THE GINZA|スペシャルリポート、資生堂“化粧用コットン”の原点を訪ねて

THE GINZA|スペシャルリポート、資生堂“化粧用コットン”の原点を訪ねて

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THE GINZA|ザ・ギンザ

化粧用コットンの生い立ちから、製造のこだわり、スタッフの情熱

化粧用コットンの原点を訪ねて(1)

化粧水のふきとりに、パッティングに、そしてなじませるときに、朝晩のスキンケアになくてはならないコットン。“肌あたりがソフトで、大判で”と、心地よさと機能を追求していくと、ザ•ギンザの2種類のコットンが、私の愛用品となったという、ビューティエディターの國藤直子。コットンのなめらかさ、ふわふわさ加減はいったいどうなっているんだろう? そんな疑問を解決すべく、広島にあるコットン製造工場に赴き、リポートした。

Text by KUNITO Naoko(STRIPE)Photographs by JAMANDFIX(Still)

資生堂関係者以外で工場に立ち入るのは、今回がはじめて

2012年、今年は資生堂の化粧用コットンが誕生して50年。つまり、資生堂の化粧用コットンは、世界中の化粧用コットンの原点なのだ。50年前、化粧専用コットンという存在すらなかった時代に、化粧品販売現場の美容部員から「欲しい」という声が挙がって、工場と試行錯誤を繰り返して作り上げたという。その後、シルクを配合したり、保湿成分(スクワラン)を配合したりと、化粧用コットンでの革新的な試みも世界ではじめて取り組む。化粧用コットンのベースを作り上げ、リードしつづけているのが、資生堂の化粧用コットンである。そんな資生堂の化粧用コットンのほとんどを製造している、広島県のサンヨーコーポレーションを訪ねた。

広島空港からクルマで約40分。日本酒で有名な西条を有する東広島市にあるサンヨーコーポレーションは、うぐいすの声も間近に聞こえる、美しい緑が目に鮮やかな丘に工場があった。じつは、資生堂関係者以外でこの工場に立ち入るのは、私がはじめてということで、かなり緊張したが、社長の小迫隆司さんやスタッフのみなさんが温かく出迎えてくれた。まず案内されたのが、社長室。ここは資料室も兼ねており、歴代の資生堂のコットンがずらりと陳列されていた。

ザ・ギンザ|資生堂コットン 02

サンヨーコーポレーションの工場

ザ・ギンザ|資生堂コットン 03

社長室に展示される歴代コットン

資生堂とサンヨーコーポレーションの試行錯誤がはじまる

さっそく話を伺ったのが、化粧用コットンの生い立ち。私たちが使っているコットンの形になるまでは、さまざまな努力と工夫があった。

まだ化粧用コットンなど存在していない1960年代初頭、資生堂の美容部員たちは、お客さまの肌に化粧水をなじませるためのツールとして、自ら脱脂綿をカットしていたという。化粧品の普及につれ、毎朝コットンをカットする作業が美容部員たちの負担になってきたので、当時の資生堂広島販売会社の常務が、1962年にサンヨーコーポレーションに化粧用コットンの製造を相談。もともと、サンヨーコーポレーションは、50年前は布団綿と脱脂綿を製造しており、快諾。しかし、最初のころは試作品を資生堂に持っていくと、「薄すぎる」「化粧水が肌に入っていかない」「上すべりする」などの声とともに差し戻しになった。しかも困ったことに、これらのコメントの意味がサンヨーコーポレーションには理解できなかったという。なにしろ、脱脂綿は「吸収させること」が目的でつくられている。吸収したものを肌に戻したり、摩擦性を考慮したりはしていない。

そこで、コットンの素材にスポットが当てられた。自然素材のコットンは、化学繊維とは異なり、もともと繊維の中に大きな隙間がいくつもあるので、吸収はもちろん、放出も可能な素材。化粧水を使う際、いったんはコットンに「吸収」させ、その後、肌に「放出」させる必要がある。コットンはそんなことができる最適の素材だったのだ。さらに、コットンは繊維の長さによっても種類があるので、肌あたりがやさしい毛足の長いものを使ってみようということに。こうして幾度か資生堂とキャッチボールを繰り返して、1963年に化粧用コットン第1号が完成。美容部員の負担を軽減し、接客に専念できるようになった。

ザ・ギンザ|資生堂コットン 04
ザ・ギンザ|資生堂コットン 05

これが、ふわふわした質感のヒミツのスーパー長繊維

ブルーのパッケージが、1963年誕生の化粧用コットン第1号

その後、さまざまに工夫され、いまでは長繊維と中長繊維、さらにスーパー長繊維を組み合わせて使用。それぞれつねに安定供給できるようにと、契約農家から綿花を輸入している。しかし、ここにいたるまでには、いくつかのハードルを乗り越える必要があった。たとえば、繊維の長さによって綿を漉く機械を変えなければならず、そのための機械を自ら開発・設計。また、なじませるときに使いやすいよう表面の毛羽立ちを押さえたり、一方で表面の肌触りをふんわり仕上げるように工夫したり、コットンのカット面を押しつぶすことなくスパッとカットしたり……と、さまざまなニーズに合わせてその都度、オリジナルの機械を生み出してきた。

もちろん機能面だけではなく、「感応性」を重視。とくに工場の女性スタッフの「感応性」には信頼をおいている。「設計上もっとなめらかになっているはず」との小迫社長が自信をもってつくった試作品も、「ふだん作っているもののほうが、なめらか」と、彼女たちはばっさり。毎日ずっとコットンに接しているからこそ、どんな些細なことも見逃さない、ほんの少しのちがいもわかるプロなのである。

化粧品もコットンも私たち女性の肌に直接触れるものだからこそ、「感応性」抜きには機能が語れない。ふきとりに適したザ・ギンザのリファイニングコットンも、なじませに適したスーペリアコットンも、技術とひとによる「感応性」によって作られているのだ、と改めて感じた。