祐真朋樹・編集大魔王対談|vol.15 篠山紀信さん、クリスチャン・ルブタンさん

祐真朋樹・編集大魔王対談|vol.15 篠山紀信さん、クリスチャン・ルブタンさん

祐真朋樹対談

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靴は女性を引き立てるものでありながら、消えるものでもある

篠山 ルブタンさんは服に合う素晴らしい靴をいくつも作っていますが、この展覧会で登場する靴は全て、裸と一緒になることでより魅力的に見えていると思います。ですから結果的には、ルブタンさんのヌード写真でもあると思っていますよ(笑)。

ルブタン ありがとうございます。篠山先生から嬉しいお言葉をいただいて、1980年代に師匠から靴作りを教えてもらった時に言われた言葉を思い出しました。「靴は女性を引き立てるものでありながら、消えるものでもある」。つまり、スタイリングをした時に靴がぴったりマッチしていれば、女性の個性が如実に引き立ち、靴の存在感は自然と消えるものだということです。これは私の師匠が1950年代にクリスチャン・ディオール氏から言われたものだそうなのですが、まさに今回の展覧会に当てはまる言葉だと思います。さらに、私は靴のデザインをする時は、服を着ている女性ではなくヌードの女性でスケッチをしています。そういう意味でも、今回の篠山先生の作品には感覚的に近いものをすごく感じますね。

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篠山 大事なのはまさにそこです。ルブタンさんの靴じゃなくちゃいけないんですけれど、だからといってルブタンさんの靴が主張しすぎているわけでもない。私が作品を通して伝えたいことを一番美しくストレートに表してくれているのがルブタンさんの靴ということです。主張しながらも、いつしか存在が消えるのもしかり。作品を邪魔しないどころか、むしろ盛り立ててくれている。かといってルブタンさんの宣伝写真にはなっていない。私はそういうところもルブタンさんの靴のすごいところだと思いますね。

ルブタン 私自身、作品を拝見していて非常に面白いなと思ったのが、選んでいただいている靴がほとんど黒だということ。黒だからこそモデルの肌の色がさらに美しく見え、コントラストという部分でも効果的なのだと思います。そして、さっき先生がおっしゃってくださったように、作品の邪魔をしていない。肌の色はある意味ニュートラルな色でもあって、そこに黒い靴を合わせるということは、モノクロ写真に近いのかもしれませんね。そういう捉え方をしても興味深いと思いますし、それらの融合がお互いを邪魔していないのだということをとても強く感じました。

祐真 確かに、そういう見方も面白いですね。

ルブタン それに、選んだモデルもとても素晴らしいと思いました。普通、ヌード写真というとどうしても作られたものになってしまうし、ファッションとなるとポージングを含めて1つの見せ方に固定されてしまうものです。ですが、先生の作品は芸術としてヌードを捉えながらも、常に自然体で撮っていらっしゃる。ヌードそのものを尊重し、尊敬する気持ちが作品に現れていると思います。

篠山 ありがとうございます。私もモデルにポーズをしてもらってオブジェのようにしようと思っていなくて、撮られる側の感情が自然に出てくる動きをしてもらって撮っています。そこの部分をルブタンさんは洞察していただいたのかなと思います。

ルブタン この仕事を始めた当初、私はパリのフォリー・ベルジェールというミュージックホールでインターンをしていました。そこではダンサーたちのためのシューズのデザインをしていて、実際にシューズを履いて動く方たちのためにした靴のデザインが私の原点になっています。人工的に作り上げたものではなく、本物のリアルな動きや形を表現していく。そういう意味でも、篠山先生の作品と私の靴には、感覚的に通ずる美学があるように思います。今日は本当にありがとうございました

篠山 こちらこそありがとうございました。

祐真 素敵な時間でした。お二人とも、今日はどうもありがとうございました。

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篠山紀信展「快楽の館」
会期|2016年9月3日(土)~2017年1月9日(月・祝)
開館時間|11:00~17:00
※11月23日(祝)をのぞく水曜は、20:00まで
※入館は閉館時刻の30分前まで
休館日|月曜(祝日にあたる9月19日、10月10日、1月9日は開館)、
9月20日(火)、10月11日(火)、年末年始(12月26日~1月4日)
入館料|一般1100円、大高生700円
※原美術館メンバーは無料
※20名以上の団体は1人100円引
会場|原美術館
東京都品川区北品川4-7-25

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篠山紀信|SHINOYAMA Kishin
1940年東京都出身。日本大学芸術学部写真学科在学中から広告制作会社ライトパブリシティ写真部で活躍。1961年、日本広告写真家協会展公募部門APA賞を受賞。1968年よりフリーランスの写真家として活動を開始する。同年、最初の作品集「篠山紀信と28人のおんなたち」(執筆:三島由紀夫、発行:毎日新聞社)を出版。以来、刊行した写真集は300冊を越える。日本を代表する写真家として活躍を続け、受賞も数多い。

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クリスチャン・ルブタン|Christian Louboutin
1964年フランス・パリ出身。幼い頃からナイトショーのダンサーのファッションや靴に興味を持つ。その後、シャルル・ジョルダン、シャネル、イヴ・サンローランなどの靴の製作に関わる。1991年にブティックをオープンし、自身の名を冠したブランド「クリスチャン ルブタン」をスタート。斬新かつフェミニンなスタイルがたちまち話題となり、ファッション業界で大きな注目を集める。1992年にはパリ、1994年にはニューヨークに路面店をオープン。2010年、日本初となる路面店を銀座にオープン。2012年にスタートした化粧品部門「クリスチャン・ルブタン・ボーテ」は日本では今年6月より展開開始。

ABOUT
SUKEZANE Tomoki

1965年京都市生まれ。(株)マガジンハウスのPOPEYE編集部でファッションエディターとしてのキャリアをスタート。現在は『UOMO』『GQ JAPAN』『Casa BRUTUS』『MEN’S NON-NO』『ENGINE』等のファッションページのディレクションのほか、著名アーティストや文化人の広告のスタイリング等を手掛けている。パリとミラノのコレクション観覧歴はかれこれ25年以上。   Born in 1965 in Kyoto, Japan. He started his career as a fashion editor at POPEYE magazine of Magazine House. Currently, he is working on various magazines such as UOMO(SHUEISHA), GQ(Conde Nast Japan),Casa BRUTUS (Magazine House), MEN’S NON NO (SHUEISHA), ENGINE(SHINCHOSHA)and he is setting styling people such as artists and […]