718ボクスターのワークショップに参加|Porsche
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2016年3月14日

718ボクスターのワークショップに参加|Porsche

Porsche 718 Boxster |ポルシェ 718 ボクスター

718ボクスターのワークショップに参加

ターボによる出力と加速の増強を実感

新型911と同様、ダウンサイジング化とターボ化が施された新型ボクスター。車名も「917ボクスター」に変更されたのはご存じの通り。同モデルのワークショップに参加したジャーナリスト、金子浩久氏によるリポートをお送りする。

Text by KANEKO HirohisaPhotographs by PORSCHE JAPAN

4気筒ターボチャージド水平対向エンジンが新型の肝

ポルシェは重要なニューモデルを発表する直前に、世界中からメディアを集めてワークショップを行っている。

フランスで行われたのは「718ボクスター」。正式発表が予定されている3月1日のジュネーブ自動車サロンの5日前の2月25日にマルセイユ近郊のミシュラン・タイヤのテストコースでワークショップは行われた。世界各国のメディアを何カ国かに分けて行われていて、同じ回には日本からの我々のほかにカナダ、フィンランド、フランスなどが参加していた。バラバラである。

半日間のワークショップは4つの座学とタクシーライドで構成されていた。座学は、導入、シャシー、パワートレイン、デザイン。そして、屋外のテストコースでタクシーライドだった。

Porsche 718 Boxster |ポルシェ 718 ボクスター

Porsche 718 Boxster |ポルシェ 718 ボクスター

順を追って説明すると、718ボクスターはこれまでのボクスターの生まれ変わりで、車名に「718」が付いた。1950年代から60年代にかけてタルガフローリオやル・マン24時間レースなどで優勝を飾った往年のレーシングカー「718」へのセルフオマージュを込めた命名だ。718は水平対向4気筒エンジンをミッドに搭載していたことが命名の由来だ。

ちなみに、コードナンバーは「982」。ポルシェ911のことを、世代に応じて「964」とか「993」とか区別して呼ぶことがあるが、この「718ボクスター」は「982」で、先代の「ボクスター」は「981」なのだそうだ。混乱しそうだ。

そう、718ボクスターはこれまでの水平対向6気筒の代わりに、ターボ過給される2.0リッターと2.5リッター(718ボクスターS)の水平対向4気筒エンジンが搭載されることになったのだ。先代が、2.7リッターと3.4リッター(ボクスターS)だったから大幅なダウンサイズである。

ドライブトレイン・ディレクター マティアス・ホフスタッター氏

ドライブトレイン・ディレクター マティアス・ホフスタッター氏

Porsche 718 Boxster |ポルシェ 718 ボクスター

「新開発された、この4気筒ターボチャージド水平対向エンジンが新しいボクスターのもっとも重要なポイントです」(ドライブトレイン・ディレクターのマティアス・ホフスタッター氏)

かつての718のように、ポルシェには4気筒エンジンをミッドシップに搭載して成功を収めた輝かしい伝統があるとホフスタッター氏は続けた。

「昨年のル・マン24時間レースで総合優勝したポルシェ「919」も4気筒エンジンを搭載しています。ポルシェの中には4気筒エンジンの伝統が力強く継承されているのです」

昔の718は空冷で718ボクスターと比較するにはあまりにも古過ぎるし、919はピュアレーシングカーだから718ボクスターとは何の関係もない。しかし、“関係ある”と言って説得力を持たせてしまうのが、伝統を活用する力であり、またブランド価値というものなのだと思う。各部分を見てみよう。

Porsche 718 Boxster |ポルシェ 718 ボクスター

718ボクスターのワークショップに参加

ターボによる出力と加速の増強を実感 (2)

ダウンサイジングの眼目とは

パワートレイン

ダウンサイジングの理由について、テクニカル・スペシャリストのラルフ・シュミット博士が次のように述べた。

「3つの目標を達成するためです。それは、効率化とパフォーマンスとエモーションです。効率化とは、言うまでもなく燃費向上とCO2削減です。しかし、ポルシェはスポーツカーなので、スポーツカーならではのパフォーマンスとエモーションも併せて向上させなければなりません」

その718ボクスター用の新しい2.0リッター4気筒エンジンの最高出力は300psで、最大トルクは310Nm。718ボクスターS用の2.5リッターは、350psと420Nm。注目すべきなのは、どちらのエンジンの最大トルクともに、1,950-4,500rpmと1,900-4,500rpmというように、幅広い回転域で発生している点だ。

