ポロ ブルーGTに試乗|Volkswagen
CAR / IMPRESSION
2014年12月10日

ポロ ブルーGTに試乗|Volkswagen

Volkswagen Polo Blue GT|フォルクスワーゲン ポロ ブルーGT

ダウンサイジングのひとつの集大成

ポロ ブルーGTに試乗

ことし3月のジュネーブ国際モーターショーで公開されたフォルクスワーゲン「ポロ ブルーGT」。気筒休止技術を採用し、動力性能を犠牲にすることなく、圧倒的な環境負荷の低さを実現した、現代のダウンサイジングエンジンのひとつの集大成だ。そのポロ ブルーGTに、河村康彦氏がアムステルダムで試乗した。

Text by KAWAMURA Yasuhiko

ホット&エコ

0-100km/h加速が7.9秒にして、最高速は210km/h──FFレイアウトを備えた2ボックスモデルで、そんな動力性能を発表したとなれば、それはスポーティな走りを売り物とするいわゆる“ホットハッチ”の1台とカテゴライズしてもよさそうだ。

いっぽうで、ヨーロッパ最新の計測法“NEDC”(New European Driving cycle、新欧州ドライビングサイクル)による100km走行あたりに必要な燃料は、わずかに4.5リッターで、1km走行あたりのCO2排出量も105gにすぎないと耳にすれば、今度はそれは優秀な“エコカー”と評したくなる。

ヨーロッパ市場に向けての発売が、今年の第4四半期に開始と発表され、来年には日本への導入も予想される「ポロ ブルーGT」は、いわばそんな2タイプのモデルの“良いとこ取り”をした1台。

そしてそれは、従来存在したモデルの代替となるものではなく、「これまで、ポロのラインナップの中で大きく開いていた、TSIとGTIグレードの狭間を埋めるもの」というのが、開発陣によるアピールだ。

Volkswagen Polo BlueGT|フォルクスワーゲン ポロ ブルーGT

そんなポロ ブルーGTの狙いどころは、そのルックスからもある程度の想像がつく。さすがに、ハニカムグリルやタータンチェック柄のシートなど、“GTIのアイコン”として世に認知をされているアイテムは採用していない。だが、左端から2本のテールパイプが姿をのぞかせるディフューザー付きリアバンパーやフロントバンパー、ルーフスポイラーなどは、いずれもGTI譲りのデザインだ。

Volkswagen Polo BlueGT|フォルクスワーゲン ポロ ブルーGT

このモデルは、外からは目に入らないアンダーボディ トリムに、専用のものをあらたに採用するなど、空気抵抗の低減に並々ならない工夫を凝らしている。

興味深いのは、ドアミラー同様ブラックアウト化されたため人目にはつき難い(?)が、ルーフスポイラーの両端から下へと伸び、リアウインドウ両サイドを覆うカタチの“フィン”が新設されたこと。資料中には説明がないものの、ほかのポロには見られないこのアイテムもまた、同様の効果を狙ったものと推測できるわけだ。

Volkswagen Polo Blue GT|フォルクスワーゲン ポロ ブルーGT

ダウンサイジングのひとつの集大成

ポロ ブルーGTに試乗(2)

アクティブ・シリンダー・マネジメント

搭載する1.4リッターのターボ付き直噴エンジンは、最高出力140psと最大トルク220Nmを発揮する。「TSI」グレードの1.2リッター ターボエンジンが105psと175Nm、「GTI」グレードの1.4リッター ターボ+スーパーチャージャー付きが179psと250Nmだから、まさに「両者の中間」という位置づけが明確だ。

ちなみに、ヨーロッパ市場に向けては3ドアボディも用意されるものの、日本に導入されるのは5ドアのみとなりそう。

同様に、トランスミッションもヨーロッパ向きには6段MTと7段DSGの2タイプが設定されるが、昨今の事情を考慮すれば日本にはやはり後者のみと推測するのが順当というものだろう。

ところで、ポロ ブルーGTのもっとも大きなトピックは、その搭載エンジンがオールニューのアイテムであることだ。従来の1.4リッターユニットのクランクケースが鋳鉄製であったのにたいして、こちらはそれをアルミニウム化。

またエキゾースト・マニホールドをシリンダーヘッドと一体化し、インダクション・モジュールもインタークーラーと一体化。さらにバルブ駆動をおこなうのはチェーンではなくベルト……と、さまざまな部位に軽量化と合理化をはかった設計が目立つ。

Volkswagen Polo BlueGT|フォルクスワーゲン ポロ ブルーGT

これまでは10度前傾させていたエンジンの搭載角度を、12度後傾へと改めたうえで、前方排気だったものを後方排気にするという大変更も見逃せない。これらにより、このエンジンのマウント位置はディーゼルと共通になったという。

こうしたレイアウト変更も含めた各種のリファインは、すでに発表されている、この先のフォルクスワーゲンの車両構造“MQB”(モジュラー・トランスバース・マトリックス)への対応を先取りしたもの。すなわち、このポロ ブルーGTに積まれた1.4リッターエンジンこそが、次世代のフォルクスワーゲン各車にもちいられることを見据えた、新世代ユニットである。


Volkswagen Polo BlueGT|フォルクスワーゲン ポロ ブルーGT

さらにこの心臓には、開発陣が「この先、すべてのTSIエンジンに標準採用の予定」と語る、注目のテクノロジーも採用されている。それは、“ACT”(アクティブ・シリンダー・マネジメント)と呼ばれる2気筒休止のメカニズム。エンジン回転数が1,400~4,000rpm、発生トルクが25~100Nmの範囲で、2番・3番気筒のバルブ駆動をとめ、気筒の作動を休止。ポンピングロスを減らして燃費の向上をはかるというのが、このアイテムを採用した目的だ。ちなみに、この運転領域は先のNEDCモードでの、ほぼ70パーセントに相当し、結果として削減可能な燃料は100kmあたり0.4リッターに達するという。

