EVENT|イギリス人シェフ、ジェイミー・オリバーが挑む“食革命”
LOUNGE / EAT
2015年5月28日

EVENT|イギリス人シェフ、ジェイミー・オリバーが挑む“食革命”

バイバイ加工品! ハロー新鮮野菜!

EVENT|イギリス人シェフ、ジェイミー・オリバーが挑む“食革命”

2012年5月19日──この日が「食への意識を変えた日」として、のちのちカレンダーに記されることになるかも知れない。“食(しょく)革命の日”と銘打った食育の一大イベント、「Food Revolution Day」が世界でいっせいにおこなわれるのだ。

Text by TANAKA Junko (OPENERS)

過去30年で成人の肥満率は2倍、子どもは3倍に(!)

ジャンクフードに加工品……。私たちのまわりには手軽にお腹を満たすことのできる食べ物で溢れている。問題は、その手軽さに慣れてしまうと、新鮮な野菜や果物がなくても日々の生活を送れてしまうこと。ファーストフードの“聖地”、アメリカでは、4人に1人が毎日ファーストフード店を訪れており、その年間売り上げは1100億ドルにのぼるという。

Food Revolution Day|02

© Food Revolution Day

こうした栄養価の低い脂肪の多い食生活が、目に見えるかたちで私たちの健康をむしばみはじめている。そのひとつが肥満だ。過去30年で成人の肥満率は2倍にふくれ上がり、世界ではいま、15億人もの人が肥満、太りすぎの問題を抱えているという。肥満は糖尿病や早死を進行させる要因として知られているが、深刻なのは、その余波が子どもたちにも広がっていること。30年で肥満率は3倍になり、5歳未満のじつに4300万人が肥満状態にあるというのだ。

この肥満の問題を深刻に受け止め、解決に乗り出しているのが、イギリス人シェフのジェイミー・オリバー氏。名前と顔写真を見ればピンときた人も多いはず。そう、いまから10年以上も前のこと、自身がホストを務めたBBCの料理番組「裸のシェフ(原題=The Naked Chef)」、その番組から生まれたレシピ本「シンプルクッキング」シリーズで一躍注目を集めたあの“ジェイミー”だ。

ここ数年のオリバー氏の活動を追っていくと、彼が手軽でシンプルなのにとびきりおいしい料理をつくる“裸のシェフ”という枠を超えて、食をつうじてみんなを健康にするコンサルタント、いわば “食の革命家”に変貌を遂げたことがわかる。2002年には、恵まれない環境で育ち、一度もレストランを訪れたことのない若者を、あたらしくオープンするレストランのシェフに育て上げる企画を成功させたほか、2004年からは、ロンドン南部にある公立中学校を皮切りに、学校給食の改善活動に乗り出している。

「みんなが少しずつ行動すれば、大革命をおこすことだってできる」

イギリスの学校給食は、約20年前に政府の管轄を離れ民間業者に委託されるようになって以来、質の低下が問題となっていた。4人の子どもの父親でもあるオリバー氏は、栄養価の低いジャンクフードが中心という給食の実態、そうした食べ物が子どもたちに与える影響の大きさにショックを受けて、「育ち盛りの子どもたちに健康的な食べ物を届けたい」と改善活動に乗り出したのだ。

安価でヘルシーなレシピの考案、調理師たちのトレーニング、子どもたちへの“食育”活動、給食予算増額のための働きかけなど、総合的に展開したオリバー氏の活動は大きな反響を呼び、彼のもとには27万人の署名が集まった。そして、なんと最後には政府までも動かし、給食の改善のために予算を計上、加工したジャンクフードを学校給食から排除するという結果をもたらした。その後もアメリカにわたり、学校給食を中心に食の改善活動をつづけてきたオリバー氏が、今回あらたに企画したのが、5月19日の「食革命の日(=Food Revolution Day)」だ。

Food Revolution Day|03

© Ben Gibbs

これは、世界中のだれもが好きな方法で参加できる一大食育イベント。ルールはひとつ。新鮮な野菜や果物を使った“身体が喜ぶ”手料理を、家族や友人、会社の仲間など、好きな人たちと一緒に楽しむこと。食べることが好きな人は食事会を開くのもいいし、誰かが主催する食事会に参加するのもいい。料理をふるまうことが好きな人は、これを機会に料理教室を開いてみるのはどうだろう。オリバー氏の活動をサポートしたい人は、寄付金をつのるチャリティーディナーを主催するという方法もある。

Food Revolution Day|04

© David Loftus

Food Revolution Day|05

© Food Revolution Day

集まった寄付金は、肥満の問題が特に深刻なイギリス、アメリカ、オーストラリアで立ち上げたオリバー氏の財団を通して、子どもたちへの食育など、食の改善活動にあてられる。

「僕ひとりではすべての問題を解決することはできません。でも、みんなが少しずつ行動すれば、大革命をおこすことだってできます。どんな方法でもいいんです。食事会に参加してもいいし、自分で主催してもいい。大事なのは、あなたの家族や友達、地域の人たちと食の正しい知識を分かち合うことです」と語ったオリバー氏。

まずは、自分が口にするものにもっと関心をもつこと。そして、身体が喜ぶ食事をみんなで楽しむこと。このイベントは、そんなささやかな、もしかすると私たちが忘れかけてしまった大切なことを、考えさせてくれるきっかけになるのではないだろうか。

Food Revolution Day (英字サイト)
http://foodrevolutionday.com/

           
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