フィアット&ジープの「産直」ショールーム|Fiat
CAR / FEATURES
2016年9月21日

フィアット&ジープの「産直」ショールーム|Fiat

ミラフィオーリ・モーターヴィレッジ|Mirafiori Motor Village

フィアット&ジープの「産直」ショールーム

日本ではあまり紹介されることは少ないが、フィアットの城下町トリノの片隅にFCAグループ全ブランドを扱うショールーム「ミラフィオーリ・モーターヴィレッジ」がある。人とクルマの関係について深い歴史がある街のるショールームに、大矢アキオ氏が訪れた。

report & photo Akio Lorenzo OYA

フィアットの故郷

イタリア北部トリノ。FCAミラフィオーリ工場は1939年、ときの首相ムッソリーニも臨席しての落成以来、フィアットの主力工場としてその名を自動車界に馳せてきた。

えんえんと続く壁の中には、余剰電力を地元に供給できる発電所まで備える。

熱心なイタリア車ファンのなかには1970年代末-1980年代初頭のベルリーナ「131」に「スーパー・ミラフィオーリ」というバージョンがあったのをご記憶の方も少なくないだろう。

s_Mirafiori-Motor-Village_006

s_Mirafiori-Motor-Village_014

現在はアルファ・ロメオ「MiTo」がそこで生産され、2016年からはマセラティのSUV「レヴァンテ」も造られる見通しだ。

FCAのデザイン拠点「オフィチーナ83」のほか、さまざまな研究施設も併設している。そうしたことから周囲の一般道では、カムフラージュを施されたテストカーが走っているのを頻繁に目にする。

そうした、まさに車の街の一角に「ミラフィオーリ・モーターヴィレッジ」はある。

ミラフィオーリ・モーターヴィレッジ|Mirafiori Motor Village

フィアット&ジープの「産直」ショールーム (2)

産直工場にあるもうひとつの役割

元シート工場を改装して2006年にオープンした総面積7万平方メートルの大ショールームである。建物の裏にはトンネルがあって、ミラフィオーリ工場で生産されて最終検査を受けたばかりの車両がダイレクトに運ばれるようになっている。まさに産地直送だ。

開設から11年。現在はジープを含むFCAグループのイタリア市場向け全車種を展示販売している。普通のディーラーにはなかなかディストリビューションされない特別仕様車にも出会えるチャンスが多い。銀行ATMや、イタリアで自動車購入の際必要な公証人事務所も備えている。

さらに「ミラフィオーリ・カフェ」と称する明るい食事スペースも併設していることから、今や毎週のように自動車愛好者のクラブが工場見学とセットで訪れる。

s_Mirafiori-Motor-Village_034

同じFCA傘下にあるジープブランドの車両も並ぶ

s_Mirafiori-Motor-Village_058

併設の「ミラフィオーリ・カフェ」で提供される、地元ピエモンテ牛のローストビーフ

実は、このミラフィオーリの大ショールームには、もうひとつの顔がある。一般販売と並行して、社員販売用の納車ブースとしても機能しているのだ。

1950-60年代、ミラフィオーリにはイタリア南部から多くの人々が出稼ぎにやってきた。彼らは工場で働くかたわら先代フィアット「500」をローンで購入。夏休みには新車でアウトストラーダ1号線・通称「太陽の道」で半島を南下して、故郷に錦を飾ったという。

「あの頃、夏休み前の最終出勤日というと、工場の前にお父さんの退社を待つ家族のクルマが列をなしたものさ」と、トリノに長年住むというある紳士は、懐かしそうに語った。

訪れた日も、数名のFCA従業員たちが、モーターヴィレッジの専用ブースで納車を待っていた。

それを見た筆者の脳裏には、その昔初めてのマイカーとして喜びとともにフィアット500を受け取る家族たちの姿が重なったのであった。

s_Mirafiori-Motor-Village_059

ショールームの一角に展示された歴史車から。アウトビアンキ500ジャルディニエラ。ベースとなったフィアット500の生産終了後も、1977年までカタログに載り続けた

Information
Mirafiori Motor Village
Piazza Cattaneo , TORINO ITALIA
www.motorvillageitalia.it/sedi/torino
月-金|9:00-20:00
土|9:00-19:30
日|9:30-13:00/15:00-19:30

           
Photo Gallery