トランスミッションは6段MTが標準で、7段PDKがオプション。

ドライブトレイン・ディレクター マティアス・ホフスタッター氏

テクニカル・スペシャリスト ラルフ・シュミット博士

Porsce 718 Boxster |ポルシェ 718 ボクスター

性能は、スポーツクロノパッケージを装着したPDK仕様車で、0-100km/h加速が4.7秒と先代よりも0.8秒短縮し、Sでは4.2秒と0.6秒短縮している。最高速度は275km/h。Sは285km/h。

燃費は、14.5km/ℓ(先代より1.3km/ℓ向上)。Sは13.7km/ℓ(先代より1.5km/ℓ向上)。排出されるCO2は先代よりも13パーセント減っている。

エモーションについて、シュミット博士はエンジンサウンドが要であると説明した。

「718ボクスターのエンジンサウンドは直列4気筒のものとは違います。4気筒でも、正真正銘のボクサーサウンドです」

その点については、後述するタクシーライドで確認してみることにした。

ダウンサイジングするに当たって、ポルシェの技術陣はさまざま技術的なトライを行った。すでに発表されている「911」も、3.4リッターと3.8リッター(S)のどちらも3.0リッターに排気量が小さくされている。しかし、気筒数はどちらも6気筒と変わらない。

「911とボクスターでは排気量の大きさが違うので、気筒数を減らすかどうかが決まりました」(シュミット博士)

Porsche 718 Boxster |ポルシェ 718 ボクスター

Porsche 718 Boxster |ポルシェ 718 ボクスター

つまり、718ボクスターも911と同じように排気量だけ小さくして6気筒のままでは、ターボチャージャーやインタークーラーが収まらなくなってしまう。そして、911がターボチャージャーを2基装着しているのに対して718ボクスターのターボチャージャーが1基なのも、4気筒に気筒数を減らしたことと連動しもっとも効率を良くさせるためだ。排気量と気筒数の違いが911と718ボクスターのパワートレインを峻別しているが、共通している点も見逃せない。

718ボクスターでは、オプションのスポーツクロノパッケージを選ぶと911と同じように4つの走行モードを選べるようになった。走行モードは、ノーマル、スポーツ、スポーツプラス、そしてインディビデュアルだ。

さらに、PDKを装着すれば「スポーツ レスポンス スイッチ」も追加される。これは、ステアリングホイールの4時位置のスポークに設けられたドライビングプログラムスイッチ中央のボタンを押すことによって、エンジンとPDKのレスポンスを極端にダイレクトなセッティングにすることができるもの。

Porsche 718 Boxster |ポルシェ 718 ボクスター

718ボクスターのワークショップに参加

ターボによる出力と加速の増強を実感 (3)

テストドライバー ラース・ケルンの運転するSの助手席に同乗

シャシー

シャシーにも多くの最適化が施された。主なものを取り上げてみても、リアサスペンションにラテラルメンバーを追加することでリアサブフレームを強化したり、前後のショックアブソーバーのピストンとシリンダーチューブの大径化、リアホイールの1/2インチワイド化、電動ステアリングの10パーセントのダイレクト化などがある。

ブレーキもパフォーマンス向上に合わせて強化された。718ボクスターには先代ボクスターSの、718ボクスターSには911カレラの新しい4ピストンキャリパーと、厚みが増したブレーキディスクが採用されている。そして、ブレーキにはマルチ コリージョン ブレーキシステムが採用され、二次衝突時の被害を軽減する。

タイヤの標準サイズは、718ボクスターが18インチ、Sが19インチ。20インチはどちらもオプションで選べる。

オプションのPASM(ポルシェ アクティブ サスペンション マネージメント システム)では車高が10mm(Sでは20mm)低くなり、低重心化を推進している。

Porsche 718 Boxster |ポルシェ 718 ボクスター

Porsche 718 Boxster |ポルシェ 718 ボクスター

デザイン

先代ボクスターと共通したイメージのエクステリアデザインだが、すべてのボディパネルは新設計されたものだという。たしかに、フロントのバンパー下のエアインテークは大きなものとなり、その上にフロントライトも新設された。

ヘッドライトもオプションで911のような4灯式デイタイムランニングライトを組み込んだLED式のものが選べるようになった。このヘッドライトはとても特徴的に光るので、はるか遠くからでもその存在を認識させることができるので、とても有意義だ。

リアスタイルも先代と造形のモチーフよく似ているが、同じではない。ハイグロス仕上げのブラックのアクセントストリップが左右のテールライトを結んでおり、可動式のエアスポイラーがそのあいだからせり出てくる。テールライトもクリアガラスの奥にある部分を立体的に構成しているなど、とても凝っている。

