帯や車体色によって印象はだいぶ異なるが、夕方など張りのある面と大胆なラインが大きく目を惹く。

それだけではない。C-HRはトヨタ自動車の開発陣にとって記念碑的な存在であるという。

トヨタ ニュー グローバル アーキテクチャー(TNGA)と呼ばれる新世代のクルマづくりプロジェクトによって開発されている。それが記念碑的存在の理由だ。第一号はプリウス。ほぼ並行して開発されたC-HRはさらに徹底した作り込みがなされたと謳われる。

TNGAは簡単に説明するのがむずかしい概念で、理想的なクルマを作るために、各部署が横のつながりをもってプラットフォームを開発することが含まれる。

「これがその結果です」と開発者に言われて乗り出したC-HR。走り出したら降りたくなくなる魅力があった。

TOYOTA C-HR|トヨタ C-HR

トヨタの最新コンパクトSUV「C-HR」に試乗

プリウス以上ともいえる出来のよさ (2)

違和感とか不満とかとは無縁なクルマ

トヨタC-HRは2車種が同時発売された。1.2リッターターボエンジンにスーパーCVT-iと呼ばれる無段変速機を組み合わせたモデルと、1.8リッター ハイブリッドだ。

トヨタ車にちょっと詳しいひとにはおなじみのパワートレインである。それを聞くと乗る前にどんなクルマか分かったような気にならないだろうか。

C-HRは、しかし、乗ると従来のモデルとは明らかに一線を画していると分かる。ひとことでいうと、じつにナチュラルなのだ。

ナチュラルという表現を使ったのは、気になるところがほとんどなく、ドライバーと一体化する感じがあるからだ。「パワーがもう少しあればいいな」「ステアリングホイールの感覚があやふやだな」「スポーティなかわりに乗り心地が硬すぎる」などといったネガティブな印象とは無縁である。

TOYOTA C-HR|トヨタ C-HR

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少々分析的にいうと、走り出したとたんに、しっかりしたステアリングホイールの操舵感と、エンジンのトルクの出方と、上手な変速タイミングの設定と、そしてクルマの動き、それらが統合されているのに感心する。

べつの言い方をすると、違和感とか不満とかとは無縁である。クルマが好きなひとなら気分がよくなるはずだし、そうでもないひとならクルマから降りたくなくなるのでは。そんなふうに思わせる。

いまのプリウスはこれまでの3代とは明らかに一線を画した出来のよさである。クーペ的なスタイリングもさることながら、運転の楽しさで燃費のためだけに買うのでなく、クルマ好きが積極的に選ぶ理由を持っている。

同じプラットフォーム(ホイールベースなどは違うが)を使うC-HRはさらにクルマとしての出来がよい。

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トヨタの最新コンパクトSUV「C-HR」に試乗

プリウス以上ともいえる出来のよさ (3)

価格以上の完成度

トヨタC-HRの魅力は違和感を感じさせないこと。先にそう書いたように、操縦していて嫌な感じが皆無のモデルだ。

しっかりしたハンドリングといい、加速感といい、静粛性といい、プリウス以上ともいえる出来のよさだ。それでいて価格は約250万円(ハイブリッドだと260万円台から)なのだから、驚くプロダクトが出来たことになる。

「操縦性は徹底的に煮詰めてどんな状況でも不安なく高い速度を維持しながら走れます。欧州の道でも安心して乗っていられるクルマに仕上がった自負があります」

C-HRの開発の総責任者がそう語るのも誇張ではない。そう思わせるほど説得力のあるフィールが身上だ。

コーナリング性能にとって重要な重心高はそれほど低くできないSUVだが、じつに上手なところでうまくバランスさせている。小さなカーブでも気持ちよく進入して、途中から出口に向けては安定した姿勢を保つ。

TOYOTA C-HR|トヨタ C-HR

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カーブを抜けていくときはしっかりとトルクが出て、気持ちよく加速していくのは感心させられた。185Nmの最大トルクが1,500rpmから4,000rpmと広いバンドで出る設定もあるだろうし、無段変速のよさを活かした変速機の設定も上手なのだろう。

1.2リッターで力不足感がないのに感心したが、同時に欧州で販売されている2リッターエンジンと前輪駆動の組み合わせというのにも大きく興味を惹かれたほどだ。1.5リッターぐらいでもいいな、などとないものねだりがしたくなる素地がある。