Volkswagen Polo Blue GT|フォルクスワーゲン ポロ ブルーGT

ダウンサイジングのひとつの集大成

ポロ ブルーGTに試乗(3)

気筒休止の感覚

このようなメカニズム上の予備知識を持ったうえでも、あるいはそれを持っていなくても、ポロ ブルーGTのドライブフィールに違和感は一切ない。「DSG」を名乗るこのモデルのデュアルクラッチトランスミッションは、微低速時のスムーズさに欠けるのがウイークポイントと評されがちだし、実際自身でもそのように評した経験を持つが、ポロ ブルーGTではスタートの瞬間から“トルコンATと同様の滑らかさ”を味わわせてくれる。

そこから先ではアクセルワークに即応して車速とエンジン回転数がきっちりリンクをする小気味良さを提供してくれる。マニュアルトランスミッション同様の高い伝達効率をほこる、デュアルクラッチならではの美点だ。低回転域でもアクセルONとともにたちまちターボブーストが立ち上がり、安易にキックダウンに甘んじない粘り強さは、フォルクスワーゲンの直噴ターボ エンジンならではというテイスト。

じっさい、100km/hクルージング時のエンジン回転数は、わずか1,900rpmに過ぎない。1.4リッター エンジンとはにわかには信じがたい、そんなハイギアードな設定が可能になるのも、前述のようなエンジン キャラクターがあればこそなのだ。

注目の“2気筒運転”だが、これはGTIゆずりのデザインのメーターパネル内ディスプレイに表示される「2 cylinder mode」の文字を目にしないかぎり、その瞬間が“そうした状態”であることを知るのは難しい。

Volkswagen Polo BlueGT|フォルクスワーゲン ポロ ブルーGT

慣れれば音質が微妙に変化することから、わからないでもないのだが、これも「注意深く耳を澄ませば」という程度。それ以外は、一切のショックがあるわけでも、パワーダウンを感じるわけでもないのだ。

いっぽうで、アクセルペダルを一気に深く踏み込みキックダウンを発生させ、エンジン回転数を高めると、それに呼応したパワーの伸び感を味わわせてくれるのは、今度はいかにも「GT」の名の持ち主にふさわしい。低いギアでも簡単にホイールスピンを起こすほどではないが、同時に1.2リッターエンジンを積むTSIグレードとの力強さのちがいは、あまりに歴然としている。こうした“両刀づかい”のチューニングはなかなか見事なところだ。

Volkswagen Polo Blue GT|フォルクスワーゲン ポロ ブルーGT

ダウンサイジングのひとつの集大成

ポロ ブルーGTに試乗(4)

1台のクルマとしての仕上がり

ポロ ブルーGTは単にそうしたパワーパックが素晴らしいというだけではなく、1台の車両としての総合的な仕上がり具合が非常に高いレベルにあるという点にこそ真の価値がある。

すなわち、GTIとおなじ15mmのローダウン サスペンションに、やはりGTIサイズの17インチを履いた足回りは、「適度に締まっているものの、GTIよりもややマイルド」という、スポーティさとファミリーユースをともに満足させてくれる、絶妙なバランス感覚。そのうえ、「エンジンがアルミブロック化されると、ノイズ面では不利なのでは」という危惧をはね返す静粛性の高さも、このクラスではトップといった感触。

Volkswagen Polo BlueGT|フォルクスワーゲン ポロ ブルーGT

Volkswagen Polo BlueGT|フォルクスワーゲン ポロ ブルーGT

というわけで、そんないつものポロにも増しての好印象を受けつつ、国際試乗会の開催されたオランダはアムステルダム近郊の180kmほどの区間を、まったく遠慮のないペースで走り回った結果の平均燃費データは、5.5ℓ/100kmと表示された。すなわちそれは、日本式の表示に換算するとおよそ18.2km/ℓという値。

「GT」という名に恥じない走りのポテンシャルを実現しつつ、「軽く流せば20km/ℓ」というエコな一面ものぞかせるこのモデルは、周辺ライバルたちをおおいに震撼させるインパクトの持ち主。「日本のライバルたちはもはや“周回遅れ”か……」と、悲しいかな、そんな実感をいだかされた小さな巨人の登場だ。
※編集部追記

2013年9月、ポロ ブルーGTは国内導入を果たした小川フミオ氏による国内での試乗記も掲載しているので、あわせてご覧いただきたい。

spec

Volkswagen Polo BlueGT|フォルクスワーゲン ポロ ブルーGT
ボディ|全長 3,976 × 全幅 1,682 × 全高 1,462 mm
ホイールベース|2,470 mm
トレッド(前/後)|1,443 / 1,437 mm
重量|1,216 kg
エンジン|水冷直列4気筒 16バルブ 直噴 シングルスクロールターボ付き
排気量|1,395 cc
圧縮比|10.5
最高出力|103 kW(140 ps)/ 4,500-6,000rpm
最大トルク|250 Nm / 1,500-3,500 rpm
トランスミッション|乾式7段セミオートマチック(DSG)
タイヤ|215 / 40 R17
荷室容量|250 リットル(リアシート折りたたみ時は 952リットル)
0-100km/h加速|7.9 秒
最高速度|210 km/h
最小回転半径|5.3 m
CO2排出量|105 g/km
燃費|4.5 ℓ/100km(NEDC複合)
※ 上記スペックは、2ドア/7段DSG版の本国仕様の数値です

           
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