Porsche 718 Boxster |ポルシェ 718 ボクスター

Porsche 718 Boxster |ポルシェ 718 ボクスター

タクシーライド

718ボクスターSでニュルブルクリンクでの先代Sのラップタイムを16秒も短縮した7分42秒を記録したその人であるテストドライバーのラース・ケルンの運転するSの助手席に乗せてもらった。

助手席からもすぐに感じられたのは低回転域から太いトルクが発生していて、それが強い加速に貢献していることだった。テストコースでテストドライバーがつねに全開に近いスロットルワークで走らせているので速いことはもちろんなのだが、新しい2.5リッター4気筒ターボエンジンの実力を垣間見た気がした。続いて2.0リッターにも乗ったがその印象に変わりはなく、ダウンサイジングによる出力低下よりもターボによる出力と加速の増強をより強く感じた。

エンジンサウンドも要チェックポイントだったが、前述の通りほぼ全開に近い加速が続くのと、スポーツエキゾーストマフラーが装着されていることによる大きな音量とで4気筒の特色をつかむことはできなかった。こればかりは一般道で自分で運転してみなければ自覚することは難しいだろう。

いずれにしても、718ボクスターの詳細を知らされれば知らされるほど、そこにいつものポルシェと変わることのない周到かつ入念な実験と開発が行われてきたことを認めざるを得ない。次から次へと繰り出される“最適化”と“改善”という言葉の連続に期待は高まるばかりだ。早く自分で運転してみたい。

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Porsche 718 Boxster|ポルシェ 718ボクスター
ボディサイズ|全長 4,379 × 全幅 1,801 × 全高1,281 mm
ホイールベース|2,475 mm
トレッド前/後|1,515 / 1,532 mm
車両重量|1,335 kg
エンジン|1,988cc 水平対向4気筒ターボ
ボア×ストローク|91.0 × 76.4 mm
圧縮比|9.5
最高出力|220 kW(300 ps)/6,500 rpm
最大トルク|280 Nm/1,950-4,500 rpm
トランスミッション|7段デュアルクラッチ(PDK)/ 6段AT
駆動方式|MR
最小回転半径|5.49 メートル
ブレーキ 前|φ330×28mm ベンチレーテッド ディスク
ブレーキ 後|φ299×20mm ベンチレーテッド ディスク
サスペンション 前|マクファーソン ストラット
サスペンション 後|マクファーソン
タイヤ 前/後|235/35R18 / 265/45R18
最高速度| 275 km/h
0-100km/h加速|(7PDK)4.9 秒(Sport+では4.7秒) (6MT)5.1 秒
0-200km/h加速|(7PDK)18.1 秒(Sport+では17.8秒) (6MT)18.3 秒
燃費(NEDC)|(7PDK)6.9 ℓ/100km(およそ14.5km/ℓ) (6MT)7.4ℓ/100km(およそ13.5km/ℓ)
CO2排出量|(7PDK)158 g/km (6MT)168 g/km
価格|(7PDK)710万4,000円 (6MT)658万円

Porsche 718 Boxster S|ポルシェ 718ボクスター S
ボディサイズ|全長 4,379 × 全幅 1,801 × 全高1,280 mm
ホイールベース|2,475 mm
トレッド前/後|1,515 / 1,540 mm
車両重量|1,355 kg
エンジン|2,497cc 水平対向4気筒ターボ
ボア×ストローク|102.0 × 76.4 mm
圧縮比|9.5
最高出力|257 kW(350 ps)/6,500 rpm
最大トルク|420 Nm/1,900-4,500 rpm
トランスミッション|7段デュアルクラッチ(PDK)/ 6段AT
駆動方式|MR
最小回転半径|5.49 メートル
ブレーキ 前|φ330×34mm ベンチレーテッド ディスク
ブレーキ 後|φ299×20mm ベンチレーテッド ディスク
サスペンション 前|マクファーソン ストラット
サスペンション 後|マクファーソン
タイヤ 前/後|235/35R18 / 265/45R18
最高速度| 285 km/h
0-100km/h加速|(7PDK)4.4 秒(Sport+では4.2秒) (6MT)4.6 秒
0-200km/h加速|(7PDK)15.0 秒(Sport+では14.7秒) (6MT)15.2 秒
燃費(NEDC)|(7PDK)7.3 ℓ/100km(およそ13.7km/ℓ) (6MT)8.1ℓ/100km(およそ12.3km/ℓ)
CO2排出量|(7PDK)167 g/km (6MT)184 g/km
価格|(7PDK)904万4,000円 (6MT)852万円

問い合わせ先

ポルシェカスタマーケアセンター

0120-846-911

http://www.porsche.com/japan/jp/

           
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