ルイ・ヴィトン クラシック セレニッシマ・ラン (2)
CAR / FEATURES
2015年5月14日

ルイ・ヴィトン クラシック セレニッシマ・ラン (2)

Louis Vuitton or The Art of Travel|ルイ・ヴィトン、あるいは旅の真髄

「ルイ・ヴィトン クラシック セレニッシマ・ラン」(2)

「クラシック アワーズ」からはじまる権威あるクルマの祭典

「序 ルイ・ヴィトン クラシック セレニッシマ・ラン」において、まずはどんなレースなのか、そしてルイ・ヴィトンとクルマ、旅の関係をお伝えした。そこでも触れたが、このランはアワードとレースが組み合わさっている。4月24日からレースはスタートするが、その前夜祭として23日に「ルイ・ヴィトン クラシック アワーズ」が開催された。その現地レポートをお届けしよう。そして、美しいヨーロッパの山岳地帯や湖沿い全1400キロの行程を走るクラシックカーの勇姿から、レースの模様を感じて頂ければと思う。

Text by Gotaro Hosomura(OPENERS)Photographs by LOUIS VUITTON

ラリーをルイ・ヴィトンが開催する意義とは!?

この「ルイ・ヴィトン クラシック セレニッシマ・ラン」は、1993 年に開催され、今や伝説となった第1回「ヴィンテージ・イクエイター・ラン」から数えて、ルイ・ヴィトン主催の7 回目のラリーとなる。1897 年に初の自動車用トランクを開発して以来、ルイ・ヴィトンはクルマの歴史とともに歩んで来た。

ルイ・ヴィトン マルティエ代表取締役会長兼CEO イヴ・カルセル氏は、次のように語った。
「スタイリッシュな旅の真髄は、ルイ・ヴィトンが自動車旅行の世界と共有している価値の一つです。長年、夢と革新を追い求め、ルイ・ヴィトンの息子ジョルジュ・ヴィトンとその後継者らは、自動車の発展に適応するトランクやラゲージの制作に力を注ぎました。これが、馬車の車両後部にフィットする特別な丸型トランクのような開発や、そして車両のカタチに沿った、フラットに積み重ねができるトランクへと急速な進歩へと繋がったといえるでしょう」。
そう、ルイ・ヴィトンはこのラリーを通して、同ブランドと自動車旅行の世界が融和した長い歴史に敬意を表しているのである。

「ルイ・ヴィトン クラシック アワーズ」とは?

2012 年4月23 日、モナコ──。「ルイ・ヴィトン クラシック セレニッシマ・ラン」のスタート前夜祭として、2011年度に対する「ルイ・ヴィトン クラシック アワーズ」の授与式がとりおこなわれた。ルイ・ヴィトン家 5 代目当主のパトリック‐ルイ・ヴィトン氏、ラン審査委員長であるクリスチャン・フィリプセン氏がプレゼンターをつとめた。これは2005 年より設けられたアワーズで、毎年 2 つの賞を贈呈するものだ。まず世界でもっとも格式高いモーターショーにおいて、ベスト・オブ・ショウに選出されたクルマのなかから 1 台へ贈られるのが、「ルイ・ヴィトン クラシック コンクール賞」。今回は「1938 Mercedes 540 K “Autobahnkurier”」が受賞した。米国のデトロイト近郊で開催された、「The Concours d'Elegance of America」からの1台。

LOUIS VUITTON CLASSIC SERENISSIMA RUN 2012 03

LOUIS VUITTON CLASSIC SERENISSIMA RUN 2012 04

「ルイ・ヴィトン クラシック コンクール賞」左より Christian Philippsen, Patrick-Louis Vuitton, Arturo etDeborah Keller. 受賞したクルマは、「1989 Mercedes 540 K “Autobahnkurier”」

「ルイ・ヴィトン クラシック コンクール賞」が、過去への表敬やクラシックカーに対するものだとすれば、「ルイ・ヴィトン クラシック コンセプト賞」は、未来へ視線を向けたものである。つまり過去と同様に未来も大切に考える、というルイ・ヴィトンの姿勢を表したものだ。モーターショウに出品された数かずのプロトタイプカーから、将来的に賞をとるポテンシャルの高いモデルへ授与される。

じつは今回、アワーズ始まって以来の初めての年となった。例外的になんとクルマではなく、デザインスタジオに賞が授与されたのである。なぜならば、そんな可能性を秘めたクルマを見出せなかったためだという。

「いくつかの持続可能な運輸・交通および、再生可能なエネルギーにかんする興味深い研究はありました。ですが私たちの鼓動を高めるまでにはいたらなかった。そこで、デザイナーの夢を現実に変えることができる、すばらしいマジシャンのような存在に報いるために、この機会を活用することに決めたのです。すべてにおいて有能なかれらに」とクリスチャン・フィリプセン氏。

イタリアのトリノ地域に本拠を置く、ItalDesign(イタルデザイン)など4つのデザインスタジオまたは研究所がノミネートされたが、最終的にG-スタジオが名誉に輝いた。
G-スタジオはおもだったモーターショウなどに出品される、ディスプレイモデルを数多くてがけてきた。内装・外装にかかわらず手掛け、マテリアルをはじめとして依頼者の要望に情熱を持って応える職能集団である。「初代BMW X5」や「ルノー キャプチャー」、「日産フーガ」など、その後のプロトタイプとなるようなクルマもG-スタジオがかかわっている。この異例なアワード贈呈は、ルイ・ヴィトンらしい選択といっていいだろう。そこに共通するのは、最高峰の品質とクラフツマンシップである。

LOUIS VUITTON CLASSIC SERENISSIMA RUN 2012 01

LOUIS VUITTON CLASSIC SERENISSIMA RUN 2012 02

「ルイ・ヴィトン クラシック コンセプト賞」左より Pierangelo Maffiodo (G-Studio), Christian Philippsen, Lorenz Van Den Acker (Renault), Patrick Le Quement, Patrick-Louis Vuitton.

翌4月24日、42台のヴィンンテージカーが、モナコのモンテカルロから約1,400 キロのレースのスタートを切った。フランス、スイス、イタリアの国境を越え、ディスティネーションであるヴェネツィアを目指し疾走。途中、マントン・サン・ベルナール、ストレーザ、ヴェローナ、そしてルイ・ヴィトンのシューズのアトリエがあるフィエッソ・ダルティコに立ち寄った。その後 4月28日、参戦車は船でヴェネツィアに輸送され、週末にサン・ジョルジョ島の広場に特別展示された。そしてドレスコードはブラックタイという、フォーマルな雰囲気のなかで、レースアワードが発表されクライマックスを迎えた。

その後、日の沈む風情ある展示会場を後にして、円形劇場の上にこの日のために特別に作られた会食会場へ移動。参加したすべての人々が一堂に会し、「ルイ・ヴィトン クラシック セレニッシマ・ラン」のエンディングを楽しんだ。ルイ・ヴィトンとヨーロッパのクルマ文化の重みを感じさせるイベントであった。

           
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