ルイ・ヴィトン クラシック セレニッシマ・ラン  番外編(2)
FASHION / FEATURES
2015年2月20日

ルイ・ヴィトン クラシック セレニッシマ・ラン  番外編(2)

Louis Vuitton or The Art of Travel|ルイ・ヴィトン、あるいは旅の真髄

「ルイ・ヴィトン クラシック セレニッシマ・ラン」番外編

MADE-TO-ORDERという至高――フィエッソ・ダルティコ その二

ルイ・ヴィトンが主催するクラシックカーのレース「セレニッシマ・ラン」。前回、全車が立ち寄った、目的地のヴェネチアから西に33キロ西にあるモダンなシューズファクトリー、フィエッソ・ダルティコを紹介した。そこでは既成靴の生産とは別に、メイド・トゥ・オーダー(MTO)も行われている。つまり顧客に合わせて特別に製造する、ルイ・ヴィトンが誇るカスタマーサービスだ。MTOアンバサダーのヴィスコンティ氏にもお話を伺えた。

Photographs by LOUIS VUITTONText by HOSOMURA Gotaro (OPENERS)

脈々と継承されるアルティザンの系譜

フィエッソ・ダルティコのあるイタリアのヴェネト地方は、13世紀から伝統の職人技によるエレガントな靴作りがつづけられている地である。シューズの製造が家業として、高度な技術が世代を超え代々引き継がれている。フランスのルイ・ヴィトンがこの地でMTOを手掛けるのは、その巧緻な職人技があってこそだ。シューズはすべて、ベルトにかんしてはスペインのバルバラで製造され、その後フィエッソに送られシューズと同様の仕上げが施される。その靴とベルトは、まさにシューズ発祥の地で丹念に作りあげられる、ルイ・ヴィトンが誇る逸品である。

LOUIS VUITTON|ルイ・ヴィトン 05

MTO製品ラインには、ヴェネチアの歴史的な地名がつけられている。クラシカルなラインであるドゥカーレ、クリーンでモダンなラインのフェニーチェ、タイムレスなラインのリアルトは、それぞれドゥカーレ宮殿、フェニーチェ(不死鳥の意味)劇場、リアルト橋(白い巨象ともいわれる)に由来する。

3種類のライン、6種類のスタイル、4種類の製法、3種類のアッパーデザイン、仕上げの異なる5種類のカーフレザー、3種類のエキゾチックレザー、8色のカラー、2種類のメタルパーツ、18のサイズ、3種類のウィズがある。そのため、シューズのMTOは3000種類以上、ベルトMTOは1500種類以上の組み合わせの可能性がある。顧客の要望に完璧に応えるという、ルイ・ヴィトンのサービス精神の賜物である。

MTOアンバサダー、ルキノ・ヴィスコンティ氏が語る靴づくり

名前を聞いて、映画のヴィスコンティ監督を連想する方もいるだろう。じつはMTOアンバサダー、ルキノ・ヴィスコンティ氏は、その親戚筋にあたる方。ヴィスコンティ家はイタリアの名門で、貴族の家系である。その氏がMTOのアンバサダーを務めている。

LOUIS VUITTON|ルイ・ヴィトン 11

MTOアンバサダーになったのは、ここフィエッソ・ダルティコに2011年に来てからという。
正直、ルイ・ヴィトンの伝統や歴史、技術のすばらしさについては知っていたが、靴にかんしてあまり予備知識はなかったという。

「なにがメゾン、つまりルイ・ヴィトンらしく、なにがそうでないかをひとつずつ教えてくれました。靴職人の責任者(マスター)のロベルトも呼んで紹介してくれました。そのあとは、なんの迷いもなくこのプロジェクトに飛び込みました」

靴を作ることに対する思いは強い。「私はスーツを買うときも、50年は添い遂げるつもりで、自分にあったサイズのものを作ってもらいます。靴にしても、考え方は同じです。サイズがきちんとあっていることが大切です。足とともに成長をつづけるものですからね」

ミラノの小さな工房や靴職人の存在はとても稀有で、存続が難しくなっているという。すでに、長い間引き継がれてきた技術のほとんどは失われてしまったという。小さな靴工房は、若い世代に技術を教える手段を持っていなかったのだ。

「ですので私はここにくる時、とても楽しみにしていました。工房を見られるのですから。ですが、実際に足を踏み入れてみると、ここは私の思っていた靴工房ではありませんでした。ここは仕立屋のようであり、工房とは似ても似つかわないモダンな場所でした。ルイ・ヴィトンのフィエッソがすばらしいのは、時間と労力をかけて、卓越した多くの技術をメゾン内に持ち込んでいることです」

LOUIS VUITTON|ルイ・ヴィトン 08

LOUIS VUITTON|ルイ・ヴィトン 10

靴を誂えるよろこびの半分はもちろん履くことだが、残りの半分は時間をかけて形の好みや、どういう色にするか、どういうフィニッシュにするか、どういうソールにするかといったことに頭を悩ませることだという。
「自分のためにかける、この時間そのものが楽しいのです。仕立屋に行くのと同じ感覚ですね」

日本ではルイ・ヴィトン 銀座並木通り店のみで、MTOシューズとベルトのオーダーを受けている。MTOスペシャリストとして、専門のトレーニングを積んだスタッフのみが接客するというこだわりようだ。納期は約3~4カ月(エキゾチックレザーの場合は約6カ月)。
フィエッソ・ダルティコのサヴォアフェールが集約する、クラシックなメンズシューズにおけるワークショップの一角に、MTOスペースがある。そこでマスターのロベルトと若いアシスタントが、黙々と作業をしていた。そう、ここであなたのMTOの靴が作られるのだ。その熟練した手さばきに、イタリア伝統職人技の奥深さを感じた。

ルイ・ヴィトン 銀座並木通り店
東京都中央区銀座7-6-1
Tel.03-3478-2100(ルイ・ヴィトン カスタマーサービス)
営業時間:11:00〜20:00(日曜のみ~19:00)
http://www.louisvuitton.com

           
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