コンパクトSUVだとサスペンションのためのスペースが充分に確保できない場合がある。乗り心地が犠牲になりがちだが、C-HRは例外だ。きちんとサスペンションが上下にストロークして嫌な振動はない。快適なのだ。

スタイリングは若者向けの印象もあるけれど、こんな感じのクルマがウケそうだから、という安直な発想で企画されたモデルではないようだ。いや、こういうクルマが欲しかったんでしょう、と言われれば、まさにそのとおり、と答えることもできる。

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プリウス以上ともいえる出来のよさ (4)

大人が乗るのにやや勇気が必要なスタイリング

トヨタC-HRに不満があるか。そう考えると、僕としてはあまりない。強いてあげると、イメージだろうか。

この手のスタイリングは若者や主婦向けとする世間の風潮のなかで、いい歳した大人が乗るのにやや勇気が必要というのが惜しい。

際だったスポーツ性というより落ち着きを感じさせるC-HRの走りは、輸入車に親しんでいるひとにも受け入れられるものだ。

日本と豪州向け以外はトルコ工場で生産して世界中に輸出するC-HR。個性が重要な欧州市場で存在感を発揮するためには、印象的なスタイリングが必要だったのだろう。

ダイヤモンドの形状がスタイリングのモチーフとされる。プロファイルといって側面をみると前後のフェンダーが一種のプリスター(大きなふくらみ)として成形されており、一目で印象づけられる個性となっている。

フロントマスクも吊り目のヘッドランプに複雑な形状のエアダム一体型バンパーが組み合わせられていて個性的だ。フロントフェンダーのふくらみがフロントマスクの一部とまでなっているのも目を惹く。

先に触れたように夕暮れなど一定方向から強い光源があたったとき、エッジと曲面で構成されたC-HRのスタイリングはひときわ印象的だ。よく出来ていると感心するほどである。

TOYOTA C-HR|トヨタ C-HR

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ただし実際のクルマの運転感覚は、スタイリングが想起させるほどスポーティなものではない。操縦したときの個性とスタイリングのマッチングにやや違和感があるのが、C-HRに乗りたいオジサン世代には惜しいのだ。

後席用ドアの外側のオープナー(ハンドル)が変わった位置についているのもC-HRのスタイリング上のアイコンとなっている。ただし奇をてらってのことではないと説明される。

「車体側面を一文字に走るキャラクターラインの意匠を尊重するために従来の位置に配することはやめました」とはデザイナーの説明だ。

実際は「子どもでも手が届く位置に」「ドアハンドルとすぐに認識できる形状」「手をはさまれない」「ぶら下がっても壊れない」などクオリティの管理が大変なようだ。ただ欲をいえば全体のスタイリングの印象に対して、角張った形状が残念。もうひとふんばりといわせてもらいたい。

TOYOTA C-HR|トヨタ C-HR

TOYOTA C-HR|トヨタ C-HR

同様のことはインテリアのディテールにも感じられた。たとえば上級仕様に用意されるレザーとファブリックのコンビネーションによるシート表皮。赤が強く入ったブラウンの色調といい、ステッチでなくプレスによるダイヤモンドパターンといい、狙いがわかりにくい。

使い勝手の面では変速機のセレクターレバー。手のひらで包みこむようにして使う凝った形状なのだけれど、硬い素材のためいきおいよく握ろうとするとやや痛い。それにロック解除ボタンが指3、4本で引き上げる構造で、これもことさら力が必要で使い勝手は今ひとつと感じられた。

こんなことを書きたくなるのは、しかしながら、このクルマが好きだからだろう。小さな欠点が気になるのは“これがよくなれば最高”という気持ちの裏返しである。試乗会ではジャーナリスト仲間とそんなことを話したものだ。

試乗会の会場でトヨタ自動車の開発者が面白いことを教えてくれた。C-HRを好きになった顧客は、同様にTNGA(トヨタニューグローバルアーキテクチャー)を使って開発されている次期カムリへ誘導したいという。オジサンはこっち?

問い合わせ先

TOYOTA お客様相談センター

0800-700-7700(9:00-18:00)

http://toyota.jp/

           
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