アウディQ3に試乗|Audi
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2014年12月12日

アウディQ3に試乗|Audi

Audi Q3 2.0TFSI quattro 211PS|アウディ Q3 2.0TFSIクワトロ 211PS

アウディ Q3に試乗

2012年5月からついに日本にも導入されることになったアウディ「Q3」。インポートプレミアムコンパクトSUV市場にアウディが投じるこの一石。先に導入される2.0TFSIクワトロの211ps版に自動車ジャーナリスト、大谷達也が箱根で試乗。

Text by OTANI Tatsuya
Photographs by ARAKAWA Masayuki

コンパクトSUVの隆盛

「もうブームは終わったでしょ」

ほかならぬSUVの話である。ところが、アウディ・ジャパンの調査によると、日本国内のプレミアムSUV市場は引きつづき成長傾向にあるという。

SUVの起源は1960年代に誕生したジープ「ワゴニア」やフォード「ブロンコ」にあるとされる。これを追うようにして1970年には「レンジローバー」がデビューし、プレミアムSUVというカテゴリーが確立された。

もっとも、現在に通ずるプレミアムSUVの潮流をつくりだしたのが、2000年に登場したBMW「X5」であることは疑う余地がない。この大成功に刺激されたライバルメーカーはぞくぞくと競合モデルを投入。フォルクスワーゲン「トゥアレグ」、ポルシェ「カイエン」、アウディ「Q7」、メルセデス・ベンツ「Mクラス」などが、その代表例である。

しかし、BMWはここで巧みな戦略に打って出る。X5を作りつづけるいっぽうで、「X3」を発売してもうひとクラス下のプレミアムSUV市場を創出したのだ。これが世界的に大ヒットすると、またもやライバルメーカーが追従。フォルクスワーゲン「ティグアン」、アウディ「Q5」、メルセデス・ベンツ「GLKクラス」などが誕生した。

Audi Q3 2.0TFSI quattro 211PS|アウディQ3 2.0 TFSIクワトロ 211PS

Audi Q3 2.0TFSI quattro 211PS|アウディQ3 2.0 TFSIクワトロ 211PS

2度あることは3度ある。BMWはさらにクラスをひとつ下げ、「X1」を発売。これも順調に販売を伸ばしていった。となれば、ライバルメーカーも黙ってはいられない。今回、いちばん最初に動きはじめたのはアウディ。つまり、ここで紹介するQ3は、X1のライバルとなることを宿命づけられて誕生したコンパクト・プレミアムSUVなのである。

冒頭にプレミアムSUV市場は成長傾向にあると述べたが、全体的に市場規模が拡大するいっぽうで、ひとつの変化が起きつつある。市場の中心となるクラスが、どんどん下級移行しているのだ。このため、現在の主流は“X3クラス”だが、今後“X1クラス”のライバルが出そろえば、いつこちらが主流になっても不思議ではない状況となっている。

それはそうだろう。SUVはもともとアメリカ生まれ。広大で、石油資源も豊富な“新大陸”で誕生したからこそ、ひとびとは巨大なSUVを受け入れた。しかし、ヨーロッパやアジアの大都市圏では、“X5クラス”のサイズはいささか大きすぎる。だから、ひょっとするとBMWが仕掛けなかったとしても、SUVの下級移行は自然に起きたとの推測が成り立たなくもない。

Audi Q3 2.0TFSI quattro 211PS|アウディ Q3 2.0TFSIクワトロ 211PS

アウディ Q3に試乗(2)

コンパクトななかにSUVのボリューム感

こうして誕生したQ3のボディサイズは、兄貴分のQ5に比べると24cmほども短く、全幅は7cm近くも狭く、車高は5cmも低いコンパクトサイズに仕上がった。

実際のサイズは小さくなっても、SUVらしいボリューム感を備えたQ3はずいぶん立派に見える。Q5が隣になければ、これがひとクラス下のモデルとはおもえないくらい、その佇まいは堂々としたもの。コンパクトな2ボックスカーと見間違えかねないBMW X1とは、この点が好対照である。

もっとも、外寸が小さくなったからといってキャビンも狭くなっては困る。この点、Q3はA3ゆずりの横置きエンジン・レイアウトを採用することでスペース効率を改善。全長4.4メートルを切るコンパクトサイズであることが信じられないくらい、キャビンはルーミーで広々としている。いかにもSUVらしい仕立てだ。

Audi Q3 2.0TFSI quattro 211PS|アウディQ3 2.0 TFSIクワトロ 211PS

Audi Q3 2.0TFSI quattro 211PS|アウディQ3 2.0 TFSIクワトロ 211PS

そのいっぽうで、エクステリアやインテリアは、定評あるアウディ・クォリティで貫かれている。外観からにじみ出る品の良さ、そして内装から感じられる質感の高さは、Q3の強力な武器だ。

路上でのパフォーマンスも、最新のアウディに通じる印象だった。211psを発揮する2.0リッター直噴ターボエンジンは中低速域から頼もしいトルクを発揮。リズミカルにシフトアップしていくデュアルクラッチ式ギアボックス“Sトロニック”と相まって、テンポのいい加速感を実現する。

235/50R18サイズの「ピレリ・スコーピオ・ヴェルディ」がもたらす乗り心地も快適だった。路面からの突き上げ感を抑えるうえで、タイヤの大きなエアボリュームが効果を挙げているのは間違いないだろう。そういえば、Q3はオプションで「Sラインパッケージ」を装着しても、タイヤサイズは235/50R18のまま。サスペンションは20mmダウンのスポーツタイプとなるが、乗り心地への悪影響は認められなかった。“スポーティルック”がお好みのファンには魅力的な選択肢だといえる。

Audi Q3 2.0TFSI quattro 211PS|アウディ Q3 2.0TFSIクワトロ 211PS

アウディ Q3に試乗(3)

軽快なハンドリング

ハンドリングはなかなか軽快だ。限界近いペースで走行してもロール角は不安のない範囲に収められているほか、腰高感も薄いので、ドライバーは自信をもってコーナーに進入できる。左右に切り返す際の機敏さも、車高1.6メートル級のSUVとしては納得できる範囲。意外にもワインディングロードを楽しめるSUVに仕上がっていた。

今回は試乗中に大雨に見舞われたが、ハルデックス式センターデフを備えたフルタイム4WDの「クワトロ」は、滑りやすい路面でも前後のトルク配分を微妙に変化させることで一定のステアリング特性を維持しつづけた。雨の高速道路におけるクワトロの威力はこれまで何度も経験したことがあったが、ヘビーウェットのワインディングロードをこれほど安心して走れたのは今回がはじめて。その意味では、クワトロの真価を再発見することになったともいえる。

なお、このセンターデフは通常フロントに95パーセント、リアに5パーセントのトルクを配分。そしていざというときは、前後とも0-100パーセントの範囲で自動的に調整をおこなうという。

まずは479万円で211ps仕様が発売されたアウディQ3。いっぽう、おなじタイミングで発表された170ps仕様(エンジンは同型式。ただしソフトウェアがことなる。409万円)の納車は今秋よりはじまるという。インポートプレミアムコンパクトSUV市場でBMW X1とアウディQ3がどんな戦いを演じるのか、要注目である。

Audi Q3 2.0TFSI quattro 211PS s-line|アウディQ3 2.0 TFSIクワトロ 211PS Sライン

spec

Audi Q3 2.0 TFSI quattro 211PS|アウディ Q3 2.0 TFSIクワトロ 211PS
ボディサイズ|全長4,385×全幅1,830×全高1,615 mm
ホイールベース|2,605 mm
トレッド(前/後)|1,570 / 1,570 mm
最低地上高|170 mm(S-lineパッケージ装着時は 150mm)
重量|1,610 kg
エンジン|直列4気筒DOHCインタークーラー付ターボ
排気量|1,984 cc
最高出力|155 kW(211ps)/5,000-6,200 rpm
最大トルク|300 Nm/1,800-4,900 rpm
駆動方式|4輪駆動(クワトロ)
サスペンション(前)|マクファーソンストラット
サスペンション(後)|4リンク
タイヤ|235/50 18インチ
トランスミッション|7段Sトロニック
0-100km/h加速|6.9秒
乗車定員|5名
荷室容量|463リットル(リアシートを倒した場合、奥行き1,632mm、1,365リットル)
最小回転半径|5.7 m
燃費|13.8 km/ℓ(10・15モード) 12.6 km/ℓ(JC08モード)
CO2排出量|168 g/km(10・15モード) 184 g/km(JC08モード)
価格|479万円

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